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第74片 理系少女と理系少年の邂逅

 先生との進路についての面談で帰るのが遅くなってしまいました。

 七実さんには先に帰るように言っておいたので一人での帰宅となります。

 どうも、あいさつが遅れました、岸島数夏です。

「えーと・・・今が5時だから・・・」

 あじさい荘に帰る頃には6時近くになってますかね、いやたぶんそんなに時間はかからないと思うのですが。

 今日の晩ご飯はなんだろうなーとうきうきしながら帰宅しようと教室に戻ります。

 鞄を置いておいたんで、用意をまずしてからじゃないと。

「おい」

 すると急に後ろから声をかけられました。

 後ろを向くと、その声をかけた人物は教室の入口付近に立っていたのです。

 というかなぜ、教室に入ってこないで入口に立っているのでしょうか。もうほとんどの人は部活やら帰宅したやらで誰もいませんのに。

「あの・・・どちらさまでしょうか」

 というかこの人、少し長めの髪が金髪です。

 不良ですか・・・まさか・・・こんな人物が本当に現実にいるなんて・・・ただ制服を改造している様子もなく、崩してもいません。

 不良ってだらしないイメージがあったのですが。

「お前、岸島数夏だな」

「えぇ、まぁ・・・」

「用がある、ちょっとこい」

「え?」

 私にですか?一体何の用があるというのでしょう。私の胃袋はもう限界ではやく家に帰りたいというのに。

 私はとりあえず教室から出ました。

「あの・・・なんで教室に入ってこないんですか?」

「あ?お前何言ってんだ?」

 ・・・・・・すごいにらみ。これが『がんをとばす』ということなのでしょう。

 七実さんの漫画とかで見たことがあります。

「俺は4組、お前は2組だろう。それでこの教室は2組じゃないか」

「・・・・・・そうですけれど・・・・・それがどうしたのですか」

「他のクラスの教室には入っちゃいけないって校則を忘れたのか、お前」

「・・・・・」

 なんというか、そんな校則を守っている人なんて見たことないんですけれど。

 しかも今は誰もいない。この状況を見る人なんていないのに。

 もしかしてこの人すごい真面目・・・?

「で、用ってなんですか?」

 少し恐怖が薄れた私は強気にでます。

「俺の名前は鈴木大和すずきやまと。知っているだろう」

「いえ、まったく」

「なっ・・・!お前!俺はな、数学、物理などの理系分野のテストで2位の人間だ!いっつもお前の下にいるだろうが!」

 そんな情けないことを堂々と言われても・・・。

「私、順位表とか見ないんで、すみません」

「お前・・・・・マジかよ・・・」

 本当に心底悲しそうな顔をしますね・・・なんか罪悪感が凄まじいです。

「俺はいっつもお前を超えるためだけに頑張っているというのにお前ときたら今のいままで存在さえ知らなかっただと・・・!」

「いえ・・・そのすみません」

「謝るな!ちくしょう・・・・・余計に惨めじゃねぇか・・・」

「その・・・次からはちゃんと見ますんで、順位表」

「・・・・・いや、もうそれはいい」

「え?」

「俺はお前に宣戦布告しにきたんだ!」

「はぁ・・・」

 この人は真面目というか馬鹿なのかもしれません。

 なんか七実さんに似た感じがします。

「次のテストは俺が1位をとる!」

「・・・・・」

 そんなこと宣戦布告しなくてもいいことでしょうに、と私は思いますが。

 数学に物理・・・数々の理系分野で頂点を守ってきている私がこの挑戦を受けないわけにはいきません。負けるわけにはいかないのです。

「いいでしょう、では受けて立ちます」

「ふん・・・その心意気、いいな・・・いいぜ!」

「順位表見てやりますよ、私の下にあなたがいるということを確認するためにね」

「言うじゃねぇか・・・次の俺の気合いは半端ねぇぞ」

「こちらもです」

 とここで結構話していたということに気付きます。

 もう5時半じゃないですか。

「では私はそろそろ」

「ん?なんか予定でもあるのか?」

「いえ、待っている人がいるので」

「待っている人?」

「たぶん言っても分かりませんよ。あの人壊滅的に男友達いませんし」

「・・・・・言ってみろ」

「七実未空」

 その瞬間不良(笑)さんが驚いたような表情を見せました。

「七実・・・未空・・・」

「知っているんですか?」

「文系少年・・・だろ?自称っつーか、なんつーか最近じゃあ本物になったんだっけ?」

「・・・・・」

 変なところで有名ですね、あの人は。

「それだけじゃなくさ、俺とあいつは元親友だったんだ」

「!?」

 七実さんの元親友?

