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第5片 文系少年と妄想少女の幻想

「七実さんっ!」

「ん?」


桜波高等学校。ここは2年生の教室。2年2組だ。現在は昼休み文系と理系が入り混じったこのクラスで理系少女こと岸島数夏きしじますうかが俺、七実未空ななみみそらに話しかけてきた。


「どうした?」

「私、気になることがありまして・・・・・」

「気になること?」

「その寮に入ってから3日たっているんですけど・・・」

「あぁ」

「他の寮生さんを見たことがないんですが」

「あー、忘れてた」


あじさい荘。俺らが今現在住んでいる寮だ。しかしそこに住んでいる人はひと癖ふた癖ぐらいある人ばっかりなので会わないのもしょうがないのかもしれない。最近は朝食や夕食までバラバラ。香織さんだって寂しそうだったしな・・・。


「分かった。会わせてやる。ていうかこのクラスにいるって話したよな」

「あぁ、そういえば。で、どこですか?どこですか?」


俺は教室の前の方に歩いていく。一番前の席。廊下側。そこにいたのは長い髪を後ろでゴムを使い、ひとつにしばっている少女。小柄というわけではなく、中くらい。しかしその見た目とは違い性格は・・・


「おや?おやおや。久々に七実くんの臭いがするぞ・・・・」

「俺だ。そのアイマスクをとれ」


挿絵(By みてみん)


俺はアイマスクをとった。顔はいい。だがいつでもどこでも寝ているようなやつなので誰も相手にしない。いや、できないのだ。このように性格はめちゃくちゃだ。


「岸島。こいつは山梨戸張やまなしとばり。俺の隣の部屋のやつだ」

「ん?んん?そこのかわいい女の子は誰だい?紹介しちゃってよー」

「ほら」

「あ・・・・!えと岸島数夏です!よろしくお願いします!」

「数夏ちゃんだね、だね!私は山梨戸張!戸張でいいよん!」

「というわけでこいつが寮生の一人」

「え?数夏ちゃんも寮性なの!?いやー、いやいや、これは失礼。私よく寝ちゃうんだよねー。だから朝食も夕食も遅くなっちゃうのさ」

「お前少しは起きてろよ。香織さん、寂しそうだったぞ」

「いやはや、面目ない」


さて、次の寮生でも紹介しようとしたとき・・・。


「ところで数夏ちゃんと七実くんって付き合ってるのかい?」

「「ぶふっ」」

「な、違いますよ!私たちはその衣食住をともにしてるだけで・・・」

「なんとっ!そこまでいっちゃってるのかい」

「おいおい、寮だから当然だろ」

「ただ食べられたり、食べたり」

「食べるっ!?」

「お前もうしゃべんなよ!この前の英語をひっぱるな!」


もうやだ、こいつら!混乱したらまともにしゃべれねぇのかよ!


「ふふふ、そういえば数夏ちゃんは理系だったよね」

「そうですけど・・・・」

「確か、理系学年1位。数学は特に得意だとか」

「はい」

「私はね・・・文系の妄想少女って呼ばれてるんだ」

「妄想・・・・・少女?」


こいつは文系。主に小説分野を得意とする。物語の登場人物だけでなく物やことの心情までわかるというおかしい少女だ。それは想像力が豊かじゃないとできないというわけだ。


「それなら想像少女・・・じゃ?」

「こいつは変態なんだ」

「違う違う!私は変態じゃないよ」

「なるほど・・・変態だから妄想ですか・・・・」

「こらこらこら!七実くんのせいで私が変態になってるよ!」

「当然だな」

「まぁ、私は変態だろうが私なのでね、めげないよん」

「開きなおるのはやいよな、お前」

「ところで変態さん」

「おい、山梨。呼んでるぞ」

「あれ!?私の名前いつから変態になったの!?」

「違います。七実さんのことですよ」

「俺かよ!」


いつの間にだった。俺は変態なことを1回でもいっただろうか。・・・・・・・・・覚えてないな。


「七実さんも文系ですよね」

「あぁ、そうだけど」

「じゃあ、七実さんは何少年なんですか?」

「は?」

「そういえばっ!私は妄想少女という最悪な名前がつけられているのに七実くんには最悪な名前がついていないよっ!」

「最悪なという単語は必要かな!?」

「でも数夏ちゃんは理系少女だし、七実くんも何か決めないと」

「俺はいらねぇよ」


ていうかこっちの地の文で文系少年といっているので、これ以上増えるとややこしくなるんだよ。


「非行少年はどうですか!?」

「確実にグレてるよな」

「じゃあ、飛行少年でいいよね」

「頭悪そっ!夢見てんじゃねぇか」

「小学1年」

「少年だけど、名前が少年じゃねぇな」

「んー・・・・はっ!ニート少年!」

「いいアイディアみたいにいうな!」

「じゃあ何がいいんですか?」


そうきかれると困るな・・・。


「無いんだったら変態少年で決定ー」

「お前の称号だろう!それは!」

「失礼な!妄想であって変態じゃないんだよ!」

「文〇少女」

「おい!それはだめだろう!性別も変わってるし!」

「わかったよん、こんなのどう?・・・・・・・・・七実くんスーパーエピソード!」








俺、七実の体は限界をむかえていた。もうこれ以上はもちそうになかったのだ。


「あの窓の木の葉が全部散ったとき、俺は死ぬんだろうな・・・・」


頑張る気力、そういうものが根こそぎ奪われていた。俺の病気は絶望的。かかった時点で死が決まっているという恐ろしい病気。


「ふ・・・・・」


でも人間とは生まれたときからいつ発病するかわからない死の病気を持っている。寿命という病気だ。そういうことなら俺の寿命はここまでなのかなと思える。死の恐怖などない。死というものがわからないからかもしれないが諦めているのがほとんどだろう。


