第81片 理系少女と文系少年の準備⑤
「委員長、なんか買うものあるー?」
「とりあえず、装飾のためのスパンコールをお願い」
「ほいほーい、あ、お前今暇か?暇なら一緒に行こうぜー」
「いいよ、どこに行く?」
「とりあえず100円均一とかにあんだろ。自転車で行くか」
「あ、行く前に買い物届けとか出しといてね」
「はーい」
学校祭直前。
もう授業もなく、1日中が準備時間として使える。
なんというかこういうのがいいよな。今は授業中のはずの時間なのに、外に出れたり友達とはしゃいだり、準備が楽しいというのがよく分かる日である。
「そこ、それはとりあえず乾くまで置いておいて。あぁ、それもお願い。それにはとりあえずテーブルクロスを・・・」
委員長の山田さんがすごく忙しそう。
文化委員の橘くんも今日はさすがに働いているらしく、山田さんの手伝いをしている。
学校祭が目の前まで近づいているという事実。
そわそわしてくるな。
「あー、俺もなんかしたほうがいいかなぁ・・・」
「七実さんは何もしない方がクラスのためでは?」
「おい!数夏、言ってもいいことと悪いことが・・・・・ってお前なにしてんの?」
よくパーティーとかで壁に吊るしたりする折り紙の輪の鎖に絡まっている数夏がそこにいた。
・・・・・顔とかにも絡まってよくわからないのだが。
「何って学校祭の準備ですよ。委員長にこれは岸島さんに向いていると言われてしまっては引き下がれませんしね!」
「いや、お前も明らかに邪魔になってるだろ・・・というか完璧に子供扱いされてんぞ」
「し、失礼な!・・・ふふ、七実さん自分が仕事もらえないからって私は妬んでいるのですね。その気持ちは分かりますが、少し落ち着いてください。そして大人になってください」
「お前が大人になれよ」
と言いながら俺は数夏に絡まった鎖をほどこうとする。
これ・・・なかなかキツいな・・・。
折り紙だから破れないようにしないと。
「うー・・・」
「ほら、動くな。ほどきにくいだろうが」
「ほ、ほどく・・・?」
「いや、この鎖を取るってことだよ」
「鎖ってなんですか?」
「だからこの折り紙のこれだよ」
「これはアフリカにある服ですよ。現地の人が着るものです」
「さらっと嘘ついてんじゃねぇよ!あと現地の人に失礼だ!」
「でほどくって何をですか?」
「だからこの鎖だってば・・・」
「これは鎖じゃなくてアフリカの・・・」
「あぁああああ!もう!お前のその服がとりにくいだろうがぁああああああああ!」
・・・・・・・・・。
「あ」
気付いたときにはもう遅い。
すごくまわりに見られていた。
「い、いや、別に服って服じゃなくてね。この鎖のことで、このアフリカの現地の・・・」
『(な、何言ってんだこいつ・・・)』
心の声が聞こえるようだ。
「ほら、七実くんも遊んでないで手伝って」
「あ、はい!」
「なんでそんな笑顔なのよ・・・」
〇
「ふぅ・・・ここが桜浪高校ですか・・・」
桜浪高校校門前。
そこには1人の女の子が立っていた。
リュックサックを背負った小柄で髪の毛を2つに結んだ女の子が。しかし出るところは出ているというかなんというか一般で言う少しぽっちゃりめな子なのだろう。
そんな女の子が校門前に立っていた。
「にししっ!あたしもここまで来ましたよ」
そう言って校門前から去っていく。
うーん・・・。
「なんというかわたしもそろそろ自分のクラスを手伝わないといけないなぁ」
とわたしこと津神坂。
本当に。
暇だったから校門に来てみたものの。
「面白いことなんて1個しか見当たらなかったよ、全く」
わたしはニヤニヤしながら自分のクラスへと戻ったのである。
とりあえず準備編終了です。
少し長くなってしまったのですが、今回の81片のために準備編をやったようなものです。
この話は短めなのですが・・・でも新キャラというかかなり前に一応におわせていたキャラクターがついに登場。
どんなキャラかはまた次回。・・・かさらに次回かまた次回か・・・。
つまり学校祭編の開始です。
ではまた次回。