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さよなら春の日  作者: 木村ハル
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イチョウが舞い散る公園で

その日はとても穏やかでした。

ふとしたきっかけから母とずっと前から2人して行きたがっていた国立の多摩蘭坂に行こうということになり、仕事のストレスを忘れて国立へ行った。

事前にインターネットで調べていたとあるバンドマンのふるさとめぐりマップを片手に駅から20分くらいだろうか、私たちはゆっくりと歩いた。

途中、吉野家牛丼を食べる。いつもランチタイムに食べているものと同じなはずなのに特別に感じるのは1人ではないからだろうか。

長く続く上り坂の途中に多摩蘭坂の碑はあった。思っていたよりも近くて、近所にあるようなものと変わりないことに驚いたけれど、バンドマンのファンからしたら特別な坂である。

私たちは写真を何枚か撮り、来た道を戻るように坂を下った。途中道を曲がり、大学通りと言われているらしい大きな道に出た。長くまっすぐな並木道。桜が咲いたらきれいなんだろうなと思った。紅葉がきれいだった。

思ったよりも早く用事を済ませてしまったので、吉祥寺に出る。母は20年近くぶりの吉祥寺だそうで「街を歩きたい」という口癖がしばらくは止まりそうなくらい楽しんでいた。

井の頭公園に行く。平日だからか子連れが多いくらいで休日に比べたらはるかに人出は少なく、過ごしやすかった。

スワンを見て、いいなと私が言うと母はなにかを思い出しているようだった。母が子供のころと私と同じくらいの歳の頃に来たかもしれないと言っていた。母の遠く小さくなってしまった記憶を取り戻すことができたことがうれしかった。

公園内の水辺の周りを一周してまた2人してイチョウの木々をカメラにおさめる。私はこっそりと写真を撮る母の後ろ姿をおさめた。

仕事がイヤでイヤでしかたないころの特別な休日は素敵な1日になった。

いつか母のようにまたこの場所に来て遠く小さくなった記憶を思い出すことだろう。

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