10・近衛隊の愉快な仲間達
すがすがしい朝が来た。
雲はなく空は青く、顔を出したばかりの太陽は燦燦と輝き、風は爽やかに髪を撫でる。
実に、実にすがすがしい。いまラジオ体操をしたらさぞ気持ちがいいのだろう。
……こんないかにもな闘技場的場所でさえなければな。
大きさは目測250メートル四方くらいで、所狭しと石畳が敷いてあるでかいステージみたいなここは、訓練場とか呼ばれている所らしい。俗称中庭。
でもその周りには野球場の観客席みたいに階段状の席があり、どー考えても訓練とは違う娯楽の目的で使われてた気がするんだがきのせいか?
そして目の前には完全武装した6人の戦士たちが立っている。
なんだよ槍とか剣とか、ミミリィ隊長なんか戦車の砲撃くらいなら防げそうな身長程もある盾を片手で持ってるし。リム副隊長もなにそのカギ爪って、暗殺者かよコエーよ蛇ならもっと他にないのかよ。
まったくなんだおめーらなんの軍隊だよ。……あ、魔王の軍隊だった。
……ほんと、観客がそんないないのだけが救いだだよ。
現在いる観客はお姫様はもちろんゼノアやゾーンジーの爺さん、そして数人の偉そうなおっさん。
正直これだけならまぁ耐えられる。もっといっぱいいたらたぶんあがってしまって観客によって敗北する。
「どっちもがんばれー! 全力でやるんだぞー!!」
うるせーじゃじゃ馬。黙ってろ。
くそう……なんでこんなことに。
「じゃあ、先ずは自己紹介から。私とリムは昨日したから、ムーから順番に」
そんなこんなをやってるうちに、ミミリィ隊長がそう仕切りだした。
それとに従うように、まず一番右の紫の短髪の男が挨拶をする。
「……俺はムー・シャーリス、半竜人族だ」
170くらいの青色の切れ目で、蝙蝠のようなしかしどこか違うような羽が付いている。無骨な顔立ちで、無表情に近い顔でこちらを見る。
その手には非常に繊細な装飾のされた一本の槍。いかにもファンタジーな武器ですな。
しかし素っ気ないなぁ。つかドラゴニスってなに?
「ちなみに彼女はいない。募集中」
……君はユーモアラスさを求めようとしない方がいい人種だな。
で、次はその隣の赤髪の可愛らしい愛嬌のある女の子。身長は150くらいで、髪はいわゆるせみロング。ちなみに牙と長い爪を所持している。
あ、あとなんか身長ほどあるアンバランスにおっきい剣を持っている。何だこの世界はそういうのが流行りか?
「はい! 私はシルバ・ランドルフで吸血鬼です! えっと、よろしくお願いします!」
……おぅ、元気良いなヴァンパイア。この世界の吸血鬼は日光も平気なのか……。
……あれ? ランドルフ? それって確か――
「もしかして、ゼノアの――」
「はい。ゼノアお兄様の妹です!」
あ、やっぱり。
まぁわかったからってどうゆうわけじゃないが。
しかしこれ本当に兄妹か? 面影が色しかないぞ。うーむ……。
「……あ、あの、どうかしました?」
「ん? あぁ、失礼。ゼノアに妹なんていたんだって思って」
「……あぅ。その、ごめんなさいお兄様ほど優秀じゃないです」
いやそういうのは知らんよ。
そして行動が若干あざとい。ちょっとかわいい。少し赤くなるとことか。
あれだ、電波キャラのアイドルに少し萌えたりしたこともあったし、やっぱ趣味悪いのかな自分。
さすがに『星は爆発しました』発言は少しうわぁってなったけど
と、思っていると自分はあることに気がついた。
それは彼女がちらちらと横、エリザとゼノアがいる方向を気にしているようだと言う事だ。
自分も釣られてそちらを見てみると、お姫様がはにかみながら手をひらひらと振っている。それに反応して、シルバちゃん……まぁ、ちゃん付けでも良いだろうたぶん年下だろうし。彼女も嬉しそうに手を振り返す。
「……えへへ。がんばるよー」
なるほど、仲良しか。となればお姫様の手綱を握るキーパーソンは彼女かもわからんね。
しかしその後の『よーし、本気で行くぞー』っていう小声は聞きたくなかった。あざとくてもかわいくてもこの娘は身の丈ほどの特大剣を片手で持ち上げてる猛者だからね。怖い。
で、次に挨拶してきたのは、緑の髪の青年。背は170くらい、特徴のない髪型に特徴のない顔立ちの隠れイケメン。
武器も普通の弓的なので、実に特徴が無いように見える。
しいて言うなら眼が抹茶色で花の冠的なのと薄い虫みたいな羽を付けてるのが特徴だ。
「妖精族のテトラ・アストです。これからお世話になります」
そう言いながらニッコリと笑った。
……あ、あなんかこいつ、リム副隊長と似たような空気がある。恐らく手の者だな。なんか、そんな感じな笑いかただ。
さて、最後に、残ったのは真っ茶色い髪の女の子。160くらいの身長に頭の頂点で髪をまとめると言う独特なヘアー。
そしてくりくりした紅い眼のカワイイ系美女子は、俗に言うウサギ耳を揺らしている。
「ぼくはスゥ・カタストロフ。平凡な兎族です」
平凡なラビットって意味わからん。と言うかお姫様の護衛って中々にエリートなんではないか? しかもあれだ、カタストロフって『破滅』って意味でなかったか?
