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第64片 文系少年と理系少女の体育祭 3日目③

「おい、山梨」

「ん?あれ七実くんじゃないか」

 俺は後ろを通った知った顔すなわち山梨戸張に話しかけた。

「お前、参加しないんじゃなかったのか?」

「ん?んーまぁね」

「?」

 なんだこの煮え切らない返事は。

 ってことはこいつもこの暗号を解いている最中だってことか。

「山梨、お前も暗号を解いているのか?」

「うん、まぁ、そんなところー」

「協力しろとは言わないが一緒にこの暗号解かないか?矛盾した文章なんだけれどさ」

「ごめんね、七実くん」

「・・・・・は?」

 その瞬間世界は変わった。

 ぐにゃぁっとねじ曲がり酔いに似た気持ち悪さを感じながら世界が変わっていく。

 そして出来上がったのは。

「・・・・・・・・!」

 上下逆さまの世界。

 下に天井にあった蛍光灯があり、すごく眩しく感じる。

 逆さまなのだが本棚が倒れることもなく間違っているのは俺達だけかのようなこの世界。

 ほかのところから「うわぁああ」という声が聞こえる。この世界にいるのは俺と山梨だけではないみたいだ。

「くっ・・・」

 たぶんこれは妄想だろう。

 他の人たちにも及んでいるということはだいぶでかい範囲のもの。

 そして本人以外の妄想に慣れていない俺たちは妄想酔いをしてまともに歩けない。

 というかこいつはものすごく細かい背景描写を語ることによってさもその世界にいるかのような印象を与えるということなのだが。

 小説を読んでいるとその場面が勝手に頭に浮かぶ。それの強化版。

 なのにこいつはどうやって広範囲に渡って妄想を・・・?

 暴走もしていないのだが。

「この競技ってさ、邪魔ありなんだよね」

 山梨がにこっと笑う。

 そうかそうだった。

 こいつは負けず嫌いだったのだ。

 協力するなんてもっての他、ゲームに対してはすごいこだわりを見せるのだった。

「はっはははは!私1人でここをクリアするんだから!」

「ちくしょう・・・」

 やるじゃないか。

 これはいよいよ燃えてきたぜ。

「あれ・・・でも・・・うぷ・・・」

 気持ち悪い。

 前に進むどころか立つことさえできない。

「・・・・・・・」

 意識が朦朧とする。

 景色が歪む。

 そして。

 俺はとうとう気を失った。











「は!」

 俺は跳ね起きる。

「・・・・・・・」

 あたりを見渡すと見たことのない場所。いや、これはどこかの道だ。普通に人も歩いているし、そしてこの異常にでかい歩道。

 あの図書館の近くの大通りか・・・。

「そういえば、山梨の妄想で・・・気を失ってそれで・・・」

 そして気付けばここにいる。

 場所はわかったがなぜこんなところに。

 こんな時に時計を持っていないから今が何時なのかも分からない。

 夕焼けすら出てないところを見るとあまり時間は経ってないように思える。

「もう山梨はゴールしたのか・・・?」

 だとしたらしてやられた。

 ほかの奴らはどうなったのか分からないが・・・まだ気を失っているものもいるのだろうか。

「あーくそ・・・頭が痛い・・・」

 まだ少し酔っているようだ。

 しかし俺にはまだ謎解きが残っている。

 もう1度図書館に行かないといけない。

 とりあえず時間を見ないと俺はどうしたらいいか分からない。

 制限時間があるせいであまり遅くなりすぎると謎解きをしている時間はない。

 というか体育祭の時間が午後5時までなのでそれまでに帰らないと失格なんだろうな。

「あーだるい」

 俺は重い腰を上げて再び立とうとすると。

「おーい、七実くーん」

「あれ・・・」

 その声は。

 振り向いた先には山梨がいた。

 まぁ、信号に引っかかったらしく道路越しになってしまうが。

 車もまったくないので声は届く。

「ごめんねー」

 その手にはジュースがあった。

 大量の。

 たぶん俺だけじゃなく他の気絶したやつにもあげるつもりなんだろうな。

 というかこいつゴールしていないんじゃ・・・。

「はぁ・・・」

 ため息が出る。

 確かに気絶したのは山梨の妄想のせいだが、それも含めて競技だろうに。

 こいつは本当にいいやつだと分かる。

 いいやつすぎるぐらいだよな、ほんと。

「別にいいよ。お前もお疲れさん」

「うんー!」

 俺が許したのが嬉しかったのかなんなのか分からないがすごく笑っている。

 でもこれからジュース配りの旅が始まるわけだな。

 俺が1年生の冬、スキー授業でスキー場に行く前日に風邪を引いたときを思い出す。

 俺はスキーにいけないと言ったところお前も休む気でいたもんな。

 「七実くんが行かないなら私も行かない」と言ってくれた。

 まぁ、無理やり送り出したが。

 高松も緋色もいかないとかいい出したので行かせるしかないだろう。

 柏部も「私も行かないわ」と言っていたっけ。

 てかお前、最初から行く気ねぇだろうが。

「・・・・・」

 こいつは本当に優しいやつだった。 

「七実くん、具合は大丈夫ー!?」

「うん、まぁ、平気だ」

 ちょっと気持ち悪かったが心配させるわけにはいくまい。

 あいつは自分を責めるだろうから。

 すると赤信号が青信号に変わる。

「いまいくよー」

「おう、急ぐなよ。転ぶから」

「優しいなー、七実くんは」

「いや、ジュースがな」

「か、軽くショックだよ・・・」

 そんなやりとりをする中。

 俺の視界にギリギリおさまるかおさまらないかのところで何かが見えた。

 あれは・・・。

「人影・・・?」

 真っ黒な人影。

 そんなものが見えた気がしたんだ。

「!?」

 その瞬間。

「え?」

 山梨が半分横断歩道を渡ったところで。

 横から。

「や、やまな・・・・・・・」

 横から信じられないスピードでトラックが迫りきていた。

「や、山梨ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」

 俺の世界は今日2度目の変化を見せた。

 1度目は逆さまに。

 そして2度目は。

 真っ赤な。

 真っ赤な。

 綺麗な赤色の世界へと。

 赤で塗りつぶされた世界へと。

 変化した。

不定期なのは相変わらずですが、次ははやめにあげれるよう頑張ります。


ではまた次回。

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