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第88片 理系少女と文系少年の観念

 体育祭、学校祭、修学旅行と終わり、俺らの高校生活にようやく平穏が訪れた。

 忙しさに目を回しながら乗り越えられたことが奇跡のように思える。本当に疲れた。

 そんな行事だらけの秋が終わった。

 そして。

 冬が訪れた。

「まだ雪も降ってないのにこんなに寒くなるか、普通・・・?」

「普通もなにももう11月ですよ。それは寒くなりますよ」

 久々の冬到来に完全にやられていた。

 俺は別に寒がりなわけではない。どちらかといえば暑い方が苦手なのだが、だからといって寒さが得意なわけじゃない。要するに春が一番好きなのだ。

 そんな俺らは登校中である。

 冬の寒い道を震えながら歩く。

 マフラー巻いてもいいぐらいだなぁ。今の俺らは冬服仕様だがそれは制服の話であって現在上着は着ていない。

 コートとか着てくればよかった。

「うわ・・・もう息が白い」

「七実さんそんなに季節の変化に反応してましたっけ・・・?」

「なんというかさ、秋から冬って大分変わっているような気がするじゃん。春から夏よりもさ」

「そう言われればそうなんですかね・・・」

 なんか納得していない顔だな。

 俺も別に理解してもらおうとは思っていないけれど。でも少し寂しい。

「まぁ、分かるぜ。その気持ち。でも僕はそうだなぁ。あまり季節の変化にはそこまで敏感じゃないんだよね。おっとまた話し方を間違えていたよ。こうだったね、こん『無』感じ」

 その時俺らの前には男がいた。

 学ランの男で他校の制服のようだが。

「あの・・・」

「あぁ、いや、君とは初対面っていうことに『無』っていたんだっけ?ほんとややこしい『無』ぁ。この世界が本当だろうと妄想だろうと変わら『無』いっていうのに。妄想汚染って意外と深刻『無』んだね。記憶が『無』く『無』るなんて冗談半分だと思っていたのに」

 えぇと、とその男は仕切り直す。

「どうもはじめまして。僕は桃句学園の3年生の・・・えぇと、どうしようか『無』。うーんと、無名氏ななしです」

「あ、えーと、ども桜浪高校2年の七実です」

「私も2年の岸島です」

 一通り自己紹介を終えたあとその男はポケットに手を入れて佇まいをなおす。

 それは佇まいをなおすとは到底言い難い態度ではあったが、相手の方が先輩ということもあり、というか俺自体あまりそういうのは気にならない性格なのだ。

 それにしてもこの人も笑顔を絶やさないタイプらしい。

 なんでそんなやつばっかりなんだ・・・。

「引き止めてごめんね。遅刻し『無』いようにちゃんとすぐ話を終わらすから安心してよ」

「はぁ・・・」

「え、えぇ・・・」

「で、話なんだけれど」

 ん?この人また話し方変えたか?

 いや、自信はないんだけど、なんとなーくそんな気が。数夏はまったく気付いていないみたいだけど。

「なんだい?あぁ、話し方ね。よく分かったね。いや、やっぱり君は文系少年たる才能があるんじゃないかな。まぁ、今はそれはいいけど」

 で、とまた仕切り直す。

「話は簡単。もうラブコメやめない?」

「「は?」」

 数夏と俺が思わずハモる。

 というかこの人・・・何を言っているんだ。

「落ち着いて。だからさこの無用で不要なラブコメまたは日常パートをやめないかって言ってるんだよ。僕と一緒にファンタジーやろうぜ」

「何を言っているのかさっぱり分からないんですけれど、あなたもなんかこう痛い感じの人なんですか?」

「いや、数夏。直接すぎ。てかあなたもって他に誰がいるんだ」

「未海さん」

「・・・・・・・・」

 すまん、柏部。全く反論できない。

「で、あんたはそれでどうするんですか?ファンタジーにして、バトルにして、テコ入れしてそれであんたは何をしたいんですか?」

「まずその意見から間違ってるんだよ、文系少年くん。すでにこの世界はファンタジーだ」

「・・・・・」

「君さ、頑張って現実味あるような表現ばかり使ってるだろ。妄想しかり、黒曜石ちゃんの存在しかり。それと色花ちゃんの言葉も全てなんでもかんでも。健気で律儀だよねー、この世界に異能はありません。現実味溢れた日常コメディ、ラブコメですってことを言いたいのかな?」