「どのぐらい続くのだろうか」


生き地獄だった。いつ死ぬかわからない体で、何もできずただただ生きているのが辛かった。ここにいるだけでお金をとられている。それだけで俺は死のうと思うぐらいまで弱っていた。


「七実くん・・・・だよね」


数日たったある日、綺麗で可愛い女の子が一人病室に入ってきた。名前は山梨とば・・・・・・・。山梨トビウオ。そうそんな感じだったはずだ。


「山梨。どうしたんだ?お前」


山梨は入院している。同じ病室のやつなのだが今日初めて会った。ほとんどが手術室にいたりなど忙しい病気らしい。手紙でのやりとりは何度かしていて親友とまで呼べる存在だった。そんな彼女がここにいる。絶対安静の彼女が。嫌な予感がした。


「いや、ちょっとここにきたくて・・・・」

「でも点滴は?お前絶対安静だったはずだろ」

「今日だけは許されたんだ。そして一番会いたい人に会いに来たの」

「そ・・・そうか」


落ちつかなかった。裏に何かがありそうな気がしたのだ。すると・・・・


「七実くんはさ・・・死ぬのって怖い?」

「いや、別に・・・平気だけど・・・・」


人間は生まれながらに死の病をもっている。この前自分で言って結構かっこよかったセリフを言いたいが寒いのでグッと我慢した。


「へぇ・・・七実くんは強いね」

「そんなことない。もう諦めているだけさ。お前は?」


ふと、きいた。深い意味はなかった。でも彼女は俺の胸に飛び込んできた。


「お、おい・・・・・」

「私はね・・・・・・怖いの・・・。死ぬのが怖いの・・・・」

「山梨・・・・」


泣いていた。本気で泣いていたのだ。


「生きてたい!こうして七実くんとも会えたんだし、いっぱい遊びたかった・・・・」

「だってまだ死ぬって決まったわけじゃ・・・・」

「決まってるの」

「へ?」

「今日、明日中だってさ。悪あがきもできたんだけど、可能性がなくってさ。お金の無駄だから無理いって断ってもらったの」


嫌な予感は的中だった。絶対安静の彼女が自由なはずがない。


「でも・・・・・七実くんと会ったらもっと長生きしたくなっちゃった・・・。断った事後悔してるんだ。意味ないのに・・・。お金の無駄なのにね」

「そんなことない」

「え?」

「お前は頑張ってる。現在進行形でだ。その頑張ってるやつに無駄なことなんてない」


俺は強く言った。自分にいいきかせるように。強く、強く。


「七実くん・・・・・・・・・」


その後、山梨は大泣きした。俺も泣きそうだった。







山梨は死んだ。結局悪あがきはせずに息をひきとったらしい。


「だいじょうぶですかー?」


俺は今しゃべれなくなっていた。それどころか腕すらも動かせない。死は目の前だった。そんな俺をお世話

してくれているのはちっこい看護婦だった。確か名前は・・・岸島す・・・・・。岸島スリランカ。そんな感じだったはず。


「先生!七実さんがピンチです!」


俺はもう死ぬことがわかる。窓の外の葉も残り一枚。死んじゃうんだなぁ。せっかく・・・・・・せっかく生きたいという思いがでてきたのに。生きたいって思えたのに・・・。そのときにはもうすでに声もだせないなんて・・・・。誰かに伝えることもできないなんて・・・・!


「七実さん!大丈夫ですか!?」


そうだメッセージを残そう。俺は最後のちからを振り絞り、手を伸ばす。字は書けない。でも・・・でも伝えたい!俺が生きていたこと!そし山梨が生きていたことを!


そして窓の外の葉は散った。


俺は最後にちっこい看護婦のお尻をつかんで死んだ。


そしてこの少年はのちにこう呼ばれた。


『変態少年』と・・・・・










「結局かよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ツッコミだった。というか結局変態少年だった。あんだけひっぱいといて!


「しかも綺麗で可愛い山梨さんって誰だよ!」

「ここにいるでしょ」

「間違いなくお前じゃねぇよ!」


そして岸島のほうをむいて・・・・


「おい、お前からもなにか言ってくれよ!」

「・・・・・・・・・」


あれ?おかしいないつから無口キャラになったのでしょうか・・・・。


「おーい、岸島ー?」

「・・・・・・・」


大変顔を赤くしてらっしゃる。なぜだろう。考えろ考えろ・・・・・。あれ?もしかして?すると岸島は顔を赤くしたままちょっと恥ずかしそうに上目づかいで俺に・・・・。




「・・・・・・・・・えっち・・・・・・・」




えええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!うそやん!今の話ちゃんときいてた!?というか上目づかいに弱いんだよね、俺。やべぇめっちゃ可愛いと思ってしまった・・・。


「おい!岸島!あれは妄想少女の妄想能力であって俺が実際お尻をさわったわけじゃないんだぞ!」

「セクハラなう」

「ツィ〇ター!?」


しかもそれだとお前がセクハラしたことにならないか?とか言いたいことがあったけど岸島は走りさってしまった・・・・。


「さ、さーて、妄想少女はこれにて・・・・・おやすみ・・・・」

「おい!お前!どうしてくれんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


え?これ続かないよね!?大丈夫だよね!次の話では都合よくリセットされてるよね!?岸島と気まずくなってないよね!こうなったら語り部の力で無理にでもリセットだぁああああああああ!!!!


・・・・・・・・・・・でも、ちょっと可愛かったぜ、ちくしょうめ。

というわけで今日も更新です。


それにしてもこれ、ネタなくならないようにしなくちゃいけませんよね・・・。

といってもほとんど思いつきなんですが・・・。


次の話はどうなるのか!?リセットされてるのか?(笑)


でわ

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