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130・目となり

インフル君とデートしてて更新忘れてました。

許してぴょん

 誰だよ魔獣が十三体しかいないっていったの。

 自分が空跳んでる間に既に二十は見たぞ。

 と言うかほらまた鳥みたいなのが飛んでくるし。

「ほいっ」

『ぐぇ!?』

 向かってくる鳥を踏み台に、さらに一段高く飛び跳ねる。人より一回りくらい大きいから足蹴にしやすいぜ。

「これで8体目ですね」

「お前ひとりでうちにいた魔獣全滅させられるんじゃないか?」

「人間さんならやりかねないわね」

 左右と頭の上から好き勝手言ってくれるねぇ帝国女子ズ。

 まぁいいけどさ。にしてもくつろぎ過ぎと違うか?

 小鳥さんなんか自分の頭を巣にする勢いでくつろいでるぞ。飛んでついていくのが疲れるからとか言いたいことは判るが、もうちょい遠慮してもいいと思うぞ。

「あ、人間さん、髪の間で小さいかさぶたがはがれかけてるわよ」

「どうでもいいわ」

 だからくつろぎ過ぎだって。

「……人間も傷がつくんだな」

「というより血が流れてるのですね」

 本当こいつらは自分をなんだと思ってるのか。

「五時より一体!」

「ほいさっ!」

 その点シルバちゃんは優秀よな。真面目に真剣に。自分の視界外からの襲撃をきちんと把握して報告してくれる。

 おかげでこうやって対処できるってもんよ。

 そんなわけで鳥さんをシュート。ご退場願います。

『ギョッ!?』

 見事に顔面に回し蹴りが当たりました。

 ちょっとごめんと思ってしまう。

「……しかしいきなり回るのは、慣れんな」

「姫が吐いたところで誰も気にしないわよ」

「さすがにそれは国の恥にしかならないですからやめてくださいね」

 お前らはホント。

「……あ」

 と、自分が彼女らに呆れていたたところでシルバちゃんがなにか『ヤベッ』とでも言いたげに声を出した。

 この場でそんな声を出されると非常に気になるというか、うん。

 ひとまずと落ち着こう。とりあえず近場の家の屋根に着地して、素人ながらにも警戒しながら彼女に問う。

「どした。なんかあったん?」

「あ、いえ、そんな大したことではないです」

 こういう場でのそのセリフはたぶんスルーしたら後々響くぞ。

 なんでもない、からのやっぱりあれは、というのはよくある話だ。

「どんな些細なことでもいい。気付いたことがあれば教えてくれる?」

「え、と……確証はないのですが」

 おう。さらにスルーしたら後々参事になるセリフが追加されたぜ。

 さぁどんなフラグが建設され――

「見える範囲では空を飛ぶ魔獣が、全滅したみたいだなと思いまして」

 ……スルーしてもよかった奴じゃね、これ。

「そんなことならもったいぶらずに言えばよかったのに」

 これに関しては小鳥さんに完全同意。

「下手なことを言って警戒心を緩めることになるよりは黙ってる方がいいと思ったのよ。確証もない事だし」

 あぁ、まぁそれはそうかもわからんね。

 自分なら一回言われたら安心しきってしまう自信あるからね。はっはっは。

 言うてて悲しくなってきた。

 まぁ悲しんでる時間も惜しい。とりあえずと今目指すのは……ん?

『う、あー……』

「おい! 足元!」

 お姫様の声に反応し下を見るとそこには顔のない巨人が屋根の端を掴んで登ろうとしていた。

 ……えい。

『あ、あー……』

 そりゃぶら下がってるところで指を蹴り飛ばされたら落ちるわな。南無。

「……ほんとにお前はなんというか、頼もしいというか」

「見た目によらず豪胆ですわよね」

「シルバさんには悪いけど人間さんがいるとこういう時は安心よね」

 何が言いたいのかな帝国女子ズ。

 まったくもう人の苦労も知らないで。

「……あなた達は先生をなんだと思ってるんですか」

 そうだそうだ。言ったれシルバちゃん。

「褒めてるんだぞ」

 お姫様はよくもまぁぬけぬけと。

「ただこういう逃走劇はお姫様だっこされながらがよかったなとふてくされてるだけだ」

「……あなた状況わかってるの?」

「考えるだけ自由だろう」

「……先生。私この人たちの相手するの疲れました」

 ごめんなシルバちゃん。自分も相手すると疲れそうだからここは君に任せる。助けてやることはできない。

「まぁ――」

『あうー……』

「とう」

『あああー……』

「元気なのはいい事だ」

「……適当ですね」

 そう非難するな。

「美女四人護る以外にエネルギー回したくないだけよ」

「まぁ、姫。美女ですって。この年になって久しぶりに言われましたわ」

 グレイさんウキウキだね。

「やだもう。うふふふふ、お上手なんですからもう」

 照れ照れと頬に手を当て喜ぶグレイさん。

 それを見つめるのは冷めた瞳のお姫様である。

「気持ち悪いぞババァ」

 このお姫様の方が冷静って言うのがもうなんというか――

「しかしこいつは置いておいても、そうだな。確かにこの私を捕まえてそう言うとは、さすがよくわかっている」

 調子乗るなよ。

「そろそろ行こうか。ここに留まる理由もないし、なんだかんだとまだまだ長い」

 と言うかなんでこんなところに未だいるんだろうね。さっさと動けばいいのに。

 しかし、やっぱりこの街は広いな。10分くらい跳んでるが、まだまだ城壁が遠いぞ。

「そうですね、行きましょう。後ろの警戒は私にお任せください。私が先生の目となり敵を見つけます」

「頼りにしてるよ」

 シルバちゃんは今までの実績もあるし本当、冗談抜きで頼りになる。

「じゃあ私は右を見る目となろう」

「ならばわたくしは左ですね」

「え? じゃあ私は……上?」

「はっはっは。みんなまとめて頼りにしてますよ」

 でもやるなら最初っからやってほしかったな。

 と、言う事で自分は屋根を蹴り再び空に――

「エアハンマー!」

『ゴッ!?』

 ちょっと余計な事した後に跳び立ち、外へと向かって駆け出した。

 ……さっさと処理しとけばよかった。

「……下を見る目が足りなかったな」

 いえ、あれはお姫様たちが警戒していなかったからとかではなく、自分があれを生かしたまま放置してたのが悪いのです。

「……でも考えてみたら人間さんって気配を読めるのだから私たちって別にいらないんじゃないかしら」

「ほぅ……じゃあ気にせず景色でも眺めてるか」

 働けや。

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