第7片 理系少女と文系少年の5月5日
「今日は何の日だと思います!?」
そんな一言から始まった今日。この際、なぜ俺、七実未空の部屋に理系少女である、岸島数夏がいるのかはおいておこう。はて?今日は何の日だっただろうか。
「なんか楽しそうだな」
「はい!今日1日楽しみましょう!」
やべぇ・・・ますます今日は何の日かわかんなくなってきた。どうすりゃいいんだ。いや、普通に今日が何の日かきけばいいんだ。
「岸島、いったい今日は・・・」
「戸張さんや緋色さんも今日が何の日かわかってくれてたんですよ!嬉しいなー」
「・・・・・・・・・」
「でなんですか?」
「いや・・・・・」
ダラダラダラダラダラダラダラダラ。汗が止まらない。どうしよう聞きにくい!なんでこんな嬉しそうなの!?正直いって今日が何日かもわからないんだけども!
「その今日という日は何をするべきだと思う?」
「何を言ってるんですか!今日はとりあえず魚をあげないとっ!」
誰に!?え?魚ってなに!?いや、魚は知ってるよ。なんで魚を他人にあげるの?上げる?揚げる?なに?今日は天ぷらパーティーなの!?
「そのあと!そのあとは!」
「そのあとはー・・・勝って兜の緒をしめる、ですかね?」
分からないっ!こいつ国語は絶望的なはずだけども・・・。じゃあ何かと間違えてるのか・・・。あああああああああああああああああああ!!どうしようぅううううううううう!!!
「あぁ、確かにしめなきゃな」
「はい!」
知ったかぶりしちまった・・・。意味わかんねぇ。せめて日にちを確認できれば・・・。
カタッ
「ん?」
するとそこに携帯があった。しめた!俺は急いで携帯を開く、そこにあったものは・・・。
『5月5日』
「魚じゃなくてこいのぼりだし、勝って兜の緒なんてしめねぇよぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「えぇええ!?そうだったんですか!?そしてなんでいまさら!?」
今日は子供の日です。
みんなの食堂にて。今日は俺、岸島、山梨、緋色の4人がいた。朝ごはんを食べる。
「今日は子供の日だね。兜は男の子の日でもあるから用意したけれどいるかしら?」
「香織さん。ここに男の子がいるんですが」
「いりますよ!男の子がいなくても飾りたいのです!」
「いや、いるからね」
「はいはーい!私も飾りたいでーす。どっちかっていうと七実くんって女の子サイドだと思いまーす」
「いや、純粋な男だから。ハーフじゃないから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・数夏、子供みたいでかわいい」
「お前はいい加減目を覚ませよ!」
俺の存在を主張するだけで精いっぱい。そして最後は思いっきり私情だったしな。
「朝ごはん食べたらとりあえずみんなでこいのぼり飾ろうか」
「はい!頼りにしてますね、七実さん!」
「七実くん、ファイト!」
「・・・・・・・・・・・・・・未空ならいける」
「完璧に人任せじゃねぇか!手伝えよ!」
「でも高いところに登らなきゃいけないし、こういうのは男の子のほうがいいんじゃない?」
「香織さん。俺、残念ながら高所恐怖症なんですけど」
「情けないですね」
「残念だよ」
「・・・・・・・・・・未空、幻滅」
「うん、これは俺もヘタレだと思うよ・・・・」
もはや言い返せる力なんてなかったんだ。だって本当に情けないし。
「さーて!やっりにいこうっぜ!」
『おー!』
「猛獣狩りにいこうーよ!」
「いかねぇよ!」
ご飯を食べ終え、片づけをしてから準備をして外にでる。寮のまわりは比較的広くてなんでもできそうなイメージがある。寮自体もまだ新しくパッと見かなり豪邸って感じがする。
さてここで服装をまとめておこう。今日は休日なのでもちろんみんな私服だ。
まずは俺、ジーパンに普通のTシャツ。以上。
岸島はフリフリのワンピース。肩にかかってる部分はひもで脇なども見えるわけだが脇フェチでもない俺は別になんとも。でも目が行くのはなんでだろう。ワンピースでもひざちょっとしたぐらいで白色の綺麗なワンピースである。胸は少しふっくらとしてる。そして今日のリボンはハートだ。
山梨はダボダボなズボンに半袖のTシャツ。チェーンがついていてなんかあかぬけてる感じ。こいつ胸だけはすごくてTシャツがきつそうだ。というかやばいなこれは。凶器か。
緋色はふわふわのスカートにパーカーという格好。胸はそんなに大きくないがパーカーのせいでよけいに見えなくなっている。そしていつもは髪を束ねないけれど今回はツインテールにしている。かるくツボだ。
どうだかなりレベルが高いだろ!これだけで目の保養になるぜ!
