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第79片 理系少年と文系少年の準備③

「御両人、お急ぎください。このままでは学校に遅刻してしまいます」

 ままごとにまさかのメイド登場。

 というかあの意味の分からないままごと設定の中によく入っていけたな・・・。

「ちっ・・・」

「ふん」

 太一こと加藤くんと数夏こと数夏がお互いに顔をそむける。

 そして急いでご飯を食べて登校の準備を始める。

「・・・・・・そうか」

 と呟いたのは体育祭の時、同じサッカーチームにいた竹内くんだ。

「森下はあれ以上設定を増やさないようにはやく場面を進ませようとしていたんだ」

 なるほど。確かにあのままだと山梨の悪ふざけとかで本当に手の付けられないことになるかもしれなかった。

 森下さんはそこまで考えていたのか。

 俺は四足歩行ポーズで1人感心していた。

「・・・・・あれ?俺セリフ言ってなくね?」

 とそこで気付いたことが1つ。もう場面が学校になるらしいし、出番がなくなるなぁ。

 一応言っておくか。

「ワン」

 ・・・・・・・・・・・・。

 なんの罰ゲームだこれ。

「では御兄妹。こちらへどうぞ」

「お、車か?悪いな」

「マジ感謝ー」

「えぇ、ポニペラルーシュです」

「はい!?」

 あれ?なんか森下メイドの様子がおかしいんだけれど。

「ご存知ないですか?ポニペラルーシュ」

「ぽ、ぽに・・・?」

「今、この時代、車よりも速い乗り物として有名じゃないですか」

『・・・・・・』

 森下さんもただの悪ふざけじゃねぇか!

 竹内くんもさっきかっこよく考察したのが間違ってて赤面してるよ!

「じゃあ、そのぽ、ぽになんたらで送ってくれ」

「お願いー的な?」

「かしこまりました」

 そうしてようやく朝ご飯を終えて学校へと向かう。

 もちろん太一と数夏は別々の学年、たぶん設定だと太一が高校2年生、数夏が高校1年生だったような気がする。

 2人はポニペラルーシュを降りて、玄関で別れる。

 そうしてお互いの学校生活を送るのだ。

「太一くん、おはよう」

 と声をかけたのはむちむちの野々村さん。

 なんていう楽なポジション!太一くんの友達という普通でいい人間の役を上手くとりやがった。

「おぉ、おはよう野々村」

「今日もいい天気だね」

「そのおかげでメイドに今日もポニペラルーシュで送ってもらったよ」

「・・・・・・そうなんだ・・・」

 野々村さんが困っている。

 加藤くんも悪ふざけに乗り出したのだ。

 これは野々村さんの失敗だな。さて・・・どうでるか・・・。

「ってさっきこの人が言ってたよ」

「えぇ!?」

 と指したのは竹内くん。

 まさかの丸投げである。

「いやー私、竹内くんの通訳でもあるんだー」

「・・・・・」

 これによって竹内くんがこの悪ふざけに乗らなければならないうえに、日本人ではなく外国人役ということが決定する。

 最悪だ。

「通訳してあげるからなんか言いたいことがあれば言ってみてもいいよ」

「・・・・・・」

 竹内くん・・・。

「くちゅらぴら、ぺろぺみどんぱぺーの」

『た、竹内くんが壊れた・・・・・!』

 どこの国の人だろうか。

 しかしこれはナイスアドリブである。これを通訳しなければならないという苦行が野々村さんにはあるからな。

「ふんふん、なるほど。太一くん、なんか竹内くんが帰りに君の家に行きたいんだってさ」

「!?」

 これまたナイスアドリブ!

 これで竹内くんを巻き込みつつ、自分は関係ないからと言って逃げることもできる。

 最高のセリフである。

「そうなのか?なら野々村もついてきてくれ、通訳がいないと大変だからな」

「いや、私は今日用事あるから」

「え?でも・・・」

「ほら、太一くんってロボットでしょ。翻訳機能とかもついてるんじゃないかな?ついてるに決まってるよ、だって君を作った博士も言っていたし」

「え?いや・・・ちょ・・・」

 なんかどんどん設定ほうりこんできたんだけれど・・・。

 もうどうしたらいいか分からないぞ、このままごと。

「あ、もう授業始まるから」

「え?おい、野々村!」

「おーい、席につけー」

 あれ?先生?

 先生役なんか決めてなかったはずだからたぶん誰かが役を見つけたのだろう。

「ほら、もう始めるぞ」

 先生役についたのは岡野くんである。

 野球部のキャプテンでもある彼は結構いろいろなことができるため、演技も他の人よりも上手い。

 やる気があるのかないのか分からない微妙なラインの先生を上手く演じている。

「今日は転校生を紹介するー」

「え?」

 転校生・・・?

 と思ったら岡野くんの隣には少林寺拳法部の皆木市みなぎしさんが申し訳なさそうに立っていた。たぶん、岡野くんとグルなのだろう。

「ペトラウム星から来た、ぺぺぺト・ペロリコーナカロバニスクだ、仲良くしてやれよー」

「ぺ、ぺらるとなにげにらーた」

『す、ストッープ!!!!!!!』

 全員で待ったをかける。

「どうかしたの?」

「いや、山田さん。これもうままごとじゃないよ。普通ままごとってみんなが学校から帰ってくるところから始まるはずだし、これテーマ家族だよねぇ!?」

「家族じゃない、これ」

「家族じゃないよ!何?ペトラウム星って!」

「この宇宙に住んでいる生き物全てが私たちの家族だという・・・」

「そんないい話的なことを聞きたいんじゃないんだよ!というかこれは劇じゃなくてままごとだからね!演じるのはお客さんだから」

「確かにそうね・・・」

「というかどこのシーンで飲み物とか渡せばいいのさ・・・これ・・・」

「・・・・・自販機?」

「自販機じゃ喫茶店の意味がないでしょう!」

 みんながそれぞれ山田さんにつっこみする。

 そういえばこれテーマ家族だったね。

「なんかもっとありきたりな、お父さんが夜遅くまで飲んで帰ってきてお母さんが文句言うみたいなそんなままごとをしようよ!」

「それは後でする予定だったのよ」

「じゃあ学校の描写いらなくね!?」

「確かに・・・これではテーマが学校生活になってしまうわね・・・」

「だからとりあえず帰宅のところから始めようよ」

「わかりました。では学校から帰宅。そのシーンをやりましょう」

 ようやく進んだ・・・。

 というかシーンってなんだよ。これままごとでしょう・・・。

「はい、では岸島さんに、加藤くん、山梨さんに橘くん、準備をしてください」

「もういいよー」

「では始めます」

 そうして場面は家。

 子供たちが帰ってくるところからだ。

「ただいまー」

 と声を出したのは数夏だ。加藤君は律儀に不良キャラをまだ守っているのでただいまは言わないことにしたらしい。

「あのさぁ・・・おふくろ」

「あら、どうしたの?太一」

「・・・・・・・・・・今日友達呼んでるんだ」

「ぱぷらにぽんぺらーの」

『た、竹内くぅううううううんんんんん!!!!!』

 そしてまた全員でストップをかける。







『・・・・・・・・』

「さて、今日はこのぐらいにしましょう。また明日もやりますからね」

『・・・・・・・・』

「では解散」

『・・・・・・・・』

 みんなヘロヘロに疲れながらも帰宅するのであった。

学校祭の準備はまだ続きます。


学校祭・・・準備期間が実は一番面白いとかってあるあるなのではないかなぁと。


準備期間も楽しければ本番も楽しいんでしょうけれど。


ではまた次回。

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