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第51片 文系少年と文系少女の言葉③

 放課後。

 俺は授業を終え、帰宅しようと荷物をまとめる。

「七実さん、七実さん」

「?どうした、数夏」

「今日は先に帰っていてください」

「ん?あぁ、日直か?別に待ってるぞ」

「ほんとですか?じゃあ、すぐ済ませてきます」

「いや、丁寧にはやれよ」

「分かってますって。びゅびゅっ!びゅ!って感じでやってきます」

「いや、それ全然丁寧じゃないから。風もきってるし、空もきってるから」

 そんなわけで俺の帰宅はまたしばらく後になりそうだった。

 数夏は教室を出ていき、職員室に行ったらしい。

 さて、何をやるべきか・・・と暇な頭なりに考えようとしていると・・・・・

「あら?すみませんがあなたのお名前を教えて下さる?」

 俺の真横に。気配がなく急にそこに現れたかのようにいた人物がいた。

 なぜ俺は気付かなかったのだろうか。

「!?・・・なんだ・・・?」

「驚かなくていいですよ。それより質問に答えて下さる?」

「・・・・・・・あなたこそ名乗ってくださいよ、先輩」

 かろうじて先輩ということだけは判断できた。

「確かにそうですね。私の名前は【色花】と申します」

 いろはな?偽名か?なんて漢字を書くんだ?

