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50・宣戦布告



 本日のあらすじ。

「おいエリザ! エンダルシア帝国から宣戦布告があったぞ!!」

 ゼノアから突然そんな声をかけられて。

「……ふむ、予想より早い。まだあと二か月は掛かると思っていたんだが」

 ついでにいきなりそんな事を伝えられ。

「……ナルミ、今回の件についての会議がある。本格的にお前に頼らなくてはならない可能性もあるからお前も来い」

 四の五の言わず拉致られた。

 ゼノアの歴史談議から8日目のことじゃった。

 正直急展開過ぎる。これが漫画ゲームの類だとしたら、このシナリオは結構落第点イッちゃってると思うんだがね。そこんとこどうなんだろう。

 自分がこのシナリオ見せられたら、きっとこれ書いた人は展開ありきで道筋作れないタイプの人なんだなって思っちゃう。

 つまり人生はクソゲーってこった。

 しかしクソゲーだろうが何だろうがこれは現実であるからして、フラグの有無なぞ関係なく時は進んでいくのである。そもそも自分この世界途中参戦組だから、もしかしたらその前からフラグはあったかもしれんがね。

 ほら、たまにあるじゃん。本編と追加DLCとでストーリーの時系列がめちゃくちゃになる奴。

そんなわけで現在会議室。議題は『対豚肉のおいしいなんたら帝国について』である。

 まぁ自分は出てはいるが、姿は見せていないけども。

 なにせ王様はじめ軍のお偉方がみんな出席するものだからね。たかだか近衛隊風情が席を並べるのは、さすがに無理があるのだ。なのでほかのみんなもステルスしてる。

 ちなみに自分は姿を隠してエリザの後ろに立っている。とっても便利だよ、光学迷彩。

 あぁ、なんか護衛しているという感じがするね。

 お姫様に『本当人間はどういう魔術形態でそういう事をできるのか』と言われました。

 あとゼノアやバリスも出席しているが、特に語る事はない。

 しいて言うなら二人とも真剣な顔しているということくらいかな? 片方超怖い。

 ……まぁ、なにせ肝心の会議の状況が状況ですからねぇ。顔が険しくなるのも当然か。

「だから! あなた達の隊より機動性のある我が隊の方が……」

「今まで緊急事に対処仕切れていなかった貴方が何を言うか! それより私の魔法騎士隊の方があらゆる事柄に対処出来る!」

「相手がどうやって砦を攻撃したか解らんのに、貴様の器用貧乏なだけの隊が役に立つ訳が無い! それよりも私の……」

 ……非常に荒れております。

 風速でいうとだいたい20メートルくらいかな? 横殴りである。

 ちなみに荒れてる理由は、手柄を立てたい人達が言い争いをしているからだとお姫様が言ってた。今軍部はいろいろあって派閥争いが熱いのだとか。怖い。

 あ、一応言うが今は空気だが言い争いに参加しない命令があればいつでもいきますよな人達もきちんといる。お姫様曰く彼らは『魔王派』の派閥らしい。字面がおぞましい。

 なお魔王派と対立しているのは『旧体制派』と呼ばれており、彼らがまさしく今現在手柄を立てるべくいきっている人たちである。最近立場ないんだって。

 ついでに言うと、報告では国境沿いの砦に敵さんが攻撃してきた事により、周辺の山が一部焼き払われ、多少なりと砦に被害もあるとの事。被害は全体の一割程、とのこと。

 攻撃は恐らく魔法と思われるが、詳細は不明らしい。一部では魔獣が云々とか。

 そんな事を聞きながらしばらくボケーっと会議の荒れ具合を見ながら立ってると、お姫様が小声で自分に聞いてきた。

「……なぁナルミ。おまえ空間転移できたよな? その場から消えて任意の場所に出てくるやつ」

 なに考えてるかはわかった。

「あー、うん。できなくはないが行ったことないと難しいっすね。人間は万能じゃないもんで」

 座標間違えて壁の中にいたりしたら怖いものね。

「というか自分一人行った所でやることなくない?」

「……そうか?」

 おいまてなぜ疑問形なのだ。

「そうなの」

「……まぁいきなり見知らぬ奴がやってきて暴れでもしたら現場が混乱するか」

 うん、自分の言いたいことそうじゃないの。別に自分は無双ってたりバサラってたりする武将じゃないからね?

