隠しキャラは攻略済み
ヒロインざまぁになっていると思う・・・笑
『早く迎えに来てね。アル』
『そうだね、なるべく早く迎えに行くからね。ユフィ』
5歳のころ私たちはこの丘でそんな約束をした。
―ユフィを早く迎えに行くために頑張るよ
―じゃあ私も立派な淑女になる
―お互い頑張ろう
=じゃあ、次に会う日まで=
懐かしいあの頃の夢を見た。
もし、もし今日があの日なら彼が迎えにきてくれるはず
私は高鳴る胸を押さえて、学園へと向かった。
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「ユフィーリア。お前との婚約を今ここで破棄する」
「私たちの邪魔をしないでください!」
放課後、学園の広場の真ん中。
私は学園に通う皆様方の前で盛大に婚約破棄を告げられ、私から婚約者を奪った方から邪魔だと言われている。
でも、こんなの想定内
「わかりましたわ。では後日こちらから婚約破棄の書類を送らせていただきますわ。」
淡々と用意していた言葉を並べると、私の婚約者であった王太子のハルト様はとても渋い顔をした。
彼の周りにいる騎士志望の者や魔術師志望の優秀であるはずの方々も揃って同じような顔をしている。
縋りつきながら婚約破棄なんて嫌だ、とでも言うと思ったのでしょうか?
馬鹿らしい
「随分と素直だな?何か裏でもあるんじゃないか?」
「とんでもないですわ」
「だが、お前はユリカを苛めていただろう!」
はて・・・?
私はそんなことはしていませんが?
首を傾げるとハルト様は「全部知っているだぞ!」と怒りだした。
「苛めとは具体的にどういうことでしょう?」
「しらばっくれる気か?なぁユリカ」
「ドレスを切られたりしましたし、頭から水をかけられたことだってありますッ!でも、もしこの場で謝っていただけるのなら・・・許します。」
・・・この方は本当に馬鹿にしてくれる。
今の言葉に皆感動していらっしゃるけど
「私は一切そのようなことをしていませんわ、神に誓ってでも」
呆れるそぶりを見せると、周りの側近様方が色々文句を言ってきた。
「本当に性格が悪いんですね?往生際が悪いですよ」
「顔は美人なんだけどなぁー、あーあもったいねぇ」
「美人?ユリカのほうが美人でしょー?何言ってんのー?」
「確かに・・・俺。あいつ・・・嫌い」
遠慮なし、私の身分はそれなりに高いのですが・・・恋は盲目とは言ったものです。
「では、私がやったという証拠は?」
「ユリカがお前だっていうのだからお前だろう」
話が通じない。
「私はやっていませんわ」
「このッ、どうしても嘘をつくというのか」
怒りにまかせて魔法を展開しようとするハルト様と魔術師志望のガラン様。
2人とも殺気を含んだ目でこちらを見ている。
「早く本当のことを言ったほうがいいぞ?」
「何度も言わせないでください、私はやっていません」
「そうかッ!!」
「やめて!!」
魔法が放たれる瞬間に私の前に飛び出してきたのはユリカさんだった。
「何か事情があるかもしれないじゃない!怪我させたりするのはダメだよ!!」
周りが息を飲む。
優しい子だ。女神のような心だ。
普通だったら感動シーンなんでしょうけど・・・
私から言わせれば、これも予想通りですわ
「ねぇ、ユフィーリアさん!どうして嘘ついたりなんてするの?」
こっちを振り返る彼女は口元が笑っていた。
『最後に笑うのはヒロインである私なの』
「そうですわね、ここで私があなたに魔法を放ったら完璧ですわね?ユリカさん」
「え?」
「私、全部知っていましてよ?今までの流れを」
意味が分からないという顔をする自称ヒロインさん。
「全キャラ攻略はできましたか?」
「!!!」
「王太子様の好感度を最大まであげ、他の攻略者さんの好感度も半分以上。そして私を断罪するイベントをしているっていうことは・・・この後隠しキャラが出てきますわね」
呆然とした表情のまま彼女の唇が 転生者 と動いた。
「間抜け面でしてよ?」
クスッと笑って見せる。
「攻略?隠し?一体何の話をしているんだ?なぁユリカ。君はわかるのか?」
「えっ、わ、わからないです!!そ、そうです。一体何の話をしているですか!?」
「あら、しらばっくれる気かしら?」
こてっと可愛らしく首を傾げてさきほどハルト様言われた言葉をそのままユリカさんに返した。
「わ、私ッ!!知らないわ!!」
叫んだと思ったらいきなり泣き出す彼女に周りが驚きながらも慰める。「ユフィーリアさんがッ!」って言葉が聞こえてきたので私を悪者にする算段でしょう。
元々悪役なんですが・・・ね
「私がどうしたのかしら?」
「話の内容はわからないが、お前がユリカを泣かせた!!」
「言いがかりもいいとこですわね」
王太子様としてそんなお馬鹿でいいのでしょうか?
