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第75片 文系少年と桜浪高校の日常

 3連休が終わった。

 終わってしまった。体育祭の疲れをとることを目的とした3連休だったわけだが、まるで休めた気がしない。というか足りない。

 なんで1週間の体育祭の後の休みが3日間という半分以下なんだよ。あと1日欲しいと思うのは贅沢だろうか。

「学校だるいー」

「七実さん、まるで子供ですね」

 ふふんと得意げに数夏が笑う。なんだその鼻につく笑い方は・・・!

「学校がだるいだなんて、この高2の秋に言えるんですか?やることがたくさんあるでしょうに」

「お前・・・・・」

「なんですか?」

「久々にまともなこと言ったな」

「それは喧嘩を売っているということでいいんですね!?」

 教室の休み時間。

 この後も授業があるという憂鬱さにげんなりしていた。

「七実くーん」

 すると入口の外から担任の先生に呼ばれた。

 なんだ・・・?なんか先生から呼び出しっていうだけで怒られると思うのは俺だけだろうか。

「七実さん・・・何やったんですか?」

「いや・・・何やったんだろう・・・」

 俺は不安を消せずに先生のところに行く。

「あの・・・なんでしょうか」

「進路相談室へ行きましょう」

 担任の先生(女性)は俺を進路相談室へと連れて行くつもりだった。

 ・・・・・・・。

 進路についての相談か?

 数夏も最近先生に呼び出されたらしいし、進路についてだな、うん。

 その時にすっごい人に会ったんですよーとかってドヤ顔で語っていた数夏を思い出す。

「さ、入って」

 俺は先生に促されて進路相談室へと入った。

 中身はでかい机があるという点以外は普通の教室と変わらない。

「今日は君に進路についての面談をします」

「はぁ・・・」

「まず、最初にこれはどういうことですか?」

 と見せられたのは3年生で選ぶ教科選択の紙だった。

 これで3年生のクラスわけも決まるという大事なものなのだが・・・。

「これで決定じゃないけれど・・・七実くん、あなた理系に進むつもりなの?」

「いえ・・・それは・・・」

 思い出した。

 最近、教科選択、今後の進路についての調査表をだしたんだった。

 そこで俺が選んだ道は理系。

 いや、少しだけふざけて書いた部分もあるんだが・・・。

「あなたは完璧な文系でしょ?現代文と古典は順位もいいんだから進むなら文系が普通じゃないの?」

「えぇ、そうなんですけれど・・・少し数学についてもっと知りたいと思っていまして」

「・・・・・・・私はあなたたちの進路について否定したりはしない。あなたがこれでいいというならその道に進んだらいいわ。でも、これはさすがに否定、いや、止めたくなる内容ね」

 本人の意志が一番大切と言っても確かにむざむざ留年させるようなことはしないよね。

 否定されると思っていた。いや、止められると思っていた、か。

「それとこれ」

「えーっとこれは・・・」

 大学進学とだけ書いた進路先についてのプリント。

 これ、詳しく書かないとダメなんだったけか・・・。

「大学進学ってことはいいけれど、あなたが行きたいの理系の道なんでしょ?どこか行きたい大学とかないの?」

「特には・・・」

「就きたい職業とかは?」

「それも特にはありません」

「そう・・・ですか・・・」

 先生はプリントを回収して席を立とうとする。

「じゃあ、これで今日は終わりにしましょう、時間もないわけだし」

「あ、・・・はい」

 なんだ?意外とあっさりしてるな。

「明日も呼びます」

 ・・・・・・・。マジかよ。

 確かに無理して理系に行きたいと言っておいて何も考えてないってかなりやばいよな。

「はい・・・」

「先生はあなたに理系の道をすすめません。ちゃんと自分で考えておいてください」

「はい・・・」







「はぁ・・・・・」

 俺はため息をつく。

 教室に帰る途中に飲み物を買おうと自動販売機によってジュースを買う。

 炭酸を買って一気に飲む。

 ただ意外と炭酸が強くむせてしまう。

「がは・・・ごほっ・・・」

 ちょっと涙ぐんできた。

 俺は一体何をやっているんだ。

「ちょ、大丈夫!?」

 と誰かが声をかけてくれる。

 とりあえず大丈夫だということを伝えるためにオーケーマークを手で作ろう。

「がはっ・・・ごほ・・・ごほ・・・」

「全然オーケーじゃないよ、それ」

 俺は落ち着くまで少し待ってという意味を込めて手で待ってマークを作る。

「・・・・・・・はぁ・・・・」

 ようやく落ち着いてきた。

「あぁ、ありがとう」

 俺は駆けつけてくれた人に対してお礼を言おうとしてそこで初めて誰が俺に声をかけたのかということが分かった。

「下野さん・・・?」

 それは下野さんだった。

「大丈夫、七実くん」

「え?あぁ、うん、全然大丈夫」

「よかったー、すっごいむせてたからさ、驚いたよ」

 そう言って笑ってくれる。

「本当に大したことじゃないからさ、わざわざありがとう」

「いえいえ、ではこれで」

 たったったったとすごいスピードで走り去る。

 足が速いのはやっぱさすがだなぁ、とかって思っていた。

「・・・・・・・」

 ま、教室に戻るか。

「・・・・・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・。

 あぁ、なんかなんか分かってしまったのかもしれない。

 いつからか、とかなんで?とかそういうの抜きにして分かってしまった。

 俺が今、精神的に追い詰められているからとかそういうのも抜きだ。

 たぶん、本当にあっさりしていて申し訳ない。

 なんで急にそんなことになってんの?とか思われるかもしれない。

 でもたぶん、それはこれが創作じゃなくて現実だから。

 だからこんなに急で。

 そして。

 辛いのか。

 たぶん、たぶん俺は。

「俺は・・・」

 下野さんが好きかもしれない。

なにげに一番タイトルに困った話かもしれません。


今まで理系に未練があるということを忘れがちになってしまうような話ばかりでしたから逆にタイトルは簡単だったんですよね・・・。


少しずつこの物語の核心に触れていきますのでよろしくお願いします。


ではまた次回。

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