 その無駄に無根拠な信頼は自分のひ弱な精神にプレッシャー与えるからやめて。ほんと精神衛生的によろしくない。

 確かに目的の為にもこの問題を早く終わらして平和になりたいから協力は惜しまないけどさ。ほんとお願いしますよ。

「はぁ、乗り気はしないが仕方がない」

 そう言いながらお姫様は一回うーんと伸びをすると、そのまま砕けた格好でよく通る声で言うのである。

「おまえらうるさい。役立たずはだまっとれ」

 すると一気に静まりかえる会議室。

 しかしかまわず彼女は続ける。

「ふん! お前らの名誉や手柄など私にはどーでも良い! ぶっちゃけ貴様らみたいな能無しは行っても役に立たん! というか状況を把握してからものをいえ!!」

 うわっ! 言っちゃったよこの子!

 ほらほら、言われた軍人さん、特に偉そうな顔してた人なんか顔を真っ赤にしてるよ!

「能無しとは聞き捨てなりませんな姫様。そもそも、能無しでは兵の指揮もできませんぞ」

 話の趣旨が違うと思うぞ。

「知らん! 金と利権にまみれた豚は黙っとれ!!」

 ……うわぁ~、この子怖えー。

 将軍も青筋立てて震えてるし。

 ん? なんか王様も震えてるぞ。この人は王様と仲いいのか?

「まてエリザ! まさかお前、前線に赴く気が!? ならん! 絶対ならん!」

 あ、そっち。そうだよね、父親としたら娘が戦場に行くのは……ん?

 なぜお姫様が戦場に? というか指揮を執るとか言わなかった?

 血迷ったか小娘。

 そして、王様が騒がしくしていると、隣の王妃様が王様に――

「エイッ!」

「フゴッ!?」

 軽くなでるような右ストレート。

 自分知ってる、ああやって顎先を掠めると脳震盪起こるんだ。漫画で読んだ。

 崩れるような動きをする王様を気にも留めず、王妃様がエリザに一言。

「エリザ、それは勝てる策があると見てもいいのですね?」

「少なくとも、今回の防衛戦では。最悪の最悪、魔獣が出てもなんとかするだけの用意もあります」

 エリザ姫の発言に、会議室がざわめき……あれ、なんか安堵の声がちらほらと出てるぞ?

 なぜだ。というかなんだこの一部に漂うのんびりムードは。誰だ『姫殿下がそうおっしゃるなら我々の出る幕はないでしょう』だとか『こうなればすべては姫様の手のひらの上、腐れ竜の二の舞じゃな』とか『ならば私たちはこの喜劇の観客へ回るとしましょう』とか、なんなんだ?

 あれか、聖騎士云々だからか? 姫騎士様はそんなに強いのか?

「……ちなみにその方法を伝えて他の部隊を行かせることはできないのかしら?」

「情報が錯誤しているのであまりそれは……やはり確実な情報を得るためには直接行った方がいいので。それと――」

 ……おい、こっち見るな。自分他の人には見えとらんのだから。

「少し、いえ、はっきり言いますと今回の事態は私の想定していた『最悪』の場合に近い可能性があります。なので少しでも早く情報を手に入れる必要があります」

「……そう。わかったわ」

 しかし、それを気にも止めない王族母子。

 ちなみに、父は気絶している。威厳が塵と消えた。

 もしやこれは王様は傀儡で王妃様が国を回してるというタイプか? ありえそうで怖い。

 ……ん? 傀儡がこれってことはダイレクトに王妃様が政権握ってないか?

 とか一人でぼややーんと考えてるうちに、王妃様は立ち上がり威勢の良い声でお姫様に命ずるのだ。

「なら、行きなさい。編成は任せます」

 やっぱこの人が最高権力者ですわ。

「わかりました。では、飛龍(ドラグーン)隊と、ゼノア、他任せた。大体前説明したとおりだ。あと兄様はあとでいつもの精霊を貸してください」

 兄貴及び兄貴分を顎で使う妹。なにこの子怖い。あと周りがそれに納得してるのも怖い。

 そしてなんか自分の知らないところで色々話進んでいたのね。ゼノアしかり王子様しかり。

 もしかしてこの事態が急展開なのではなく、本当に自分が情弱なだけなのかもしれないね。イベントを取り逃したとか、そんな感じ。

 とと、待ってくださいお姫様置いてかないで。

 言うだけ言って会議室を後にするお姫様を追っかけて自分も部屋を後にする。

 そしてその時視界の隅には、深刻な顔で頭を抱えるお兄ちゃんズの姿があった。

 ……まぁ、自分もがんばって護るから君らもがんばれ。

 

 ……しかし飛龍か。頭からガブリンチョと喰われたりしないよね?





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