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5・お姫様

 さて、まずあれだ。自分の目の前には何か大変な光景が広がっている。

 鎧着込んだ厳格そうなおっさん数人、いかにも政治やって増すな雰囲気醸すおっさん数人。魔法使いみたいな爺さんもいる。それら総計12人。

 そしてさらに目の前には三人の人物。まぁ後ろ二人の女性はただの護衛らしいからどうでもいいとして……問題はその一番前にいる偉そうな少女である。

 長いピンクのツインテールにまぁよくありそうな紅いドレス。そして背中には……背中、うん。何か翼が生えてる。黒い、エンジェリックな羽根が生えてる。

 曰く、彼女こそがこの国の第三王女さまであり俗に言う姫様とやらである。とはゼノアの言。

 そしてその姫様とやらに自分はメッチャまじまじと、穴が開くほど見られている。

 え? ゼノア? あいつなら今目の前で事の経緯を全員に説明しているよ。

 誰も聞いてはいないけどな。 みんな自分を珍獣でも見るような目で見てるからな。

 ……自分はなぜにこのような希有な体験をすることになったのだろうか。

 それを考えるには多少……いや、かなり時間を遡らなければならない。

 が、そんな中身のあるものでもないのでさらっと説明すると、なんか報告に自分が出る必要があるから出てくれない? ってゼノアに言われて仕方がなく承諾したら何かお城っぽい大きなお城に連れて行かれて、連れてこられたおっきな部屋にこれだけ待機していたのです。なんだこれ。

 というかもっと簡素な報告かと思ったら、上司になにがありましたって適当に言うだけかと思ったらこれガチなやつじゃん。というかお姫様がいるなんて聞いとらんよ。

 しかも格好もそのままだしね。というかなんというかそこまで気がまわらなかったと言うかこんな大げさな事になるとは思わなかったんだもん。たださすがにスコップは仕舞った。

 チクショウ、あんまりだ。そんなに見せて証明しなくてはならないほどこの人には友達が少ないのか。

 というかそもそもこれやばくない? 何かみんな見た目人間やめてるってか姫様なんかアレだよね。人間部分の見てくれこそ子供だけどゼッテー強いしょ。ダークエンジェルとかそこらへんだよ。きっと毎ターン何か召還してくるんだぜ。

 なに、もしかしてこの国は魔界にある国で王様は魔王様なのかい?

 あれだよね魔王様ってアレだよね、俗に言う人間の敵とか1999年に振ってくる予定だったりとか魔物の王様とか世界征服企むあんな奴のこと言うんだよね?

 で、そんな魔王様の第三王女って要は三女でしょ? それくらいになると多分RPGの中盤移行に出てくるくらいのボスポジションなんじゃないの?

 そしてあれだ、このあと自分が人間だとばれて『ようしそれならここで死ぬか私のペットになるか選ばしてやろう』的なこと言われるんだぜきっと。

 と言うかよくよく考えたらあの兵隊さん達も大概人間じゃなかったし、このままじゃ真面目に人間テルテル坊主かリアルデュラハンになる未来しか見えない! 助けて光の勇者様!!

「以上が今回の報告となります」

「うむ。ご苦労」

 そう自分が絶望しているといつの間にやらゼノアが話を終え、こちらの方に下がってきた。ただ姫様の言葉に対して顔をしかめたような気がするのは気のせいだろうか。

 と、そうこうしているうちにお姫様が口を開いた。ゼノアにではなく、自分に向けて。

「それではハセガワナルミとやら。まずは自己紹介をしよう。私はこのトゥインバル国の第三王女、エリザ・ルル・トゥインバルだ。さて、さっそくだがナルミとやら、お前は魔物の首をへし折ったと聞いたが、その時のことについて詳しく説明してはくれないか」

