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第72片 文系少年とあじさい荘住人の買い物

「あのさぁ・・・数夏、数学って楽しいか?」

「え?なんですかいきなり」

 あじさい荘1階共通リビングにて俺と数夏はソファに座りながら漫画を読んでいた。

 と思ったらあいつ円周率が延々と書いてある本読んでやがる。お前、年頃なんだから少女漫画ぐらい読めよ。

「いや、俺も理系に進もうかなぁって」

「はぁ!?」

 今まで一緒にいて見たこともないような顔をされた。

 気持ちは分かるが・・・。

「俺さ、数学苦手なんだけれど、嫌いじゃないんだよな。むしろ興味がある。だからどんどん新しいことを学んでいきたいと思ってる」

「私にはあなたを止める権利なんかないので何も言いませんが、3年生になったらまた急激に難しくなりますよ、数学。文系に進んで今までの数学の復習とかしてたほうがいいと思うんですが」

「・・・・・そうだよなぁ・・・・・」

 そう、俺には留年の危機だってある。

 今までの数学で苦戦している俺が今更何をという話だろう。これは数学をなめていると受け取られても仕方のないことだと思う。

「何か就きたい職業とか行きたい大学とかがあるんですか?」

「そういうわけじゃないんだよ」

 そういうわけじゃない。そういうわけじゃないんだけどさ。

「まぁ、でも私はどんな選択をしようと七実さんを応援しますよ。同じ理系に進んだらもしかしたら3年生でも同じクラスになるかもしれませんしね」

「数夏・・・・・」

「あと宿題とかその他もろもろ手伝ってもらえますし」

「数夏・・・・・・・・・・」

 感動が引く瞬間というのをちゃんと味わったのは初めてかもしれん。

「ちょっとー、みんなー」

 と声を出したのは香織さんだ。

 台所にいててっきり夕飯の準備をしているのかと思ったら違ったみたい。

「買い出しに行ってきて欲しいんだけど」

「みんなーって俺と数夏しかいませんが」

「んー、2人でもいいんだけど、みんなで行ってきたら?ほら、みんなで遊ぶ機会とかなかなかないし」

「いや、結構ゲームとかで毎日遊んでるんですけれど・・・」

「あなたたち・・・もう高2も終わりなのよ・・・・・」

 絶望的な顔をされた。

 最近顔で感情を表現するのが流行っているのだろうか・・・。数夏といい、香織さんといい。

 まだ2人しかいないんだけどね。

 するとドタドタと階段から人が降りてくる音がする。

 たぶん山梨や高松、緋色が自分の部屋から降りてきたのだろう。

 香織さんの声が部屋まで届いたのかな。

「お、山梨に高松、それに緋色・・・・・・・」

「「「・・・・・・・」」」

 みんなすっごいめんどくさそうな顔をしている。

 いや、だから言葉で表現しろよ!なんでさっきから顔で表現してるの!?