というかボクッ娘、ウサミミ、かわいい……なんだ、何か引っかかる。これだけ要素突っ込んだら多少は琴線に触れるはずなんだが、なぜかこれは違う感があるぞ。
いや、確かに見た目はふつーのかわいい女の子としか言えんな、この子。てか、一見テトラくんのが影薄そうだけど、こっちのが断然薄いな。
あれか、あざとくないからか? やっぱりあざといのが好きなのか自分?
いや、違うきっと彼女だけ何も武器を持っていないのが――
「……あ、ちなみに僕男ですから」
……。
そうそう、言い忘れてたけど彼ら全員執事服もどきかメイド服もどきを着込んでいる。
で、スゥ……君も一応執事服もどきなのだけどさ。
ちっこい身体にダボダボの執事服、余った袖。どう見ても男装少女だよ。ホントに女じゃないの?
まぁ、いい。もう気にしない。スゥ君は男、自分おぼえ――
「あ、さらにちなみにちなみにですけどムーはこの前こっちの街に来て12回目のナンパに失敗たのと、テトラはおやつを誰かにつまみ食いされて二人とも気が立っていますので、気をつけたほうが――」
「おいスゥてめぇそれ以上口を開くな」
「あんまり言うと僕達は始まる前に仲間を一人失わなくてはならなくなる」
一瞬で首に槍をこめかみに矢を当てられるスゥ君に、自分は微塵もかわいそうと言った同情の気持ちは湧いてこない。
ただ、そういう話をここでするのは馬鹿だなーっていう――
「ところでスゥ、ボクのおやつがなくなったのを気は何で知っているの?」
「……え?」
「あれ、なくなったことボク誰にも言っていないんだけど……なんで知ってんの? まさかスゥ、食べてないよね?」
「え、あ、ははは……そんな、ねぇ。ボクはムーのラブレターは読んでもつまみ食いなんてたまにしか――」
「おい、今なんて言った?」
「え? なにムーまでそんな……あ」
「貴様」
「だ、大丈夫! 誰にも言ってないから! もちろん給仕のあの子――」
「死ね!」
なんだこれ。なんか追いかけっこ始まったんだけどなんか始まる前から地雷原爆走して踏み抜いてる人いるんだけど。
つい、心配になってミミリィ隊長に聞いてしまう。
「とめなくて良いんですか?」
「スキンシップだから大丈夫よ」
どんなスキンシップだ。あいつドマゾか?
「それにスゥはあれわざとやってるし」
あ、ドマゾだ。
「スゥもあれでいろいろあるのよ。……しかしこれじゃあいつまでたっても始められないわね。しかたがない、こらー! やめなさい!!」
そう言って追いかけっこに駆け寄るミミリィ隊長の背中を見て、まるで小学校の先生みたいだと思ってしまう自分がいる。
「……ちなみに皆あんな感じですけど、やる時はしっかりやりますよ。なにせ姫様の近衛ですから」
「そうかい」
「スゥもスゥで、ああやってかまってもらってるって実感が欲しいんですよ」
シルバちゃんのフォローも空しく、自分は唯一つの心配だけが心の中に蓄積される。
大丈夫なんだろうかこの隊。変なのしかいないぜ。
というかあれだ、かまってもらえるって実感が欲しいだけであんな事をやられたらたまったものではないぞ。
特にお菓子。食べ物の恨みは時として万死に値するからね。
「……あ、ちなみにスゥはイタズラしたら後からきちんと謝ってお詫び持ってきますから大丈夫ですよ」
だからフォローになってないって。
そしてなんだ君はそんなジーっとこっちを――
そして、そんなこんなしているうちに最後に自分の番がきた。というかお姫様に言われてすることになった。
「……自分は長谷川鳴海、ちなみに鳴海が名前で、種族は人間です」
すると、何となくだが皆が息をのんだ気がした。
そんなに凄いのかねぇ……つかエリザ姫よ、なぜ貴様が鼻高々としているのだ
そんな訳で互いに挨拶を済ませたことだし、帰って――
「それでは、互いの紹介も終わったことですし今から対多人数護衛訓練を始めます」
……まぁ、忘れてないですよねミミリィ隊長。
そんな訳で自分対近衛隊の戦いが始まるのであった。
ちなみに今回、自分は割と自重しないつもりでいる。
だってあれだ、クエストあるし。また頭メキメキされるの怖いし。
……そして、ちょっとあの自称女神に『期待してる』と言われて調子乗って能力をもう少し試してみたいと思ってしまってると言うのもある。
ダクソ2DLC闇霊に辛すぎワロタ。
祈りの塔の篝火に篭られるだけで手出しできないじゃないか
霧があいてないのになりそこないエリアにでてきてしまったじゃないか
……チクショウ