歩み
「ごめん。俺がお前の側にいることは出来ない。ホントごめん」
どうしてよ…。ずっと側にいてくれるって言ったじゃん!!
叫びたいのに声が出ない。待ってよ。私だって言いたいことはあるんだよ。聞いてからにしてよ。ねぇ!!
「ごめんな」
「待って!!!!!!!!!」
チュンチュン
今のは…。夢?
今いるのはベットの上で。外では鳥が鳴いてて。真っ青な空が広がっている。
夢だ。あの時の…。
ベットから起き上がりとにかく落ち着こうと深呼吸をする。
私は石田 藍。高校一年生に成り立てです。
さっきの夢は…。中三の時の彼氏に振られたときの場面。
なかなか忘れられなくて、今でも週に4回くらいは夢に見る。
「藍ちゃん!!起きなさい!!」
一階のリビングから母の声。時計を見ると七時だと気づく。今日も学校だ。
私は布団の中から出ると、ゆっくりとした足取りでリビングに向かって歩き出した。
「おはよう」
母に挨拶し、椅子に座る。母の用意した朝食を食べ、再び自分の部屋に向かう。
自分の部屋に着くと制服に着替え始める。夏服はとっとと着替えられるから好きだ。
「行って来ます」
母にそれだけを告げ、家を出た。
「あっ」
最悪だ。どうして今出ちゃったんだろう。
目の前にいたのは元彼、中田 聖斗だった。
「おはよ」
聖斗は昔みたいに挨拶してくれた。でも私にとっては苦しい優しさだった。
「ん。おはよ」
少し俯き加減で答えた。今でも私は…。
早足で学校へ向かう。逃げたかった。聖斗から。
「待てよ!!」
なによ…。私の側には居れないんでしょ?
私は半分無視するようにそのまま歩く。
「待てって!!」
「!!」
驚いた。後ろから聖斗に腕をつかまれた瞬間、私はバランスを崩し後ろへと傾いたのだ。そしてそれを聖斗が支えてくれたおかげで倒れずに済んだ。
「待てって言ってんだろ?」
そのまま私は聖斗の腕の中に収まってしまった。
「お前のこと、待ってたんだ。どうしても伝えたいことがあって…」
私は何も言わなかった。ううん。何も言えなかった。ただ、聖斗の腕の中で聖斗の声を聞いていた。
「俺…。やっぱり藍のこと好きだ」
えっ?今なんて…。
「聖…斗?なに言ってんの?一緒にいられないって言ってのは聖斗でしょ?ねぇ、いまさらなんで?私は…どうしてこんなに悩んだの!!」
私は聖斗の腕の中で叫んでいた。耐えられなかった。今までの自分を否定されてる気分になった。
「ごめん。寂しい思いさせて。俺も辛かったんだ。あの日お前を振った後、凄い後悔した。ホントは離したくなかった。でも、お前の幸せを考えて離れた。お前のためとか言って自分を守ってたのかも知れない。ほんとにごめん。でもわかってほしい。お前がいないと俺はダメなんだ。…藍が好きだ」
「聖斗…。私のこと必要としてくれるの?」
自然と涙が出た。泣くつもりなんて無かったのに…。
「あぁ。もう一度俺の側にいてくれ。俺を…お前の側にいさせてくれ」
もお何も見えないくらい目に涙がたまった。あふれた。何もかもが。ゆっくりと。ゆっくりと流されていく。不安、恐怖、悲しみ…。すべてが涙で流されていった。
私はただ聖斗を離さないようにきつくきつく抱きしめた。そしたら、聖斗もきつくきつく抱きしめてくれた。
私は毎日笑顔で過ごしていた。
学校が終わり、校門に向かって歩いていく。
「藍!!」
私を待っている愛しい人。
「聖斗!!」
私たちは手をつないで明日に向かって歩いていく。