「あら、みんな降りてきたの」

「降りてきたのって・・・あなたがみんなーって呼んだんでしょうに」

「・・・・・・・で、何の用?」

「みんなで買い物行ってきて欲しいの・・・って1人足りない・・・・・」

「柏部なら引きこもってますよ」

「みんなで行って欲しかったんだけれど、まぁいいわ。夕飯に間に合わなくなっちゃうし、急いでカレーの材料を買ってきて欲しいの。人数分ね」

「え?材料ないのにカレーにしようとしたんですか?」

「いいじゃない別に。カレーおいしいわよ」

 そういう問題じゃねぇよ。

 急な思いつきって一から全部買わなきゃいけねぇじゃねぇか。

「めんどくさいのは分かるけれど、みんなで行ってきて」

『・・・・・・・はい』

 渋々頷きみんなで買い物へ行くことになった。







 なぜみんなが渋々だったのか。

 それは単純で体育祭の疲れがとれていないから。明日も休みなのだが、正直一分一秒でも寝ていたい。

 そんな生活だと柏部と大して変わらないが。

「えーと、かごかご」

 俺らは近くのスーパーマーケットに来ていた。

 大きくてなんでも揃っている場所なうえに安い。ただ食料品が主になってしまうけれど。

「おい、お前らさっさと終わらして帰って寝るぞ」

『ラジャ』

 なんでこんな時だけ、統一感が半端ないんだよ・・・。

「じゃあ、俺はルーを獲得しに行ってくるからお前らは新鮮な野菜を選んでこい。新鮮な野菜の見分け方はわかるな」

「七実くん、私らを誰だと思っているの」

「いや、普通に女子高生だと思っているが」

「私らは野菜を見分けることに全てを費やした『野菜専門家ベジタブル・ソムリエ』だよ」

「なんか腹立つからルビをふるな」

「だから私たちに任せておけば、なんでも万事おっけー」

「いや、やっぱ待てお前ら。俺も一緒に・・・」

「みんな行くよ!」

『ラジャ!』

「話をきけぇえええええええええええええ!!」

「七実さん!」

「はえぇよ!」

 確かに話を聞けとは言ったけれど、早すぎない!?

「七実さん、これはどうでしょうか」

「野菜売場までは少し距離があるのになんでそんなに早く帰ってこれるんだと思って嫌な予感はしていたがお前これお菓子じゃねぇか!」

「な、なんという説明口調・・・!七実さん、しかしカレーにチョコを入れることはよくあることではないでしょうか」

「なんかお前敬語だけど口調ちがくね?後、チョコレートってお前のそれポッ〇ーじゃねぇか!チョコの部分が少なすぎるわ!」

「ふっ・・・では最後までチョコたっぷりにしましょうか・・・」

「それに至ってはチョコが直接見えてないから。それも却下だ」

 まず俺らあじさい荘でのカレーにチョコは入れていない。

 やはり余計な工夫などせず伝統のある味の方が安全だろう。

 というか買うのは俺らでも作るのはたぶん香織さんじゃないか?手伝うことはあっても俺らに任せることはしないだろう。むちゃくちゃになるから。

「いいからお前はじゃがいもでも探してこい」

「じゃがいも・・・もっとオシャレなのがいいです!ラディッシュとか!」

「いいから買ってこいよ!」

 お前眠いんじゃなかったのかよ!なんでここで時間を使うようなことをするんだ!

「七実くん・・・」

「お、高松」

 数夏の意味のわからないコントに巻き込まれていると高松が帰ってきた。

 これは期待できるぞ。

「高松、お前は何を買う係だったんだ?」

「え、えと・・・人参」

「人参かぁ・・・確かに必ず入ってるよな。やっぱカレーには人参が合う」

「で、でも・・・そのちょっと工夫とかしてみたくて・・・」

「え・・・?」

「これ・・・」

「高麗人参・・・・・・・?」

 いや、高松。高麗人参入れてもいいが、普通の人参の係なのになんで高麗をプラスしたんだ・・・。

「あ・・・ごめんなさい。その・・・工夫したら七実くん喜ぶかなって」

「うん・・・俺のためっていうのは嬉しいが・・・その・・・伝統を大事にした方がいい気がするぞ」

「はい。・・・ってことは・・・これもダメだね」

「なんでラディッシュ!?」

 流行ってんの!?女子高生の流行りが全く分からないんだけれど!

「なるべくならオーソドックスなので頼む・・・」

「わかった」

 まさか高松までもがああだとは・・・。これは不安しかないぞ。

「あぁ、でも」

 でも俺もルー選ばなきゃな。いつも買ってるやつってどれだったっけ。

 俺はどんなルーだったかを思い出しながらカレールーが売っている場所へと移動する。

 よく来ているためか、迷わずに行けて時間のロスもない。

「えーと・・・」

 これか?いや、違うな。じゃあこれ?