「なんかいやらしい目をしていませんか?」
「いっつものことだよ」
「・・・・・・・・・・・未空は変態」
「うるせぇな、ていうかスカートにダボダボズボンってお前らやる気あんのか?」
「ありますよ!じゃあ、トップバッターは岸島が行きます!」
そして屋根にのぼろうとはしごに手をかけた。
『おいおいおいおいおいおい!!』
全員で止めていた。
「・・・・・・・・・数夏、パンツ見えるよ」
「そうだよっ!無防備だよ!」
「あぁ・・・・・・ほんと気をつけろよ。男がいたらどうすんだ。ま、今はいないからいいけどよ」
「・・・・・・・・・未空、ここぞとばかりに女の子にならないで」
はっ!しまった!あぶねぇ、本能のままに動いてたぜ・・・ふぅ。岸島は顔を真っ赤にしてうなずいた。ていうかこいつアホ毛があるんだな。今はしおらしくなっている。生きてんのかこのアホ毛。
「ここはこの山梨がいきますとも!」
「・・・・・・気をつけて」
よいせっ!といいながら屋根の上に登る。運動神経いいからな・・・こいつ。でも一歩動くたびに胸が・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・私が行く」
「お!おい!ちょっと待てよ!」
急に緋色がはしごを登り始めたので下をむく。こいつもスカートなんだよなぁ。やりづらい。
「その・・・」
「ん?」
岸島が話しかけてきた。俺は一番最後らしい。
「その・・・胸って大きい方が好きなんですか?」
「へ!?」
思わず声が裏返ってしまった。どういうことだ。なんだこの状況。まさか、俺を攻めて楽しんでるのか?ドS!?ドSなの!?ここで新たに性癖発見!?でも恥ずかしがってるのはおかしいよな。
「いや、俺は胸なんて関係ないぞ。そして俺は小さくても大丈夫な男だぜ!岸島のは特に大好物だ!」
うん、発言してから気づいたけどこれただの変態だよね。クラスメイトに発情した変態少年だよね。これは嫌われましたね。うん、さようなら俺。
「そっ!そんなことはきいてないのです!わ、私の胸の話なんて・・・・・」
あ、あれ?怒らないの?顔が赤いよ!これはやっぱり怒ってるのだろうか?セクハラだったしね。怒られてもしょうがないよね。
「で、でもそうですか。へぇー、私のぐらいのがいいのですか。ふ、ふーん。じゃ、じゃあ、もう牛乳とか飲まなくていいですね・・・」
「ん?なんだって?」
「なんでもないです!」
そして登り始めやがった!俺は思わず下を見る。ほんとヘタレだな・・・。思いっきり上をむけば楽園なのに。でもなんか今は見れなかった。岸島の笑顔が見れたから。あいつは笑っていた。それだけでもう何もいらなかった。
〇
「いやー無事こいのぼり飾れたねー」
「・・・・・・・・・・・・大成功」
「いやー綺麗ですねー!ほんとに魚さんです!」
「あぁ、ほんとよかったよ。お前らがはしごを片づける前まではな!」
そうこいつら俺の存在忘れて先にはしご降りて、勝手に片づけやがった。そのせいで俺ははしごなしで降りなければならなかったのだ。
「俺、高所恐怖症って言ってたよね!」
「次は兜ですかー」
「聞いてる!?」
「兜だよー、戦じゃ戦じゃー!」
「聞こえてないの!?この距離で?!」
「・・・・・・・・・・・・・・聞かない」
「せめて聞こえないにしてくれよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
聞かないのはお前の意思の問題だろうが!
「次は兜でござるな」
「兜ですー!楽しみですよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・未空、箱から出して」
「俺の扱いがひどくなっていってない!?」
といいつつも箱から兜などを出していく。
「あっ!刀だー!シャキーン!」
「ずっ!ずるいです!私にも貸してください!」
「きみの背丈じゃあ私には届かないぜ!」
「くっ・・・・このっです!」
「ははははははは!」
猫じゃらしで遊んでる猫だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・可愛い」
「ベタぼれだな」
そして飾り付け開始。
「このひもはどこのだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ここの」
「お、そこか。さんきゅ。ってこの刀はどこに置くんだよ」
「それはここじゃないですか?」
「おぉ、そうかさんきゅ。」
「七実くん、私も分からないところがあるんだけど・・・・」
「ん?どこだ?」
「この部分なんだけどどこのパーツかわかる?」
「パーツってなんだよ!?プラモデルじゃねぇんだぞ!」
普通あるはずのないパーツがそこにはあった。
「どこで壊したんだよ」
「壊してないよー。私かよわい女の子だしー」
「お前!ツノの部分ごっそりやっちまってんじゃねぇか!どこがかよわいんだよ!」
「握力が650以下ならかよわいです!」
「ゴリラか!!」
ゴリラもそんなにねぇよ!だれなんだよ、そのEX!りんごなんて簡単につぶせるじゃねぇか!
