クラスチェンジをしよう
ミツがグリモワールを受け取った後、カヲル達と共にクラスチェンジをするためにギルドの受付へと戻ってきた。
先ほどまでとは違い、受付には人垣が出来るほどの利用者で溢れかえっており、カヲル達と同じくクラスチェンジが目的だと思われる。
「アレって、全部クラスチェンジ目的の人なのかな?」
「そうかも……さっきまではコレほどじゃなかったのに」
カヲルの疑問にそうミツが答える傍で、リシェスを抱っこしたアリスがあまりの人の多さに目を丸くしている。
クラスチェンジをする為にはあの列に並ばなければならないのだが、カヲル達の身長だと確実に人混みの中に埋もれてしまうだろう。
「あら? 三人とも、そんな所で立ち尽くしてどうしたの?」
そう言って、書類を持ったクレセアが三人の傍にやってくる。
「ひょっとして、三人はクラスチェンジがしたいのかしら?」
三人が見ている先の人垣に気付いたクレセアがそう訊ねると、ミツが頷いてあの列に並ぶのが大変そうだと困った様子で答える。
ミツの説明に、三人の身長で眼前の人垣の中に並ぶのは確かに大変だと理解したクレセアが、三人をアークがカヲルとミツを初めて連れてきた事務室へと連れて行く。
「三人とも、クラスチェンジは初めてだったわよね?」
クレセアの確認に三人が頷くと、『それじゃ、クラスチェンジの説明から始めましょうか』と言って、三人にクラスチェンジについての説明を始める。
説明によると、クラスチェンジは一定のレベルに到達する事により、条件を満たしたクラスへの転職が可能となるそうで、通常はそれまでに就いていたクラスの上位に当たるモノが選択肢として出てくるそうだ。
それに加え、何らかの条件を満たす事によってアンロックされたクラスの中から就きたいクラスを選択肢、ギルドで更新登録をする事でクラスチェンジが完了する事になる。
この際、サブクラスを変更していない場合は、その時に選択されたメインクラスがサブクラスとしても登録されるという。
「ココまでは大丈夫?」
『大丈夫です』
「それじゃ、後の説明は実際にクラスチェンジの手続きを進めながら説明しましょうか」
三人の返答に頷いたクレセアはそう言うと、まずはミツのクラスチェンジから済ませる事にする。
「ミツちゃんはサブクラスをサマナーに変更しているのね。それじゃ、メインクラスもサマナーに変更するのかしら?」
「取り敢えず、僕が今クラスチェンジできるクラスを全て教えて貰えますか?」
ミツの申し出にクレセアは快諾すると、今現在クラスチェンジが可能となっているクラスを提示する。
【剣士】
武器による直接攻撃を主体とする基本職。
【魔術士】
魔法による攻撃を主体とする法士からの派生職。
【僧侶】
魔法による回復を主体とする法士からの派生職。
【召喚士】
特定条件下によってアンロックされる特殊職。
自身の魔法攻撃のみならず、契約した仲間を召喚して共に戦う事が可能。
「クレセアさん、初期クラスも選択肢に含まれているんですけど、これってどうしてなんですか?」
「それはね、最初に選んだ職業が自分には合っていなかったって言う人や、違う職の知識を学びたいって言う人の為なの」
基本的に最初に選んだクラスは変更が不可のゲームが多い中、World chronicleは基本職を変更できるシステムとなっている。
クレセアの説明通り、最初に選んだクラスが合っていないという人もいれば、取り敢えず両方を経験して自分に向いているクラスを見極めようとする人も居るだろう。
「それって、違う基本職を選択した場合、そちらの方の転職クラスも選択肢に加わるんですか?」
「良いところに目を付けたわね。ミツちゃんの言うとおり、別の基本職を選択した場合、クラスチェンジの選択肢はそれまでの分と合わせて選択可能になるわよ。ただし、違う基本職を選んだ場合は、そこから更に5レベル分のレベルアップが必要になるけどね」
ミツの指摘に嬉しそうな表情を見せたクレセアがそう説明する。
(ひょっとすると、違う基本職を選んだら剣士と法士の複合クラスが選択肢に出るんじゃないかな?)
内心でそんな仮説を立ててみる。
基本職を選び直し、そこから更に5レベルのレベルアップが必要となる手間を考えると、この仮定は正しいように思える。
サブクラスのシステム上、メインとサブのクラスが特定の組み合わせになった場合にもアンロックされるクラスが在るとは思うが、基本職を両方揃える事で組み合わせの選択肢も増えるはずだ。
とは言え、基本職だとレベルアップ時のステータス上昇補正は、上位のクラスと比較して低いモノとなるだろう。
ステータス上昇を重視するか、出来る事の選択肢を増やす事を重視するか?
クラスチェンジ一つ取っても、色々と思考する必要がありそうだ。
検証してみたい内容だが、カヲル達と共に行動する事を考えれば、あまり遠回りをする訳にはいかない。
ミツは現状で自分が取れる選択肢の内、カヲル達と行動する上においての立ち位置を考える。
(カヲルちゃんは剣士系で前衛のアタッカー、アリスちゃんは後衛で唯一の回復要員だけど、リシェスが戦闘に加わるのなら、遊撃寄りになるのかな?)