「・・・・・・・・・未空」

「え?」

 緋色か。

 えーと・・・。

「・・・・・・・・・・これ、玉ネギ」

「いや、それネギ」

 なんでこんな小学生みたいなボケの仕方をするんだ!

 ボケが思いつかないなら無理にボケなくてもいい。

「・・・・・・ただのネギじゃない。端の方を見て」

「・・・・・・・・」

 高麗人参が刺さってた。

「なにこれ、前ボケた人に敬意をもってボケろという風習があるの・・・?」 

 というかこれどうやって刺さってんだよ。

 お前何やってんだよ・・・。

「これ確実に買わなきゃいけないじゃねぇか・・・」

「・・・・・・ダメ?」

「いや、いいけどさ・・・これカレーだぞ?カレーは確かに隠し味やら工夫ができるような料理だがあまり期待しすぎるとカレーも困るんじゃないか?」

「・・・・・・未空。擬人法?」

「う、うるせぇ・・・」

「なっなみくーん!」

 うっ・・・この声は山梨。

 こいつがまともなわけがない。きっととんでもない具材が出てくるんだろうな。

 カレーに合わねぇだろ!みたいな突っ込みを期待しているに違いない。

 だが。

 俺はそこまで甘くない。

 常に最悪の状況を考えていれば突っ込みなんかしない。

「見て見て!このシチューのルーおいしそうじゃない?」

「カレーだって言ってんだろうがぁあああああああああああああああ!!!」

 しかもルーは俺の担当だ!









「・・・・・あのさ、買いに行ってもらってなんだけど、これ何?」

 あじさい荘に帰ってきてすぐ香織さんに買ったものを見せると驚かれた。

 うん、まぁ、そうだよね。

 カレーの具材って話なのに、高麗人参にネギ、あとカレーじゃなくてシチュー。

「し、シチューって知ってます?」

「・・・・・・えぇ、まぁ」

「あれってカレーに負けないぐらい美味しいですよね」

「・・・・・なんとなくこうなるんじゃないかって思ってはいたけれど、シチューになるとは予想外だわ・・・・・」

「俺もびっくりです・・・」

「とりあえず作るから食卓に座ってなさい」

『はーい』

 みんなで食卓に座る。

 みんなで夕飯っていつぶりだ?

 何人かとは一緒でも全員って・・・・・・・・・柏部・・・・・お前出て来いよ・・・。

「あら、みんな揃っていたの?」

「え?」

「あぁ!」

「か・・・柏部・・・・・・・!」

「なによ、その反応。引きこもってはいたけれど、死んだわけではないわ」

「みーみーりーん!」

「ちょ・・・いきなり抱きついてこないで!あとその名前はやめなさい!」

「かーしーわーべー!」

「あなたは何どさくさに紛れて抱きつこうとしているの!」

 蹴られてその場に倒れる。

 な、なんで山梨はよくて俺はダメなんだ・・・同じ仲間だろう。

「あのー、七実さん。それはおそらく異性だからではないかと。後、なんかいやらしい顔してたからではないかと」

「なに・・・俺が男だったばっかりにこんな仕打ちを・・・!」

「七実くん・・・たまにおかしくなるよね・・・」

 高松。そんな悲しい顔をしないでくれ。

 ん?

 台所からいい匂いがしてくる。

 腹が減ってきたなぁ。

「うわっ!緋色さん!」

「・・・・・私、数夏の隣」

「いいかげん離しなさい!」

「えぇーなんでー!」

「な、七実くん、大丈夫?」

 とりあえず俺が言えることはただ1つ。

 全員で飯を食うんだ、まずいわけがない。

 たとえどんなものであろうとな。

 

えぇと、予定を変更してこの話を先に書かせていただきました。


本当なら忘れられているであろうキャラがでる予定だったのですが。


次の話もまだどうなるか分かりません。


自分で分からないってもう・・・って感じですが。


でも近いうちに書きたいと思います。


ではまた次回。

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