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第54片 文系少年と文系少女の言葉⑥

「あ!?文系少年が文系少女と接触!?んで、どうなったんだよ・・・・・・・・はぁ!?グラウンドで決闘!?なんでそうなるんだよ・・・まぁ、いい、僕もグラウンドへ行く」

 はぁーとため息をつく。

 何がどうなってるのかさっぱりわからない。

 文系同士の戦いでは負けを言葉で認めた方の負けになる。

 だからまだ文系少年が戦うには早いそう思っていた。

 だから毎日時間稼ぎをしていつか文系少年が力をつけるまでかやつが卒業するまでやるつもりだった。

 でもそれももう意味がない。

 ぶつかってしまった。

「あの・・・七実くんは・・・?」

「お前らは帰れ」

「え?」

「七実さん、また危険なことしてるんですか?」

「そんなのは本人にきけよ、僕もよくわからない」

「数夏ちゃん・・・」

「これはまた七実さんのお節介が発動したようですね・・・」

「んじゃ、いってらっしゃいー」

「・・・・・・・」

 黄味とやらが言ってくる。おいおい。

 お前は僕たちを止めにきたんじゃないのかよ。

「あーそれはいいんだよー黄味は遊びたかっただけだしねー」

「部長に怒られないのか?」

「君も黄味と同じ臭いがするよーだから言うけれど黄味に部長の言葉は効かないんだよー」

「・・・・・・」

 厳密にいうと効かないわけじゃない。

 僕も完全な無なわけじゃないんだから。

「それと君ら女の子。君らの友達にも黄味に似てる人がいないかな?」

「・・・・・?」

「いや、いいんだよ、気にしなくてさーさぁ、はやくいってらっしゃいー」












「私に勝てると思ってるんですか?」

「ああ、まぁな」

「私は校内1位、あなたはそうでもないのでしょう?」

「知ってるか?1位で居続ける頑張りよりなビリが1位になる頑張りの方が強くて大きいんだとよ」

「よく知ってますよ、その言葉」

「そうか。俺はさっき知ったんだ」

 グラウンド。

 放課後なのに活動してる部活はなく、静かだ。

 そういえば急遽、今日は部活が全部なくなるというアナウンスが流れていた。

 それもこいつがやったんじゃなかろうか・・・。

「それで私を倒す目処は立っているのですか?」

「倒すんじゃねぇっての」

「救うんでしたね」

「じゃあ、いくよ」

 俺は間合いを詰めるためにダッシュする。しかしそれは攻撃するためではない。

 攻撃されるためのダッシュ。

 攻撃される理由はあいつの言葉を聞くためだ。

「無策で敵につっこむほど危ないことなんてないんですよ」

「知るかよ、そんなこと」

「『ふきとんで』ください」

「!?」

 ぐわぁっと。何かに押されるように後ろに吹き飛ぶ俺の体。

 でも違う。

 何かが違う。

 今、押されたような感覚はなかった。押されたように吹き飛ばされたが押されたような感覚はない。

 矛盾してるようでしていないはずのこの言葉。

 俺は自ら吹き飛んだのだ。自分の足で。

「ぐっ・・・がぁ・・・」

 背中を地面に思いっきり打ち付けられる。

 肺の中の空気が全て吐き出され激痛が俺の体を襲う。

「何が起こったかわからないでしょう?ですがそれが当然であり、必然。本当につまらない。案外あなたを倒しても私の世界は変わらないのかもしれませんね」

「うる・・・せぇよ」

「口だけは強気のようですが・・・立つ力すらあるかもあやしいですね」

 俺はもう1度間合いを詰めるために走る。

 しかし結果は同じ。

「『ふきとんで』ください」

「ぐっ」

 また何かに押されるように自分で吹き飛ぶ俺の体。

「がぁ・・・・・」

 また体に激痛が走る。

「もう諦めたらどうですか?」

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

 俺は足に思いっきり力をいれ立ち上がる。

 漫画の主人公じゃないのだ。無敵じゃない。衝撃はかなりのもので2回やられただけでもかなりのダメージがある。走ることはもう無理かもしれない。

 でも、俺は歩いてでもこいつを止める。救ってみせる。

「あなたがただ負けましたというだけでいいんですよ。それで痛い思いはしなくてもすみます」

