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第55片 文系少年と文系少女の言葉⑦

「生徒・・・会長!?」

 そこにいたのは色花の手によって入院させられているはずの生徒会長だった。

「なぜ・・・なぜあなたがここにいるのですか!?」

「いやいや、愚問だね、色花」

 にかっといつもどおりに笑う生徒会長。俺もそれぐらいは知っている、この会長がいつも笑顔なことぐらい。そしてそれは今回俺を安心させた。

「俺はダメージをほとんど受けていない」

「・・・そんなはずはありません。私はあなたを殺すつもりで・・・」

「殺す?そんな言葉を簡単に使うものじゃないよ。あぁ、ちなみに風紀委員長も無事だぞ」

「・・・・・」

「君がはやく動き出すように大怪我したふりをしていたんだよ。それにしても殺すとか言っておいて外傷になりそうな攻撃をしてこないなんてね。そのおかげで君を騙すことができた」

 そういえばそうだった。

 こいつはいつまでたっても俺を吹き飛ばすだけで具体的な攻撃はしてこなかった。

 その理由はなんとなく分かる。

 さすがの俺でも。

 他人の俺でも分かる。

 こいつは・・・

「君は未だに母親の事故を引きずっているのだろう」

「・・・・・・・・」

「俺は見たよ」

 そこで俺は会話に介入する。

「俺はお前の過去を見た。そこのお前は『言葉の照準』を使ってなかったよな。母親が死んで嬉しいと言ったお前の言葉は嘘っぱちだったってことだよ。いや、自分では本心かと思っていたのかもしれないけどな」

 昔から使えた『言葉の照準』。

 それがどういうものか分からないけれどきっとその照準では嘘をつけないような気がする。

 全部予想の範囲できいても教えてくれないだろうけれど。

「もう休んだらどうだ。文系少年を狙ったのは自分の世界を変えてくれそうだからではなく自分を救ってくれそうだからだろ?お前は否定するのかもしれないけれどね」

 ニコッと笑う生徒会長。

 こいつが占いだかなんだかはきっと自分を救ってくれる人を見つけるためのものだったのかもしれない。現実から目を背ける自分を。立ち直れない自分を救ってくれる人を。

「ま、なんか最後は生徒会長に全部かっさらわれた感じですけどね」

 今回色花を救ったのは俺ではない。

 俺は何もしていない。

 色花の弱さが色花自信を救ったのだ。

「んで、何か言いたいことはあるかい?」

「・・・・・・・」

「?」

「『ふ』『き』『と』『べ』」

「!?」

 ものすごい勢いだった。

 俺と生徒会長は思いっきり吹き飛ばされる。

 しかし今回は着地に成功してほぼノーダメージ。それは何回も吹き飛ばされた俺だけでなく会長もだった。

 というか今の会話の流れは確実に改心パートだっただろうが!

「私に近づかないでください」

「・・・・・?」

 何か様子がおかしい。

「私に近づくと怪我をしますよ」

 ・・・・・・いやいや、火傷するぜ的テンションで言われても・・・。

「お前さ・・・」

 俺は思わず口を出す。

 こいつが俺らを吹き飛ばしたのは怪我させようと思ってのことではなく、きっと自分に近づかせないようにするためだったんだと思う。

 自分がまた傷つけてしまわないように。

 そうしないように彼女は独りを選んだんだ。

 そんな色花はやはり可哀想だった。

「人を傷つけることは人間関係につきものだよ。それに傷つくところが見たくないのならお前がその力を使って守ってやればいい」

「私が守る・・・?」

「人を傷つけるために力を使うんじゃなく、人を守るために力を使えばいい」

「私が人を守る・・・」

「その代わり、人を守るお前を俺が守ってやるよ」

「え・・・?」

 俺は隣にいる会長のようにニコッと笑う。

「俺の名前は七実未空。よろしくお願いします、先輩」

「・・・・・・・・私は・・・私の名前は・・・色花・・・・・じゃなくて・・・私の名前は・・・!」













「また私たちがいない間にそんなことをしていたのですか・・・七実さんのお人好しもそこまでいったら本当にもう病気ですね」

「お前は人を素直に褒めることができないのか・・・」

 そっちもなかなかな病気だと思うと俺は小さな声で付け加える。

 翌日。

 俺はあじさい荘にて何があったのか数夏に伝えていた。

 今回はこいつも学校にいたので事の顛末ぐらいは伝えておかないとな。

「ま、でもそんな七実さんも私は好きですよ」

「・・・・・・・・・・」

 マジで照れる俺がいた。

 ほめられることに慣れていない俺はもう我慢できなかった。

「それはそうとして生徒会の人たちの驚く様ったらなかったな」

 会長が何事も無く生徒会室に入るとそこにいた副会長に驚かれ、そしてそれが後にグラウンドにきた書記の人、会計の人などに伝わり最初は幽霊じゃないかと思ったと言っていた。

 だけどみんな笑顔だった。

 それだけでなんとなく一件落着感が出るよな。

「いやーそれにしてもこれで次からは日常パートですか。あのつまらない日常を淡々と語るもはやどこが文系でどこが理系だか分からないパートに突入ということですか」

「お前はなぜそんなに日常を目の敵にするんだよ!」

 確かにその通りだけども!

 タイトル詐欺もいいところだけども!

 でもそんなにはっきり言わなくてもよくない!?

「ま、でもそんなことを思っている人たちに朗報ですがだいぶ受験が近づいているということでもうそろそろ嫌でも勉強の話題が出てきますよ。なので理系文系はこれからかもしれませんね」

「お前は一体誰なんだ・・・」

「さぁ、はやくこの非日常パートをしめてください。いつもみたいに俺はこの日常が一番好きなんだ・・・みたいなぬるい終わり方で」

「そのセリフのせいで余計しめにくくなってることを知ってるか?」

 でもこの非日常はこれでおしまいということで。

 なんかものすごく長かったような気がする1日だったけれど。

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・。

「しめの言葉が見つからねぇよちくしょう!」

「え?いつもどおりのこの日常が一番・・・はどうしたんですか?」

「そのセリフ!それのせいで使えねぇんだよ!」

 えー・・・では次もよろしくお願いします。

 はい。

ようやく非日常編終了です。


ここまで見てくださった皆様、ほんとうにありがとうございました。


もしよければ、これからもよろしくお願いします。


まだまだ本編自体は続きます。


では。

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