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お幸せに。

 王家主催の夜会が開かれる日、妹のドレスは俺が準備した。

 以前に仕立て師と話し合って作っていたものに、王家のパーティーに相応しく宝石やレースを足していった。ドレスは流行に左右されないベーシックな型だが、髪には最近南方で発見されて人気を呼んでいる生花を飾って仕上げた。


「いつも商人の言う最新の流行のドレスを着ていましたから、こういうのは変な感じですね。以前の私と見かけも全然違うし、お兄様はこんなのが宜しいの?」


 お兄様が宜しいというより、王子が宜しいのかもしれないよ、妹よ。


「そうだな。女性と男性じゃ、好みが結構違うからなぁ。あんまりバリバリの流行最先端とか、濃すぎる化粧とか、苦手な男も多いんじゃないかな。」

「そういうものですか。王族の方も、華美なものはお嫌いなのかしら。」

「そうだね。王族の方々は案外、素朴で落ち着いたものを好まれるかもしれないね。」


 小さい頃のエリカちゃんが一番可愛いかったと思ってるよ。

 王家の方々にロリコン疑惑をつけるわけにはいかないから、言えないけどな。多分、今の妹を見たら、今の妹を一番気に入ってくれるだろう。



 妹を迎えに来た王子は開口一番、


「今日はまた一段と綺麗だな、エリカ。」


 と、言いながらジッと妹を見つめて目を離さない。その態度だけで妹は真っ赤になってしまい、


「カ…カルロス様、迎えに来てくださって、あ…ありがとうございわすわ。」


 ちょっとどもっていた。可愛らしい妹だ。


「じゃあ、妹殿は預かって行く。また、会場でな、ラヴェンナ。」


 王子と妹が馬車で出かけたので、俺も実家の馬車で王宮に向かった。




 夜会の会場に着くと、いきなりたくさんのご令嬢に囲まれた。


「ラヴェンナ様、エリカ様のドレスは、どこで仕立てられましたの?」

「髪型も斬新で、考案されたのはどなた!??」


 王子とパーティーに現れた妹が誰か、最初は分からなかったらしい。で、妹の見た目が変っているんだと分かって、皆で吃驚していたんだとか。


「エリカ様は、お兄様のお陰だとおっしゃるのよ。妹様をあそこまで美しく磨かれるなんて、ラヴェンナ様はすごい才能をお持ちなのですね。」


 俺は人生で一番、女の子に囲まれた夜を過ごすことになった。

 普段寄って来るのは男の方が多かったからなっ。


 妹の方は夜会の間中、王子に連れまわされていたらしい。

 綺麗になった妹に近付きたい男性貴族が沢山いて、王子が牽制していたとか。


 皆の反応のあまりの凄さに、途中で目の合った妹は不安げな表情をしていたから、俺は大丈夫だよというように笑顔を返してやった。


 家に帰って妹から、


「お兄様にこんな凄いセンスがあるとは思ってもいませんでしたわ。今後のパーティーのドレスも、お兄様に選んでいただきたいですわ。」


 と、尊敬の眼差しを頂戴した。

 俺、デザイナーとかじゃないんだけどなぁ。まあ、前世知識チートはちょっとあるし、また仕立て師と相談してみるか。




 次の日から、妹は学園に復帰した。

 それから、何週間か経ったある日の午後。


 カフェテリアで話している妹とヒロインを見つけて、声を掛ける王子に従って彼女たちに近付いた。

 妹がヒロインに、貴族の習慣について説明していたところらしい。


「エリカ。最近はあんまり俺のところに来てくれないんじゃないか? 以前はよく教室まで会いに来てくれていたのに。」

「休み時間とはいえ、皆様の勉強のお邪魔になったらいけませんから。それに、放課後は殆ど毎日お会いしているでしょ?」


 妹の答えに、王子は拗ねたように言う。


「もう。学園の卒業まで待たずに、結婚して王宮に来てもいいんだぞ? 父上も弟妹も喜ぶから。」


 何かもう、王子が以前と違いすぎて吃驚だわ。


「ダメです。卒業後に結婚が慣例でしょう。王族や公爵家がルールを守らなくてどうするのです。寂しいなら、暫くは兄とでも遊んで我慢していてください。」


 妹の言葉に王子は納得したように頷いて、俺の両手をギュッと握ってきた。


「そういうことだ。ラヴェンナ、暫く宜しく頼む!」


 ちょ……、俺に何を宜しくしろというんだよっ!??


「ふふふ、王子とラヴェンナ様は仲良しですものね。」


 ヒロインも楽しそうに乗ってくる。ちょっと君たち、俺で遊ぶんじゃないっ!


 まあ、でも、妹は楽しそうに笑っていて、幸せが滲み出ている。

 うん。丸く収まって、良かったんじゃないかな。






   お わ り 。



お読みくださりありがとうございました。

後1つ番外を書いて終了になります。

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