この方が王にでもなったら国が滅びてしまうのではなくて?
そしてユリカさん、口元が笑っていらっしゃいますよ
呆れて何も言えない。
「呆れて何も言えないな」
出そうになった溜息を思わず飲んでしまったのは仕方ないと思います。
声がしたほうを振り返るとそこには、この国では珍しい黒髪の男性が立っていた。
誰もが見惚れるであろうその整った容姿に学園の生徒たちも釘づけである。
「心の声が出たかと思いましたわ、アル」
「そんな顔をしていたから思わず声に出してしまったよ、ユフィ」
口角を上げて微笑む姿は一枚の絵です。芸術です。
「迎えにきたよ」
「待っていましたわ」
そう、私はこの日を待ち望んでいた。
王太子様が私に婚約破棄を告げ自称ヒロインである彼女が他の攻略者の好感度を上げ私を断罪するこの日が、この12年間待ち望んでいた彼に会える日だったのだから・・・
「あ、アルフリード様?」
後ろから聞こえてきたのはユリカさんの声だった。
さすが自称ヒロインである。
この状況でよく彼に声をかけたものです。
「君は?」
「私はユリカ・リターナと申します」
「そうか、で?俺に何か?」
「えっと・・・そのっ」
顔を赤くして恥じらう姿はさすが美少女と言える。
しかし、なんと微妙な状況なんでしょう・・・
このイベントの本筋は私のことを断罪しようとする王太子様を止めたユリカさん。けれど私が話を聞かず彼女に攻撃系の魔法を放ってしまう。
すると、アルが現れてその魔法を消し去り私は捕えられ、私は牢獄行き
そしてその後、王太子と帝国の次期王である彼とでヒロインの取り合いが始まり甘々な言葉に挟まれるという内容になる。
私の予想だとユリカさんの本命ってアルだったんだと思う。
「アルフリード様ッ!」
熱のこもった視線を彼に送っているユリカさんは気づいてないんだろうけど、彼女のさらに後ろにいる王太子様方はそれはもう唖然としていた。
当たり前でしょうに、でも恋は盲目。
彼女が今まで積み上げてきたものは全部水の泡になったわけなんですが、それにすら気づいていないようです。
「用がないなら、どいてくれ」
「えっ?」
そしてゲームでは甘々な彼の冷たい声を聴いて彼女も唖然とする。
固まっている彼女を横をすぎてアルは私の手を取った。
「ユフィ、行くぞ。もう婚約破棄もできたんだろう?」
「えぇ、もちろんですわ」
「やっと、お前と一緒にいられる。・・・ユフィ愛してる」
あ、甘すぎます。
その言葉とその笑みはセットにしてはいけません。
「ユフィ、帝国へ行き俺と結婚してくれ」
「もちろんですわ」
「行くぞ」
「では皆さんごきげんよう」
一礼して彼の転移魔法でその場から立ち去った。
転移の瞬間、ユリカさんが凄い形相で何かを叫んでいたけど、私にはもう関係ありません。
「ねぇアル」
「ん?」
「大好きッ」
とびっきりの笑顔で今まで我慢していた想いを全部のせて・・・
「ッ!!!・・・ユフィには敵いそうないな」
そう言って彼は私を力いっぱい抱きしめた。
ごめんね、ヒロインさん。
隠しキャラは攻略済みなの
End
初書きだったので文の構成とか無視です。
言葉づかいとか変なところなどあると思いますが、あまり気にしないで読んでください。
軽く読んでいただけたら幸いです。