Ⅴ
listen6 引きこもりの彼女
衣都は小学校を卒業してからから引きこもりになった。理由はよくわからないが緊張や色々なことが重なったからだろう。今では、ネットでの仕事をしているらしい。
22になったが最後に衣都を見たのは2年前の成人式以来だ。あの時では、顔も性格も変わっていたしなおかつ10年前の事なんて誰も憶えていないか、かすかに憶えているくらいだからだと思う。
コンコン
ノックをしてみるが返答が返って来ない。まさか、中で倒れているのか?いや、それはないだろう。
「衣都・・・?」
「んー?なーに?じいちゃん」
「俺、じいちゃんじゃないけど?」
「え!と、十鶴?」
「うん」
久しぶりに聞いた声は俺の心の中に染み渡った。
「どうしたの?何でここに居るの?」
listen7 お願い
「入ってきなよ」
「え・・・」
「何でそんな驚いた顔してるの?十鶴立ちっぱなしで私と話すの?」
「いや・・・じゃ、お邪魔します」
「どーぞ」
うわ、久しぶりに入った衣都の部屋は石鹸っぽい匂いがした。
どこかに、出かける準備でもしていたかのようだった。
「衣都、どこかに出かける感じ?」
「うん」
「だ、だれと?」
我ながらストーカーだなと思った。気になるし一緒に行きたいなーとか思いながら聞くだけ聞いてみるかと思って聞いた。
「え、一人」
マジか・・・ここは『俺も一緒に行くよ』とか言ったほうがいいのか。それとも・・・
「十鶴どうしたの?」
「いや」
「ごめん。もう行くね。じいちゃんところでゆっくりしていって」
言うぞ!言うぞ!ちょっと引かれるかもしれない。ああーどうしよう!いや、ここは腹をくくって言うか。
よし!よし!俺がんばれ!!
「ちょっと!待て」