 ……いや、詳しくって言われても。そのまま文字の通りだから説明がしようにも。これ以上のことは、ねぇ。

 と、ただの女の子相手ならいうのだろうがどうにも自分は権力と言うものに弱いので、なるだけわかりいいように説明する努力をした。

 魔王だろうとなかろうと、権力は怖い。

「えっと、ですね……走ってくる猪の鼻先にこう、全力で下からアッパーをやったら折れて、ひっくり返っちゃいまして」

 技名は『必殺昇天アッパー』です。とは言わずにただ『アハハハハ』と笑ってごまかす。だってホントにこれしかないのだもの。

 自分に昇竜コマンド入れたら出てくるよ、とでも小洒落た事をいえばよかったかな? ちなみにこの場合波動コマンドでは目からビームだな。

 とか内心アホな事を考えていたのは置いといて、自分の言葉お姫様は目を輝かせながら、食いついてきた。

「そ、それは魔法とか使わずにか!?」

 ……さてこれはどう答えよう。

 魔法を使いましたと言う選択肢はないとして、魔法とは別の能力を使いました、と正直に言うかごまかしてただの腕力でやりましたと言うか。

 正直、ここで相手がなんなのかもわからないのに手札を曝け出すのもまずい気がするし、逆に完全に嘘をつくのもごまかしが効かない状態に陥りそうで遠慮したい。と言うか何の補正もなしにアレを倒すってのも現実味内よね。

 そしてなにより気をつけなくてはならないことは、相手が魔王様の娘さんだということだ。

 今の自分を表すなら《『神様』より賜った『魔法ではない能力』を持った『別世界』の『人間』》である。うーむ、まるで別世界から召還された勇者のような表現だ。自分が魔王なら絶対吊るすよ。魔王じゃなくても頭疑って吊るすよ。

 ふざけろ。ぜってーこんなことで終了なんて認めねぇぞ。

 『自身の存在』というある種最も大事なアイデンティティにも近いもの奪われて有無を言わせずここに来たんだ。自由に生きろと言われたのだ。何をしてでも生きてやる。

 そしてあわよくば元の世界に戻ってついでにあの自称神様に腹パンしてやる。

 さぁその目標のためにまずはどうにかしてここを切り抜けなければ……。

「……F(ファンクション)12」

「え?」

「『F12』又は『名前をつけて保存』それが自分の使った能力名です」

 言っちゃった。けど多分、大丈夫。能力について誤魔化さない。ただし、その経緯は誤魔化す。

 そしていざとなったら逃げる。全力で。

 こう考えると自分ってホント世渡り下手というか、考えてるようで考えてないよね。

 あれだね、麻雀で考えに考えて捨てた捨牌程よくあたると言うのと同じ……どうでもいか。

 あと、ちょっと能力名統一しなかったことをここで後悔。後でしとこう。

「これは物や現象の性質を変えるもので、自分の拳の性質を、拳の『破壊力』と言う数値を跳ね上げただけです。これは魔法ではない、技術だ」

 そう言ってニコッと笑う。正直自分でもナニ言ってんのかわかんねーから誤魔化す。あれだ、回転は技術だ、的なことを言いたい。

 なーに、自身持って言えば大体は『お、そうか』ってなって見逃してくれるって。弱点だと思われたら攻められるんだとしたら、弱点を弱点と思わせなければいい。これ口げんかに応用できるから覚えとくように。

 と言うか今思ったんだが、別に手札晒すもクソも自分自身が手札の効果わかってないだから相手にわかる訳ないよね。今気付いた。あのアッパーだって無我無流でやったらたまたまいい具合に発動しただけだし、きちんと発動していなかったとしても不思議じゃない。

 まぁそんな事はどうでもいい。後もう面倒くさくてやけになってる感があるのもどうでもいい。

 問題は目の前にいるお姫様だ。彼女はテンションをあげながら、一歩一歩とこちらに近づく。くんな。

「ほ、他に何ができる? 見せてくれないか?」

 興奮しつつもどこか優雅に見えなくも無い振る舞いでこちらに近づく。だからくんな、化けの皮がはがれる。

「……駄目か?」

 うぉっ! 泣きそうな顔するな!

 姫様泣かしたらどうなるかわかったもんでない。人間魔族関わらず、その場で即座に斬首刑の可能性も無きにしもあらずだ。

 あーもう! わぁかったから!!

「……まぁ、いいですよ」

 そう言って少し考える。良いとは言ったがそもそもパフォーマンスなんて考えていなかったぞ。

 ……よし、決めた丸投げよう。


「えっと、それじゃあ……何か要望ありますか?」


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