〇
そんなこんなで兜完成!
「ひとまずこんなところだろ」
「はい!すっごく楽しかったです!」
「んー!疲れたー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・久々に動きました」
大分楽しんだ。かなり楽しかった。誘ってくれた岸島に感謝だな。
「おーい、柏もちできたよー」
香織さんの言葉で全員が1階にあつまる。
「いやーおいしいですよ、香織さんの柏もち!」
「ほんとです!おいしいです!」
「ほんと?ありがとねー」
そういって岸島の頭をなでる、香織さん。
「えへへ」
「俺もなでてやろうか?」
「な、なにいってるんですか!だめですよ!」
涙目な俺。
「ははは。嫌われちゃったな」
「・・・・・・・・・・未空、哀れ」
「うるせぇよ!」
それにしてもひっかかることがあった。岸島は喜びすぎじゃないか?1つ、1つ初めてみたいな反応だった。後できいてみよう。
「あ、ちょっと部屋に一回戻りますね」
するといいタイミングで2階へあがっていく岸島。よし今がチャンスだな。
「俺も!」
俺は2階に上がるすると岸島は部屋に入ろうとしてるところだった。
「岸島!!」
「はい?どうしたんですか?七実さん」
「その・・・・・もしかしてこどもの日を祝うのって初めてか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい」
「そうか・・・」
「理由はきかないんですか?今現在16歳の私が今までなんで祝えなかったのか」
「お前が話したくなったら聞く。そういうもんだろ」
「・・・・・・・親が忙しかったんです」
「え?」
「典型的な共働き家庭なのですよ。子供の日どころか最近は誕生日さえ祝ってもらえません」
「岸島・・・・・」
「でもそれも私のためなのですからしょうがないのです」
俺は思った。この子は弱い。今にも崩れてしまいそうだと。ここで俺が支えないとこの子は倒れてしまう。そう思った。自意識過剰かもしれないがこの支えは俺じゃなきゃいけない気がした。
「きっ!岸島!!」
「はい?」
「お前のおっぱいは最高だ!」
「へ・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
じ・・・ばく?あれまたセクハラ?俺1日に2回セクハラしないと生きていけない体になったのだろうか?やばい!勢いで誤魔化す!
「おっぱいだけじゃない!何から何まで最高だ!中身ももちろん!そんな最高のお前に誕生日の日、最高の俺が最高のプレゼントしてやる。最高のお前にふさわしいような最高の日にしてやるよ!」
「七実さん・・・・・」
「だから誕生日を教えてください!そしてもういっそ殺してぇえええええええええええ!!!」
完璧な自爆だった。もうはずかしくてお嫁にいけない!
「うぅ・・・・・・違うんだ、岸島・・・これは!」
「7月7日」
「?」
「私の誕生日です。楽しみにしてますよ。最高の日」
「岸島・・・・・・・・・おう!任しとけ!やったるぜ、今から準備開始だ!」
「ふふっ」
岸島はちゃんと笑ってくれた。俺らは一階におりる。岸島は二階の鏡をみたかったらしい。それが終わって一階にいくと・・・・
「俺が最高の日にしてやるぜぃ!だってさ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・未空、かっこ悪かったけどかっこよかった」
「やるじゃない!あんた」
ききききききいてやがった!!!!!
「おおおおおおおおおおお前ら!!!」
「はははは!最高のおっぱいだ!」
「最悪だよちくしょーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「他にも言ってましたよ」
「なっ!岸島!裏切るな!!」
岸島はきっと何か抱えてる。俺と同じように。でもいいんだ。今が最高の笑顔だから。今を楽しめばいいんだから。
「・・・・・・・・・・今を楽しめばいいんだから」
「緋色!?地の文読むなっていってんだろぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
にぎやかすぎて近所迷惑にならないか気になるこのごろです。
またまた更新です。
今回は意外と長くなってしまいました。
ほかの寮生もはやく登場させたいところです。
でわ