 というと2年生に上がる前に七実さんがひねくれた原因がこの人っていうことですか?

「まぁ、元親友っていうのは俺が言ったわけじゃねぇが、あまり仲が良かったわけじゃねぇんだよ。会うたびににらみ合っていたような感じだしな」

 それって結構仲がいいのでは?

 なんとなくこの人は素直になれなさそうな顔をしていますからねぇ・・・顔ですが。

 世間ではツンデレっていうんでしたっけ?

 いや・・・ツン・・・ドラ・・・・・?

 忘れました。

「あいつのところっていうことはあじさい荘の住人っていうことか」

「えぇ、まぁはい」

「妄想に雷瞬、氷結やらだけじゃなくて理系も加えたってわけね・・・ほんと人間びっくり箱みたいなところだなぁ」

 で、と不良(偽)さんは区切ります。

「七実は元気そうか?」

「えぇ、それはもう元気です、手に負えないぐらい」

「そうか・・・」

 不良(?)さんは少し安堵したように見えました。

 最初会ったときからなんとなくいい人だってことは分かってましたがね。

「まぁ、あいつのことはどうでもいいんだ。俺はお前に宣戦布告にきたんだからな」

「えぇ、楽しみにしてますよ」

「あのさ・・・お前に1つ聞きたいことがある」

「?なんですか?」

「お前はあいつらと一緒にいて楽しいか?」

「はい!」

「!?」

 私が笑ったら急に目線をそらされました・・・普通にショックなんですが・・・。

「じゃ、じゃあな」

「あ、はい」

 そう言って走り去っていく不良(詐欺)さん。

 本当にあの人は宣戦布告をしたかっただけなんでしょうか・・・たぶん、七実さんのことが心配だったのでしょうね。

 七実さん・・・理系になれなかった文系。

 まわりが理系だらけで親も理系だったらなんとなく、疎外感を感じることがあるのかもしれません。

 きっと理系じゃないかと思われていたものを全て裏切って、今にいたるわけですから。

 それは寂しいことなのかもしれません。

「・・・・・・」

 でも、ま、今、あの人にはたくさんの友達がいる。

 支えてくれる人がいるんです、もう大丈夫、大丈夫じゃなくても私たちが大丈夫なようにしないといけませんね、仲間として。

「さて・・・と」

 そろそろお腹が限界なので帰ることにしましょう。

 今日のことはやんわりと話して七実さんを悩ませてやりますか。

 にひひ・・・と悪い笑みを浮かべながらあじさい荘に帰宅するのでした。







「・・・・・・・」

 なんだよ・・・なんだよなんだよなんだよ。

 七実が元気そうだっていうことはよかった。いや、別に俺はどうでもいいんだけどな。

 でもそれよりも。

「なんだよ・・・あいつ・・・」

 数学ばっかやってるっていうからどんなガリ勉かと思えば普通の女の子じゃねぇか。

 小さい女の子。

「くっ・・・」

 なんで俺はこんなに動揺してるんだよ、なんでだ?あいつの笑顔を見たからか。

「わっけ分かんねぇ・・・」

 なんで俺はこんなに胸が高鳴っているのだろうか。

 腹が立つ。

 わからないことは自分で解明しないと気が済まない。

「あーもう!」

 今日は残って勉強しようかと思ったが、やめた。

 帰ろう。

 集中できそうにない。

 しかし・・・まぁ・・・。

「・・・・・・・」

 笑顔・・・可愛かったなぁ・・・。

 いや、一般的に見てね、俺がどうこうじゃなくて!

 誰に言い訳してるのかも分からないが、俺は笑顔で人を好きになるような甘い人間じゃない。

 金持ちで、スタイルがよくて、美人な綺麗なお姉さんっていうのが俺のタイプ。

 あいつなんかどれも当てはまらねぇ。

 どれも・・・当てはまらねぇんだよ、ちくしょう。

この後に及んで新キャラ・・・?


って思われるかもしれませんがお許しください。一応、主人公はすねていたというあれがあるので。


あと、全く忘れられていてもおかしくはないんですけれど、これ、一応ラブコメというか恋愛要素もあるんですよね・・・。


ではまた次回。

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