「俺は七実・・・未空だ」

「あぁ、なるほど。あなたでしたのね。苦労しました。生徒会長に尋ね、風紀委員長に邪魔され、本当に長い道のりでしたよ」

「なに?」

 生徒会長に風紀委員長?それって今日確か怪我したとかで・・・

「お前か?」

「はい?」

「お前が生徒会長と風紀委員長を・・・・・」

「さて、それはどうでしょうか?」

「この・・・!」

「あなたこそそこまで他人のために怒れるなんてなんてすばらしいのでしょうか。あなたは私の世界に偶然を持ちこんでくれる。そう信じた結果ここまでとは!」

「なんだ・・・こいつ・・・?」

 言動が理解できない。

 まるで違う言語を使っているようだ。

 いや、実際違うのだろう。彼女と俺の言葉は。

 幸いなのは数夏がいなかったことか・・・。

「さて、ではあなたは私に何をしてくれるんですか?」

「・・・・・?」

 なぜだかは分からない。

 だが俺はここで確信した。

 こいつは普通じゃない。

「あー、そこまでですよ」

「?」

「?」

 またそこに1人の男の声が聞こえた。

 いろはなという人も驚いてるということは予定外ということなのだろう。

 しかしその顔は口元を扇子で覆われているのに笑顔だと分かった。

「あぁーあ、結局ばれたのかよ、これはやりにくいわ」

「あら?あなたは確か生徒会の・・・」

「伊藤だよ」

「会長の仕返しですか?」

「さぁーね、僕は家に帰って溜まってるアニメを見なきゃいけないんだよ。だから迅速に終わらすぞ」

「生徒会だからといってあなたに何ができるのですか?」

「まぁ、そうなんだよね。結局僕は無力なわけだからさ。何もできないんだよねー」

 そう言って顔に笑みを浮かべる伊藤とかいう男。





「僕、1人ならさ」





 バラバラバラバラ

 なんだろうか、変な音が教室の外から聞こえる。

「あー、あー、犯人につぎますわ。お前は包囲されている」

「あ、おい、成宮。お前そのヘリコプター・・・まぁいいか」

 教室の外をヘリコプターが飛んでいた。

 その中に女の子が乗っているようだが・・・。

「なんだ・・・この状況」

 とても回収できるようなものだとは思えないんだけど・・・。

 どうすればヘリコプターが飛んでくるんだ。

「さすが成宮だな。僕は人の声が聞こえない程度の大きさの音を出してくれと言ったんだが・・・まさかヘリコプターの羽の音と自分の声を使うとはな」

 伊藤とかいう男が何か言っているが聞こえない。

 しかしひとりごとのように呟いてるみたいだ。

「ま、これで色花の声は誰にも届かないだろ。ってあぁ、文系少年」

「・・・・・・」

「聞こえねぇか・・・文系少年!」

「!?・・・・・あ、あぁ・・・えーと」

「お前は逃げろ!急いで帰宅するんだ!」

「へ?いや、なんで・・・」

「いーから、行け!」

 半ば無理矢理教室から出される俺。

 なんだこれ・・・。

 これが超展開というやつなのだろうか・・・。

 そこで思いだす。あぁ、そうだ。数夏が教室に戻ってくるかもしれない。

 それはまずい。何が起こってるかは分からないけど危険な気がする。

「俺はまだ帰るわけにはいかないな・・・」

 俺は走って職員室にむかう。行き違いにならなきゃいいんだけどな・・・。









「あーあー、もういいぞ、成宮」

「分かりました。ではお願いします、伊藤先輩」

「いや、お願いしますって言われてもな・・・何もすることがないんだが・・・」

「では私は一度ヘリを置いてきます」

「どこにだよとかいうツッコミはもういらないか」

あーあ、ほんとめんどくせぇな。

 まぁ、けど会長のためでもあるしな、俺らでやるしかないんだけど。

「あー、えーと、色花先輩だっけ?あんたに文系少年・・・ってのは自称だったか?まぁいいや。文系少年には近付かせない」

「ふふふ、どうやって?」

「言っておくが僕にお前の言葉は『聞こえない』し『届かない』ぞ」

「・・・・・あなたも文系なのですね」

「違うよ、僕は理系でもあるんだよね。でもだからこそ僕に言葉はきかない。というより僕の方が理解を放棄するということかな」

「なるほど。私の言葉を理解しないということですね。すなわち無の境地といったところでしょうか?何も考えないとは確かに私への抵抗となりますが・・・それじゃあ、あなたも何もできないのでは?」

 この【色花】の言葉は理解してしまうといけない。

 脳が理解してしまうとその言葉通りに身体が動いてしまう。

 ならば何も考えず言葉を理解しなければいい。難しいことではあるが例を出すと分かりやすい。

 ぼーっとしてるときに話しかけられても言葉が聞こえないことがある。

 授業中、友達と話している時。

 その状態を常に続ければ確かに言葉は届かない。

 しかしそれは普通にできることじゃないだろう。

 まして自分のやりたい時にその状態になることなど難しいはずだが僕にはそれができる。

 【色花】の能力なども予想だが大体合ってるとみていいだろう。

 何しろあの会長が常に耳栓を持ち歩くぐらいだし、言葉を聞くことに意味があることは正解だろうな。

「僕がするのは時間稼ぎだけ。特に何かするわけじゃないんだよ」

「時間稼ぎだけで大丈夫なんですか?明日も明後日も私はここに現れるかもしれませんよ」

「ならその次の日もその次の日も時間稼ぎをするさ。文系少年がお前と匹敵するぐらいの実力をつけるまでね」

「・・・・・・なるほど。彼はやはり【自称】止まりの実力ではない・・・ということですね」

「さぁね。僕は他人のことに興味がなくて」

「まぁ、いいです。私は彼を追いますがよろしいでしょうか?」

「んー・・・もういいかな?彼もさすがに帰っただろうしね」

「確かにもうすでにいない確率の方が高いと思いますけど・・・諦めたらそこで試合終了なんですよ」

「・・・・・あんたはいつからそんなキャラになったんだ・・・」

 そう言いながら教室から出ようとする【色花】を止めずに見送る。

 僕の仕事はこんなもんかな。まだ生徒会の業務の方の仕事があるんだけどなぁ。

 予習もしてねぇしさ。でも、ま、アニメの時間は削らないけど。

 ピリリリリリ

 あ?と思い携帯を見てみると副会長から。

「もしもし、副会長ですか?」

『そうだ。まだ色花はいるか?』

「いえ、もう逃がしました」

『はやくないか!?まだ予定だと5分は足どめしてなければ・・・』

「すいません、5時半からアニメの再放送をやるので」

『もっと頑張ってくれよ・・・』

「いえ、NAR〇TOですよ」

『ナルサス!?』

「あんたは本当に忙しいですね、エロ副会長。一応女性なのですから少しは・・・」

『ツーツー』

「あの野郎!」

 先輩とか関係なかった。もうそんなことはどうでもいいぐらいだった。

「ったく・・・あーじゃ、帰るかな」

 その時ガララと教室のドアが開く。

 こんな時間に・・・とはいえ部活がある生徒は普通にたくさんいるわけだが教室に入る人間は少ないと思う。

 ドアの方をふと見ると。

「あれ?七実さんがいなくなってかわりに違う人がいます」

「・・・・・」

 ん?どっかで見たことあるかと思ったら文系少年と一緒にいる女の子だった。

 しかしそれとは別にまた見たことがある。

 彼女は・・・

「理系少女・・・・・・!」

 そこにいたのは理数系の教科1位を全てものにしている理系の最高峰。

 理系少女だった。

「おいおい・・・マジかよ・・・」

「あれ?どうしました?見た所あなたも2年生のようですが?」

「ん?数夏ちゃんどうしたの?」

 さらに女の子が1人。

 大人しそうな黒髪ツインテールの女の子。

 高松小鳥。雷瞬少女だった。

「あぁ・・・これはアニメの再放送無理かもなぁ・・・」

 とそこで僕は頭にひっかかりを見つける。

 あれ?