「何を言って・・・」

「ファンタジーを認めて現実を見ろよ」

「!?」

「あは、なんか矛盾した言葉になっちゃったけれど僕が言いたいのはそういうことだ」

 男はポケットに入れていた手を出し、そして身振り手振りで表現する。

「人間を妄想して現実にすることが、言葉で人間を吹っ飛ばせることが日常?何を言っているんだ君は。どう考えても異能で、非日常でこれはもうバトルだろう。体育祭学校祭をすることによって日常色を強めようとしたのかもしれなけれど、無駄」

 一回区切る。

 またポケットに手を入れて。

「君には今後も日常のことで説明のつかない現象が襲うよ。まぁ、何が言いたいのかというとこの話も終わりに近づいてるんじゃないかなぁってことなんだけれど。もしこの話が創作物だったらの話だけどね」

「で、それで終わりですか?」

「うん、終わり。まぁ、頑張ってラブコメってくれよ。僕はそれをニヤニヤしながら眺めているさ。すれ違いも両想いも存分に堪能してくれ。それじゃあまたね」

「・・・・・・」

 そう言って去っていく。

 まさか本当にこんな話をして終わりだとは・・・。

「なんだったんですかね?しかもまたねってまた会う気満々じゃないですか」

「知らん。知らないけれどこれが創作物だったとしたらあいつがラスボスって感じなのかな」









「僕がラスボスねぇ・・・」

「なに盗み聞きしてるんだ、お前は」

「やぁ、津神坂ちゃん。いやじゃあねって言ったら帰りたくなくなっちゃって」

「子供か。もしくは天邪鬼か」

 わたしは人の話を盗み聞きしている同級生を見つけた。

 同級生といっても学校は違うんだが。

「で、ラスボスさんはいつ何をするつもりなんだ?」

「ラスボスね・・・僕はラスボスにはなりたくないんだけどなぁ。世界を半分やるから僕に従えとかそんなの似合わないし。それ以上に世界を半分もあげたくないな、僕以外の人になんか」

「お前はラスボス以上にラスボス気質だよ」

 わたしはそう呆れて去るつもりだった。

 そう、つもりだったのだが。それはこいつの言葉でかき消されることになる。

「津神坂ちゃん、僕の下につかない?」

「それを本気で言っているんだとしたら死ね。もしくは殺すぞ」

「じょーだん。まだ死ぬわけにはいかないんだ」

「そんな思わせぶりなことを言ってまた適当に流すつもりなんだろ。やめてくれ。混乱する」

「そうだね、きっとそうだよ。君と同じで僕も嘘つきだから」

「・・・・・」

 これがもし嘘だとしたらわたしはすぐにわかるはずなんだが。

 まぁいい。

「じゃあな、お前と違ってわたしは忙しいんだ。受験勉強でな。お前も勉強しないと合格できないぞ。いや、なんか留年するんじゃないのか?」

「うん、そのつもり」

「は?」

「なんてね、また嘘だよ」

 いや、だから嘘ついたらわたしはすぐ分かるはずなんだよ。

 

というわけで本編です。


内容的には話ばっかであんまり進んでいないような気もするんですが、すこーし気になるところを入れてみたり。


あと番外編なのですが、今回はキャラ紹介でしたがキャラ紹介だけでなく普通の話も番外編として載せようと思っております。


ちなみにあれ?修学旅行は?っということなのですが。


これもまた要望があれば番外編で書こうかなぁと。なくても書くかもしれませんが。


なのでいつになるか分かりません。もしかしたら本編終了後かも・・・。


ではまた次回。

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