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第59片 文系少年と理系少女の体育祭 1日目

 体育祭当日。

 すなわち体育祭1日目である。

 俺はだるい体を無理やり動かすためにグラウンドに出る。俺は一応サッカーに出場予定なんだけれど今は何をやっているのだろうか。

「お、七実」

「あぁ、竹内くん」

 同じクラスの竹内くんが話しかけてくる。サッカーで同じチームなのだがもしかしてもう試合が始まるということなんだろうか?

 桜浪高校のグラウンドは広く、サッカーもいくつかの試合をやっており他にもキックベースなどもやっている。今頃体育館ではバスケやドッヂボールもやっているところだろう。

「もう少しで俺らのチームの試合だ。とりあえずチームで集まって作戦会議をしよう」

「わかった」

 俺は竹内くんの後につづく。するともうグラウンドの一部に俺らのチームが集まっていた。

「おー、七実くーん」

「よ、山梨」

 そこに山梨もいる。サッカーは男女共同でチームを作れるためこのようなチームになったわけだ。で、ここからポジションを決めなければならない。

「ところで相手は?」

「相手は3組だってよ。気をつけるべきはサッカー部の連中じゃないからな」

「む?」

 サッカー部じゃない?普通はサッカー部を真っ先にマークしたほうがよくないか?ちなみに俺らは2組でとなりのクラスだったりする。

「3組にはあいつがいるからな」

「あいつ?」

 俺と山梨以外は分かっているのかみんなうんうんと頷いている。というかこれすごくチームワーク抜群なんじゃなかろうか。頷き方がみんな同じだ。

「下野だよ。下野双葉しものふたば。バスケ部ですげー足が速いやついるんだ」

「・・・・・・」

 最近下野さんが話にすごく絡んでくるんだが、偶然だろうか。黒曜石もなんか言ってたもんな。あいつの場合内容がパンツだったけど。

「じゃあ下野さんをマークしろってこと?」

「そう。でもそこだけに人員を割くわけにはいかないからな。下野はお前に任せた、七実」

「俺!?」

 運動に自信がないなかそんな要注意人物をマークしろってすごく無理な話じゃないか。

「足には自信ないんだけど・・・」

「いや、完全にマークしなくていい。少しでも邪魔できれば儲けものだ」

「はいはーい!じゃあ七実くんはディフェンダーってことで」

「おい、山梨。なぜ俺がディフェンダーなんだよ」

「七実くんに向いてるかなぁって」

「本当は?」

「私がオフェンスをやりたいから少しでもオフェンスやりたいライバルを減らしたい!」

 まさかの仲間内ですでに心理戦が始まっていた。

 俺は別にどこでもいいけど・・・でも下野さんが期待されてるというのなら下野さんにボールを持たせて突っ切らせるのが普通。そこで俺の出番というわけだな。

 そこから俺らは30分ほど簡単なミーティングを行い、試合に備えることにした。







「今年もすごく盛り上がってるね、体育祭」

「で、君は何をしにきたの?」

「生徒会長、そん『』に冷たくし『』いでよ」

「君は何を考えてるかわからないからね、警戒もするさ」

「何もしないよ、君にはね」

「・・・・・・・・・・・ま、いいけど。体育祭をぶち壊すようなことはやめてくれよ」

「うん、そん『無』ことしないよ。いくら僕でもね」









『えー、今から2年3組と2年2組のサッカー試合を始めたいと思います』

 というアナウンスがはいる。

 すでに俺らのチームはベンチというか休憩所的なところに集まっており、クラスの応援も結構な数になってきた。

「すげー応援されてるな・・・」

「なに怖気付いてるのさ、七実くん」

「いや、こういうの慣れてないから」

「まぁ、でも3年生と試合しなくてよかったことを喜ばないと」

「まぁな」

 学年は関係ないので3年生とあたる確率も十分あったわけだ。しかし相手には・・・。

「あ、下野さんだ」

 下野さんがいる。小柄な体なのにどこからそんなエネルギーを出しているのだろう。

「じゃあ、両チームともコートに入ってください」

 審判をしている生徒にそう言われる。

 すごく緊張するな・・・これ。

 俺達はコートの真ん中に整列する。

『よろしくおねがします!』

 全員が声を揃えて叫ぶ。

 というかこれ、いつサッカー物語になったんだろう・・・。

「よし、ポジションにつくぞ!」

 俺達はそれぞれポジションにつく。

 キックオフは相手からだ。

 そしてそのボールを受ける相手が・・・。

「やはり下野さんか」

 俺の予想通りやはり下野さんの足のはやさを使って突っ切る気だな。

 しかしサッカーをなめてはいけない。足の速さだけでどうにかなるスポーツではないからだ。

 ピーっ!

 と笛の音が轟く。

 キックオフだ。

 下野さんにツインテールの女の子・・・名前はわからんから津井さんなんてどうだろうか。津井さんが下野さんにボールを軽く蹴る。

「よし!」

 ここでどう相手が出るかによってこちらの動きも決まる。

 下野さんはボールをもらった瞬間に走り出す。

 やはり下野さんに突っ込ませる作戦か。

「って、え?」

 そこで俺は異変に気付く。

 ゴール前にいる俺はゴールキーパーの方を見るが彼も驚いているようだ。

「は、はやい!」

 下野さんの足の速さはボールを持っても衰えなかった。

 真っ直ぐ突っ切ってくる。

「お、おい!誰かとめろ!」

 止めろって、それ、俺らディフェンダーズしか止めれなくね・・・?サッカーの人数はオフェンス3人、ミッドフィルダーが4人、ディフェンス3人で構成されている。

 ミッドはもうすでに抜かされているため、俺らしか止めれない。

「く、くそ!」

 俺はがむしゃらに向かう。

 もうそれしか手はないからだ。

 というかこわい!止まらないだろ、これ!

 しかし下野さんはそれを見越していたように急に止まる。

「え・・・?」

「ごめんね」

 彼女は笑顔でこちらを見て、思いっきり横にボールを蹴る。

「え?でもそこには・・・」

 そう、そこには誰もいないはずだ。味方でさえ下野さんの足の速さについていけなかったのだから。

 その考えがすでに間違いだと気付く。

 そこには下野さんの味方、津井(仮)さんがいた。

「!?」

 津井さんはそのまま、ゴールにシュート。

 あっさりと決まる。

「なっ・・・」

 そう、忘れていた。

 彼女の足の速さに匹敵する速さの人がいると考えることを忘れていた。

 それがすでに相手の作戦だったのだ。

「下野さんの足の速さを囮とした作戦・・・!」

 これで点数は相手が1点とって0-1である。

 相手チームの応援である歓声が響く。

「津井さんも足が速かったのか・・・」

「・・・・・?」

 津井さんが首をかしげる。

 あ、津井さんって俺がつけた名前だった。

 そりゃあ、首かしげますね。

「・・・」

 でもこれで注意すべき相手が見えてきた。

 頑張ろう!という気持ちと裏腹になぜか笑えない俺たちであった。

次もサッカーが続きます。


よろしくお願いします。


では次回。

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