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2人ぼっち

作者: 沢まやこ

海の見える夕暮れの坂道を、いつも2人で上っていた


いつも寂しかった私と、いつも反抗的だった君と


手をつないで、長い坂道を上っていた


他愛ない会話に笑って、泣いて、怒って


日々が過ぎていくのは早い


10年後私は何になっているんだろう?


予想もできなかった未来だったのに、


あっという間に私は未来を現在へと変えてしまった。


10年後、私は相変わらずの寂しがり屋で、


相変わらず、君との2人ぼっちが心地よくて、


君は?


10年後の君は何にも言わずに、ただ私の手をとった。


冷たいね、と私が笑ったら、君も笑った。


横顔が、すっかり大人っぽくなっていた。



そしてさらに、もっとずっと先の未来。


特に期待できる物もなくて、大した趣味も持っているわけではなくて


まったく待ち望んでいなかった未来も、私は現在へと変えてしまった。


そんなもっとずっと先の未来の時


私と君は、永遠の愛を誓った。


いつの間にか好きになっていた、君の事を。


観客の少ない結婚式で、大好きのキスをした。


無表情な君は、そっと涙を零していた。


天使が零した滴のようなそれは、とてもとても綺麗だった



幸せだった、永遠の2人ぼっちが嬉しかった


君の感情の変化を見られて、私の感情の変化を見てくれたらそれでいい。



君の無表情な顔は、いつの間にか晴ればかりになって


私は負けじと快晴の表情をつくって


いつの間にか君の表情は曇りばかりになって


私は雨ばかりになって


いつの間にか君は、私の知らない所で雨を降らせていて



いつからだろう?私と君は別の空間に生きるようになった


あせって君のことを追いかけて、追い詰めても結局何も変わらなかった


いっぱいいっぱい君のことを好きなのは私だけなのかもしれない


そう思ったらどす黒い不安に包まれて、死んでしまいそうだった



喧嘩して、仲直りしたのに、またそれを繰り返して


私は一人ぼっちになった


結局君に、心の底を打ち明けられぬまま



私は、まだ君のことが好き


君の角張った優しい両腕が、笑うと優しげになる目元が


コンプレックスだ、と嘆いていた細すぎる髪の毛ですら


全部全部、大好き、壊れるくらい抱きしめてあげたい


でも、もう触れられない


君のこと世界一大好きなのに、二度と交わらぬまま、世界は終わる


未来は努力せずとも、望んでいなくとも現在になってしまうのに


過去をいくら欲しても、取り戻そうと追いかけても


追いつくことはない


二度と触れられない


思い出の中にしか居ない君が、私を慰めて、逆に傷つけたりもして


私はただ、待つ


君を忘れられる未来が来ることを


寂しくなんてない、寂しくなんてない、寂しくなんてない


私はもう寂しがりやでも泣き虫でもない



君は、最後の最後にも、私に何かを与えてくれるんだね

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