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第57片 文系少年と理系少女の行事

「七実さん、七実さん、そういえばもう少しで体育祭ですね」

「ん?」

 と数夏に言われ、ふと気付いた。

 もうそんな時期か・・・。

 9月の中旬。学校が終わり夕飯を食べた後にあじさい荘の1階、みんなのリビングでくつろいでいた。

「というかうちの学校の体育祭ってなんか長いですよね」

「あぁ、確かにそうだな。1週間って学校は公立ではなかなかないはずだ」

「去年その理由が分かりましたが・・・」

「・・・・・・・・・うん、『あれ』はやりすぎなような気がするよ」

 と数夏と一緒にげんなりする。

 体育祭。

 生徒達の間では何も飾ることなくそう呼ばれる。

 実際の名称は『桜体育祭』。

 これもまたシンプル単純な感じの名称ではある。

「今年もこの行事ラッシュがくるのか・・・・・・・」

 桜浪高校では秋に行事ラッシュと呼ばれるそのまんまな行事のラッシュがある。

 9月の下旬に体育祭。

 10月の中旬に学校祭。

 10月の下旬から11月にかけて2年生はさらに修学旅行がある。

 そしてそんな非常に忙しい時期にこれ全てを完璧にこなせる生徒など極一部しかいない。

 なのでみんなどっかかんかの行事は手を抜くのである。

「それがみんな『体育祭』なんだよね」

「そうなんですよね。学校祭に修学旅行ときたら自然と体育祭が重要視されませんよね」

 そして体育祭に1週間使う理由。

 それは5日間にわたる生徒会主催の毎年変わるポイント稼ぎ種目があるのだ。

 体育祭では勝てば勝つほどポイントをもらえ、ポイントの高いクラスが優勝となる。

 そして最後の5日間には今からでも逆転できるように生徒会が企画を考えるのだ。

 自由参加だがあまり参加者がいない種目でもある。

「その5日間にも種目は他にあるし、あんな疲れそうな種目に参加するやつなんていない」

「去年はなんでしたっけ?」

「去年は5日間借り物リレー」

「・・・・・・・」

 地獄だった。

 俺はあまり運動が得意でもなく、去年も行事ラッシュだったため、迷わず体育祭をすてた。

 俺だけでなくクラスのみんながそうだったので試合ではもちろん勝てるはずもなく。

 そして暇になった俺達のクラスはその借り物リレーを見ていたわけだ。

「私はあまり見ていないんですけど・・・すごく評判が悪かったのを覚えています」

「範囲はグラウンドだけじゃなくて学区内だった・・・」

「もうそれだけでなんとなくわかります・・・」

 5日後にはみんなヘトヘトで体力温存どころか絞り出してしまったような雰囲気に。

「俺は絶対に参加しない」

「でしょうね。私もですけど」

「私もやりたくはないよー」

 と山梨が会話に参加してくる。

 こいつ行事とか好きそうなのに体育祭に関してはまったくやる気がない。

 それが意外だったりするのだが。

「今年とかやばいものになりそうだよな」

「今年の生徒会長は変わり者っていう噂があるからね」

 俺の場合、実際生徒会長と会ってはいるのだが・・・なんというか気を抜いてはいけないような相手だった。笑顔なのに、笑っていないような印象があった。

「とんでも企画になりそうですね」

「・・・・・」

 考えていた。

 いつから俺は勝ちに対しての関心が薄くなったのか。

 人間が変わることは難しい。長い年月と少しずつの変化に耐えながら、ひたすら努力しなければならない。

 目に見える変化なんて起こるはずもなく、いつの間にか努力することをやめていた。

 ひたむきに頑張ることを忘れていた。

 努力をして変化したのならそれは努力の天才であり凡人ではない。結果がでたのなら努力の天才という天才であり、凡人は努力をしても結果がでることなどないのだ。

 だからやめた。

 勝つことにはこだわらず、本気を出さなかった。

 本気を出して負けたときの言い訳がなくなるから。

 本気で挑んで負けた時にはすがるものがなくなるから。

 俺は何もせず、ただただ過ごす方法を覚えた。

 時間を。

 変わらない日々を。

「どうしたんですか、七実さん」

「ん?あ、いや・・・なんでもない」

「七実くんー、どうにかして体育祭消せないかなー」

「それは俺よりもお前の方がむいてるだろ」

「私の妄想はさ、全員が嘘を信じたら本当になるみたいに誰か一人が妄想にかからないだけでかなり不安定なものになるんだよねー」

「世界変えたときは?」

「私には記憶がないんだけど、熱が出てたりしてたから・・・たぶんそれで制御できなくなった限定解除状態だったんじゃない?」

「お前は人間界で力を制御されてる死神か何かなのか・・・?」

「ふふん、そんなところだよー」

 そんな笑顔を見せられては何も言えない。

 その時、あじさい荘の入口が開かれる。

「やぁ、みんな元気?」

「・・・・・・・・・生徒会長・・・」

 生徒会長がそこにいた。

「なんでここに?」

「なんでって・・・あじさい荘ってただの寮じゃないでしょ?学校付属の寮なんだから場所も簡単に特定できる」

「・・・・・・」

 やっぱりなんかあなどれないな・・・この人。

「あら?お客さん?」

 とそこでキッチンから香織さんが出てくる。

「生徒会長です」

 数夏が答える。

「生徒会長?君がそうなのね」

「えぇ、あなたが寮母ですか?」

「香織よ」

「・・・・・・・・香織さん。上の名前は?」

「上なんてどうでもいいわ。私は香織」

「・・・・・・・似てますね」

「似てる?」

 とここで声を出したのは山梨だ。

「うん、実は昔一人で・・・・・・・」

「で、君はなんの用なのかな?」

 生徒会長が話しだした瞬間に香織さんが遮る。

 ?

 なんだ?

「おしゃべりがすぎましたね。俺はただ誘いにきただけだよ、文系少年に理系少女、そして妄想少女」

「?」

「なんですか?」

「ほえ?」

「体育祭の生徒会主催競技に出てもらいたい」

「・・・・・・・」

 沈黙が起こる。

「俺は遠慮します」

「私も」

「断ります」

 目の前に生徒会長がいるのに誰一人頷かなかった。

「はっきりものをいう子たちだなぁ」

 でも笑顔。

「でも興味が出たら教えてよ。いや、教えなくてもいい。だから参加用紙に名前をよろしく、じゃあね」

 と言うとすぐさま去っていった。

「・・・・・」

 しかし興味があったのは香織さんのこと。

 似てるとかなんとかって言ってたけど、誰に?

 でも聞いても香織さん教えてくれなさそうだよな。

 またキッチンに戻っちゃったし。

「七実くんどうする?」

「どうするったって香織さんが教えてくれない限りはどうしようも」

「いや、そっちでなく」

「あぁ、競技か・・・。とりあえずギリギリまで考えておく。山梨と数夏は?」

「私も考えることにします」

「私は天地がひっくりかえっても参加しないと思う」

 山梨は参加しないらしい。

「あともう少しで・・・か・・・」

 体育祭は近づいてきている。

 温度差があるけれど、行われる。

 そんな体育祭が。


 

 

大変遅くなり申し訳ありません。


次はもっともっとはやいと思うのでお付き合いお願いします。


ではまた次回。

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