 なぜ、この時間まで文系少年は教室のしかも自分の机に1人で座っていたのか。

 確か部活には入っていないはず。

 ならなぜ?

 そう、それはこの彼女たちを待つためではないのか?

「確かに七実さんが待っててくれるといったのですが・・・」

「どこにいっちゃったんだろうね・・・でも約束を破るような人じゃないからいると思うんだけど」

「むー、しかし小鳥さん、助かりました。日誌をひろってくれて。危うくなくすところでしたよ」

「ううん、別にいいよ。それに私、この後図書室で部活あるし」

「あー君たち」

 と僕は2人の世界に入っている2人を呼ぶ。

「文系・・・じゃなくて七実未空とここで待ち合わせを?」

「あぁ、はい、一応」

「・・・・・・・・・」

 ってことは・・・・・。

「あいつ!まだ帰ってねぇのかよ!」

 そうきっと文系少年はこの少女2人のところによってから帰るに違いない。

 待ち合わせをしていたのならなおさら。

 文系少年は約束を破るはずがない。それはここのところの彼を見ていれば分かる。

 なら行き違いになったということか・・・。

 ということは文系少年はまだこの2人を探して回ってるということ。

 俺はポケットから生徒会人数分の携帯電話を取り出す。

 なぜそんなに携帯を持っているのかというと成宮から借りたわけだが。

「あー、生徒会役員現在学校にとどまっているものにつぐ」

 ちなみに同時に通話している状態だ。

「今、担当している雑務、仕事などを一旦全て放棄。守るべき対象はまだ学校にいる」

 むこうからの声はない。

 ただただ聞いてくれているようだ。

 その方が助かる。

「あ、あのー七実くんは・・・?」

「お前たちは2人ともいますぐ帰宅しろ。理由を話している暇はない」

「え・・えと」

「生徒会役員。聞こえるか」

 各々の声が聞こえる。

「これより、準備に入る。準備のできたものから追え。んじゃ、健闘を祈るっつーことで」

 ピッ

 通話終了。

「あの・・・」

「俺はとりあえず君ら2人を校門まで見送る。ついてきてくれ」

「七実さんは?」

「今、他の仲間が探してるから安心しろ」

「は、はぁ・・・」

「ほら、行くぞ」






「どこに?」






「!?」

 ふいに声が聞こえる。

「あー驚いてる驚いてるー。面白いな驚愕の顔。まぁ、黄味も色々な意味で驚愕してるんだけどね」

「なんだ、お前は?」

「色花先輩はねー部活で人を励ましているんだよ。その時点で気付いてほしいけれど」

「あー、なるほど」

「頭の回転がはやいね。さっきまで驚いてたとは思えないよー」

 その場にいたのは女の子だった。

 背は150ちょいそして長い茶色の髪の毛。しかしその髪の毛はクセがあるのかどこか跳ねていてそして微妙にカールがかかったみたいになっている。

「お前もその一員ってことか」

「その通りー。黄味も部員なんだよねー」

 とりあえずどうしようかなこの状況。

「俺の名前は伊藤だ」

「黄味の名前は黄味だよ」

「で、どうしたら通してくれるんだ?」

「黄味が負けを認めたときだね。んー何で勝負するかは君たちで決めていいよ」

「は?」

「黄味はスポーツが好きなんだー。だからそこらへんの種目にしてもらえるといいな」

「・・・・・・・」

 緊張感の欠ける奴だな。

 なるほどね。こいつは別に七実未空には興味がない。

 遊びたいだけということか。

 だったらはやく決着のつく方法で・・・。

「え・・・えと・・・」

「ん?」

 雷瞬が何か話したそうにしている。

「伊藤君・・・だったっけ?ちょっと・・・」

 ゴニョゴニョと小声で話す雷瞬。

 あーなるほど。確かにこれはいいかもな。

「黄味とやら。勝負内容が決まったぞ」

「ん?なになにー?」

「ゴルフだ」

「へ?」

「ゴルフだよ」

「いや・・・えっとー教室で?」

「あぁ、そしてお前の相手はこの雷瞬少女だ」

「いや、うん・・・それはいいけどゴルフってどうやって?」

「簡単なゴミ捨てでだよ」

 

どうも。


最近というか最初から不定期なのでなるべく間をあけないようにしました。


長くなってしまったかも・・・。


では。

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