後一人、前衛職が居てくれればとも思うが、現状だと自分はミーシャを頭数に入れて火力の底上げを目指した方が良いと判断する。
その事を踏まえると、サマナーをサブクラスに固定して、メインクラスをスペルキャスターにした方が良いように思える。
システム画面に表示される両クラスのスキルを比較すると、サマナーは魔力の矢の上位に当たる魔力の連矢が主攻撃になり、召喚した仲間を強化したりする事の方が主体になるようだ。
それに対し、スペルキャスターは炎の矢、氷の矢等の属性が追加された攻撃魔法が主攻撃となる、魔法攻撃に特化したクラスだ。
「クレセアさん、メインクラスはスペルキャスターでお願いします」
「ミツちゃんは色々と考えているようね。サブクラスをサマナーにする事によって、契約した仲間との連携と基礎火力の向上を目指すのね。けれど、精神力を鍛えないと、すぐに精神枯渇で行動できなくなるから、ペース配分と自力アップが課題かしら?」
「そうですね。基礎を高めるために、施設を利用させて貰おうと考えています」
ミツ自身、魔法を使うのに必要な精神力のペース配分や最大値を増やす事が課題になると考えていたが、瞑想室で精神力を鍛えられる事を教えてもらったので、当面は施設を利用して自力の底上げを重視しようと考える。
「解ったわ。それじゃ、メインクラスはスペルキャスターでクラスチェンジ登録をするわね」
そう言って、クレセアは手元の書類に必要事項を書き込んでいく。
【システムアナウンス:クラスチェンジにより、メインクラスがスペルキャスターへと変更されました。システム画面にて詳細の確認が可能】
どうやら作業は完了したらしく、ミツのクラスがキャスターへと無事に変更されたようだ。
クレセアは続いてアリスのクラスチェンジをおこなう事にする。
【剣士】
武器による直接攻撃を主体とする基本職。
【魔術士】
魔法による攻撃を主体とする法士からの派生職。
【僧侶】
魔法による回復を主体とする法士からの派生職。
【使役者】
特定条件下によってアンロックされる特殊職。
契約した仲間を使役する事により、戦闘やフィールド活動でのサポートか受けられる。
アリスの選択可能なクラス一覧はミツと同じで、最後の部分だけが違っている。
今現在のアリスのクラスは、メインとサブ共に【法士】となっており、リシェスとは正式に契約を結んではいない状態だ。
当初の予定通り、アリスはクレリックへとクラスチェンジし、サブクラスをテイマーへと変更する。
【システムアナウンス:メインクラスがクレリック、サブクラスがテイマーへと変更されました。システム画面にて詳細の確認が可能】
アリスのクラスチェンジも完了し、最後はカヲルのクラスチェンジを済ませる事にする。
【法士】
魔法による遠距離攻撃を主体とする基本職。
【軽戦士】
盾による防御と、武器による近接攻撃を主体とする剣士からの派生職。
【重戦士】
両手武器による近接攻撃に特化した、剣士からの派生職。
【双剣士】
特定条件下によってアンロックされる特殊職。
両手に武器を装備する事により、特殊行動の使用が可能。
「う~ん、ツインブレーダーって、サブクラスにファイターとウォーリアは相性が最悪ね……」
一覧に書かれた説明文を読んだカヲルが困惑気味に呟く。
両手に武器を装備する性質上、ファイターの盾技能は使うことが出来ず、ウォーリアの両手武器技能はそもそも、武器のカテゴリーが違うために取る意味が皆無だ。
「クレセアさん、サブクラスを違う初期クラスにした場合も、5レベルアップでクラスチェンジの一覧に候補が出るんですか?」
カヲルの呟きから、ふと気付いた事をミツが訊ねる。
その質問に、先ほどまでとは打って変わってクレセアが困惑した表情を見せる。
「最低でも5レベルのレベルアップが必要と言うべきかしら。私が知っている分では最短で7レベル、最長で10レベルだったかしら」
どうやらサブクラスに初期クラスを設定した場合は、明確なレベルが決まっている訳ではないらしい。
ひょっとすると、スキルを使う事でクラスを成長させ、それが一定以上に達すれば候補が挙がるように内部パラメーターが組まれているのかも知れない。
カヲルへとミツはその仮説を説明する。
ミツから説明を受けたカヲルは暫く考えた素振りを見せると、ツインブレーダーへとクラスチェンジを済ませ、サブクラスをキャスターに変更する。
【システムアナウンス:メインクラスがツインブレーダー、サブクラスがキャスターに変更されました。システム画面にて詳細の確認が可能】
「メインとサブを一緒にした方が成長が良いのかも知れないけど、サブクラスに違う初期クラスを選べるのはこの中じゃ、あたしだけだしね」
そう言ってカヲルはミツへと視線を向けると、『初期クラスを両方クラスチェンジが可能な状態にすれば、複合クラスが出てくるかも知れないでしょ?』と、ミツが先ほど考えていた事を挙げる。
「うん、それは僕も気になってたけど、良いの? 遠回りになるかも知れないよ?」
「ミツ、前に言ってたでしょ、『このゲームは急いで先に進める類じゃ無い』って。だったら、色々と試してみても良いじゃない」
満面の笑みを浮かべたカヲルがそう言うと、ミツも笑顔を見せてカヲルに同意する。
「あたし達はそれで良いけど、アリスは急いでレベルを上げた方が良いのかな?」
「お兄ちゃんが私のペースで遊べば良いって言ってくれたので、私も急いでレベルを上げなくても大丈夫だよ」
アリスの事を気に掛けたカヲルが確認を取ると、アリスはそう答えてにっこりと笑みを浮かべる。
「これで、三人のクラスチェンジは全て終了ね。皆、初めてのクラスチェンジ、おめでとう」
クレセアからお祝いの言葉を貰った三人は、自分達がクラスチェンジしたのだという実感に、満面の笑みを浮かべるのだった。
2013年09月09日 初投稿




