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141・なんだっけ


 で、さっきのお猿さんはどうなって……あ、落ちてきた。

 ひゅるるるると、風を切る音を出しながらお猿さんは重力に従いまっすぐ魔獣の群れの中心へと――

『ふん』

 落ちる直前。なにかものすごい力で分解かれたかのように、身体が爆ぜ、霧散していった。

 ……えー。

『敗者が戻ってくるな』

 たぶん戻ってくるの、お猿さんの意思じゃなかったと思うぜ。

 と言うかお前、それにしてもあんな霧みたいに……どういう力だ?

「ごめんねナルミ君。四肢の腱を断つのと感覚器官を削ぎ落とすことしかできなかった」

 ん? あ、あぁ。リム副隊長戻ったの?

「大丈夫ですよ。結果としては倒せましたので」

 完全にトドメ刺したのは敵さんだけど。

 ……ん? でもリム副隊長が四肢潰して感覚削いだのならそれはその時点でもうほぼ死に体じゃないのさ。

「そうだな。気に病むことはない。もともとお前は毒で弱らせてから狩るつもりだったのだろう? なら問題ない」

 なるほど毒か。

 王子様の言葉を信じるなら、つまりはリム副隊長はそう言う立ち回りを行いながら戦うという事だな。

 ……魔獣にも毒効くんだ。

「と言うか本来一撃で仕留められるナルミがおかしいんだ」

「……それもそうか」

 こいつら……。

「あなた達は自分をなんだと思っているのさ」

「普通人は素手で魔獣を斃したりはできないよ」

「しかも一撃でな」

 ……やばい反論の材料が見当たらない。

「でも、それにしても妙なんだよな」

 うん?

「なにが?」

 あ、敬語。

「魔獣が多く、そしてあまりに弱すぎる。せいぜいよくて強い魔物レベルだ」

 ……魔物と魔獣の違いをだな。

「確かにあいつらは魔獣ではある。だがそれにしてはあまりに弱すぎるんだ。今まで見たどの魔獣よりはるかに弱い」

「弱いならいい事じゃないですか」

「ただ弱いだけならな。だが問題は数だ。いくら弱いとはいえこう数がいれば十分に脅威だろう? そしてその数が一向に減る気配がないんだ」

「結構倒したつもりなんだけどねー」

 ……あー。こう、ゲーム脳的に考えるとだ。

「小さい魔獣生み出す親玉がいるんじゃないですかね? それ倒さないと無限増殖するというような」

「……この説明だけでよくそんな悍ましい最悪の発想ができるな」

 それ褒めてるの?

「しかしそうなると厄介だ。あの魔獣の群れの中からその本体を探さなきゃいけない訳だからな」

 あー、確かにそれは面倒そうな――

「それに関しては大丈夫かと」

 うん? どう言う意味ですかなリム副隊長。

「このまま持ちこたえればシルバがすべて一掃してくれますので」

 ……そうだったね。すっかりBGMと化してて目的忘れてたよ。

「ただこの詠唱は時間がかかるので、先はまだまだ長いですね」

 なるほどねぇ。

「でも、そうなると今度は別の問題があるぜ」

 まだあるんかい。

「魔獣の中には明らかに知性を持ったやつらがいくつか見受けられる。にもかかわらず、お嬢の歌を聴きながら何も変わった反応を示さないというのが気がかりだ」

「確かにそうですね。術式自体を知らなくても、魔力の動きで察知はされる。もうちょっと躍起になって阻止しに来てもいいものを……」

「……なにか、裏があるか?」

「可能性はありますね」

 ……単に余裕ぶっこいてるだけではないの? と言うのは楽観的すぎるかね。

 考えられるのはシルバちゃんの魔法を防ぐ手段があるか、はたまた喰らっても生き延びれる自信があるか。

 どちらにしろ、警戒しといた方がよさそうだ。

 下手の考え休むに似たり。今は目の前の敵をどうにかすることに集中しましょう。

「いまここで悩むだけ無駄ですよ。今はその問題だけ念頭に置きながらあいつら倒し続けて、そのなかにやべーやつがいたら重点的に潰していけば解決ですよ」

「……確かに、ナルミの言う通りだな」

「今はそれしかできることないし、数を減らすしかないか」

 言うておいてなんだが、王子様はともかくリム副隊長も案外脳みそ筋肉なのな。

「でもそのためには、そろそろ仕掛けねぇとな」

「ですね。後手後手に回っていてはそのやべーやつを探すことすらままならない」

「突っ込むか?」

「他に手がなければ、そうなりますね」

 ……突っ込んで大丈夫なんだろうか?

「幸いまだ、僕も一回変身できるくらいの力は残っています。行けなくはないでしょう」

 待ってリム副隊長。変身って何?

「お前のあれはよそに被害が出るからやりたくないんだよ」

「僕もあまり痴態を晒したくはないので同意見ですが、そうと言っていられない状況になるかもしれませんよ」

 ホントになんなの?

「まったく、ゼノアがいりゃいくらか楽なんだけどな」

「今は仕方がないですよ。そのかわり、ナルミ君がいる」

 だから過度な期待はやめてくださいってーの。自分だってさすがに度を越えた化け物相手には何もできないんだと思うからね?

 まぁこいつらは遠慮なく叩き潰させてもらいますがね。

 ……うん? 今唐突に思ったのだが、自分は何か重大なことを忘れてる気がする。

 はて、なんだっけ……。


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