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第67片 文系少年と理系少女の体育祭 5日目

 いきなりのことで本当にすまないと俺は思う。

 だがしかし許して欲しい。ここまで突拍子もない始まり方になってしまうことを。

 俺でさえついていけない。

 だから当然当事者ではない者たちがついてこられるわけがない。

 だからそこは安堵してほしい。

 わからないのは自分だけではなく、他のものたちも同じなのだと。

 そしてまた俺も同じだということを。

「な・・・・・んで・・・なんでお前がここにさも当然のようにいるんだよ」

「・・・・・あら?」

「どうして・・・お前は『妄想』のはずだろ・・・なんでここにいるんだ・・・黒曜石!!!!!」

 ここは病院の一室。

 そしてそこにいるのは黒い妄想少女。

 そしてこの一室はその黒い少女のために用意されているものだった。









「え・・・?5日目って場所探しなのか?」

「うん、どうもそうらしいよー」

 と山梨が俺に教えてくれた。

 今まで謎解きというと校庭にて一回謎解きをして場所を当て、その場所でもう1度謎を解くというものだった。

 しかし5日目は場所を当てそこへ行った時点で合格なのだそうだ。

 ・・・・・何かあやしいな。会長がそう簡単にルールを変えるとは思えないんだけど。

「でも、会長だって人間なんだし」

「そうだよ、七実くん。深く考えない方がいいよ、グッ!」

「そのグーのポーズを言葉で表す必要はあったのか」

「あるよ!そっちの方が私の気分が上がるからね!」

「結局お前が中心かよ」

「そうだよ、ガグラビッ!」

「なにそれ!?」

 意味の分からんポーズを見せられた。

 ガグラビってなんだよ。

 ただお前のおっぱいが揺れただけにしか見えない。

 というかそこしか見ていなかった俺を頑張って正当化しようとしているわけだが。

「頑張ってね、七実くん」

「やるからには全力を出すが・・・」

「今回の謎には私は関与していないからそこは安心してね」

「いや、さすがにここでお前が関与していたら本当に策士だよ」

「え!?ってことは私女詐欺師になれるっていうことだよね!」

「そこまでは言ってない。しかもなんで女って付けたんだよ」

「なんかそっちの方がいやらしそうだから!」

「正直すぎる!」

 と、なんでもない会話を続ける。

「そういえばお前ってあれだよな。そんなキャラなのに誰よりも女の子らしかったりするよな」

「それってなんか馬鹿にしてない」

「してないしてない」

「ある一点を凝視している君を信用はできないんだけれど・・・」

「別にそこだけじゃなくてさ。そういうことじゃなくて・・・・・・」

「絶対今、思考がおっぱい8割になっているところ悪いんだけれど、もうそろそろ時間だよ」

「お、そうか。じゃあ、勝ってくる」

「うん、勝ってらっしゃい」

 笑顔で送り出してくれる山梨を見て俺は頑張ろうと思った。







 とか言った後から出遅れる。

「つか・・・これ考える謎解きというよりただ時間がかかるだけだろう・・・」

 内容はただただひたすら感想を書くというものだった。

 病気の母と子供たちの物語。

 それを読んで感想をかけというもの。しかも枠まんべんなく。

 たぶん今回の場所は病院なんじゃないかという予想をたて、俺は病院に辿り着いていた。

「はー・・・ここで違ったら本当に分からねぇぞ・・・」

 ここでありますようにと祈りながらただ歩く。

 ここは桜浪病院。

 正式名称はもっと長かったはずだがそれを覚えているはずもない。

 ここにお世話になったことはあまりないのだった。

「えーっと・・・お」

 一階ロビーのでかい机の上に何か紙キレが置いてあった。

「これかな」

 そう思い、その紙キレを開くと正解の文字が。

 ただ・・・。

「なんでこんな殺人予告みたいな手紙なんだよ・・・」

 正解の2文字が新聞から切り取ったものをはった形になっていた。

 まるで字面を気にしているように。

 字を隠したがっているように。

「でも、これを持って帰れば、合格らしいし」

 俺は細かいことを考えないようにして学校に戻ろうと踵を返した。

 するとふと看護師さんの会話が聞こえた。

「山梨さんのところにこの食事持って行ってあげて」

「あ、はい、分かりました」

「・・・・・?山梨?」

 いや、たぶん同姓なだけだろう。

 同じ苗字のやつなんてこの世にごまんといるからな。

 ・・・・・・・。

 だが俺はエレベーターに乗っていた。

 なぜこうなったのかはもう覚えていないけれど・・・。

 というか思い出したくない。

 自分が好奇心に負けるなんて。

「でも、あいつの親戚か誰かが入院しているなんて聞いたことないしな」

 そう思いつつも先ほど受付できいた病室の番号の部屋を目指して歩を進める。

 好奇心なんだよな。

 入院している人に対して好奇心というのは本当に失礼で無礼な話だがそう思ってしまったのだからしょうがない。

 偽ったって汚いだけだ。

「えーっと・・・確かここらへんかな」

 そこにあった病室。

 かけられたプレート。

 『山梨様寂』の文字。

 『やまなしようせき』と読むらしい。

「ていうか・・・・・」

 これドア開けたらちゃんとお見舞いしないとダメだろうな。

 でも人違いでした、とか病室間違えましたとかで切り抜けられるかな・・・。

 ていうかこれこそ好奇心で開けてはいけないような気がするよ。

「帰ろう」

 俺の目標はゴールすることだった。

「あら?」

 と振り返ったところで看護婦さんと目があった。

「あなたちゃんとお見舞いしたの?」

「え?いや、なんというか人違いというか・・・・・・」

 と説明しているうちに看護婦さんがドアを開けてしまった。

「いや、ちょっと、看護婦さん!」

 俺が必死に抵抗するもまったく歯が立たない。

 どんだけ力強いんだよ・・・。

「って・・・・・・・・え・・・・・・・?」

 そして病室の中、6人ぐらいいる大部屋で一際異彩を放つ黒い少女。

 そこにいたのは見知った顔であった。

「なんで・・・・・なんで・・・・・ここにいるんだ黒曜石!!!!!」

 黒曜石。

 妄想であり、俺以外には見えない存在。そんな彼女がここで。

 入院していた。

 この彼女のための病室で。








「文系少年の行き先を変えたのは君かい?」

「やぁ、生徒会長。違うよ、僕じゃ『無』いよ。って言っても信じてもらえ『無』いんだろうね」

「何をする気だ」

「別に。大丈夫。彼の正解かどうかの用紙は僕が作ったから」

「どうせ殺人予告みたいな感じで、だろ」

「気にし『無』いでよ。僕はただ盛り上げようとしているんだよ、この物語を」

遅くなりましたが、5日目です。


とりあえずもう少しで体育祭は終わります。


ではまた次回。

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