「お前は自分の世界を変えるためには手段を選ばないんじゃなかったのか?」

「そうですが?」

「じゃあ、なんで俺に痛みを与えたくないような言葉を使いやがる」

「・・・・・・・・・・気の迷いかもしれませんね」

「見てられないんだろ?人が傷つくのを」

「そんなわけないでしょう?私は色花。あなたを倒して世界を変える者です」

「お前はわざと俺にお前の記憶を見させただろ?」

「えぇ、そうしたほうが私のことを恐れてくれると思ったんですが逆効果でしたね」

「あぁ、そうだな。俺はあれを見てお前が可哀想だと思ったんだ」

 ふむ、と色花先輩は扇で口元を隠す。

 何かを考えてる様子だがこの間も油断してはならない。

 油断できない。

 やつは言葉を発するだけで人を吹き飛ばせるぐらいの力を持っているのだから。

「どこで可哀想だと思ったのですか?狂った時?それとも母親が死んだとき?だとしたら哀れむのはお門違いというものです。私は料理もできましたし、あの頃から言葉の照準ぐらいは使えましたのでコミュニケーションにもさほど問題はありませんでした。そして狂いというのは私にとって存在意義でもありますので」

「それだよ」

「?」

「お前のその思考こそがかわいそうで哀れなんだよ」











「うーん予想外だ『』ぁ・・・」

 桜浪高校屋上。そこに1人学ランの男子生徒がいた。

 しかしその学ランは桜浪高校の学ランではなく・・・・・。

「ここまで文系少年と文系少女の接触がはやいと困るんだよね」

 と言いつつもその男子生徒は常に笑みを浮かべていた。

「ま、でも僕には何も『無』いわけだし、最初からスケジュール『』んてものも『無』いに等しいんだけどね」

「で、何が狙いなんだ、君は?」

 そこにもう1人男子生徒が割り込んでくる。しかしそれは桜浪高校の生徒であった。

「だから僕には何も『』いんだってば。だからこそ何かを得ようとするのは当然の行為でしょ。だから僕は欲しいんだよね、【桜】が」

「・・・・・・・それが狙いか?」

「うん、まぁそうか『』?うんたぶんそうだと思うよ」

「まぁいいや、俺は他にやることがあるからここまでにしておくよ。ただ1つだけ、あまり人の物を無くしすぎるなよ」

「んー」

「聞いてないな・・・」

「気にしない気にしない、じゃあね、生徒会長さん」









「私の思考ですか?」

「俺はお前が料理できるのかと心配した覚えはない。なのになぜ料理ができる、コミュニケーションには困らないという話になるんだ」

「・・・・・・・」

「お前は背けてるだけだよ、母親の死から目をな」

「それで?」

「?」

「それで私が改心するとでも?母親の死と向き合え、それはもうとっくの昔にし終えました。そして今の私がいる。それが答えですよ」

「そうか・・・言葉の照準だったか?言葉の威力を高める言葉の指定」

「それがどうかしましたか?」

「お前母親が死んだとき、母親が死んで喜んでいたときお前は言葉の照準を使ったか?」

「!?」

「お前は心を表す言葉の照準を使ったか?」

「・・・・・・」

「もう残念だが、終わりだぜ。言葉を失うっていうことはお前にとって致命的。すでに勝負はついたよ」

「・・・・・・・終わりですか・・・ふふふ・・・・・あはははははは!私は世界に【色】と花の【香】をつける【色花】!!私が母親の死を悲しんでる?私が人が傷つくのが嫌い?だったら、風紀委員長と生徒会長についてはどう説明するんですか?」

「くっ・・・」

 それだった。

 唯一不可解なこと。

 こいつが母親の死を悲しんでいるのなら他の人を決して傷つけるはずがない。ましてや母親が死んだ事故のように振る舞い大怪我させるなどもってのほかのはずだが・・・。

「あぁ、それについてはもう証明できているよ」

「!!」

「お前は・・・・・・」

「俺がここにいることが証拠だろう」

「生徒・・・会長・・・」

いよいよ文系少女編が終盤になってきました。


ここまでくると急に日常が恋しくなりますね。


これが終わるとしばらくまた普通になると思うのでそうなってもよろしくお願いします。


では。

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