第49片 文系少年と文系少女の言葉
「生徒会長さん。私に文系少年さんについて教えてほしいのですが」
「・・・・・」
「ではそうですね私に『教えて』くださらない?」
「・・・・・」
「・・・・・もしかして耳栓してるんですか」
「・・・・・・」
「聞こえてないみたいですね、本当に」
「・・・・・」
「ふふふ・・・私の【話】はまだ終わってませんよ」
〇
「なんでも屋があやしい?」
俺はさっき山梨から聞いたなんでも屋である桜部だっけ?そんな感じの部活について山梨からさらに情報をもらった。
いや、さっきと言われた内容がめっさ違うんですけど。
「情報に振り回されるいい例が私だね!」
「なんでそんなにいばれるのかはいいとして・・・あやしいってなんだ?」
「うーん、それがね。その部の部長さん。なんでも屋って言ってるけど決して自分が自ら手伝うようなことはしないんだってさ」
は?手伝うことはしないって?
「そう。たとえば、私の恋を叶えてくださーいとか相談してもその人は手伝わない。協力さえしない。するのはただ励ますだけなんだってさ」
まぁ、高校生の部活だ。なんでも願いを叶えられるわけじゃないし。
「でもそんなあやふやな部活がよく今まで残ってこれたな。普通廃部になってもおかしくないだろ」
大会があるわけでもなく、やるのはただただ励ますだけ。
そんな部活は廃部になるだろ、存在意義も分からないし。
「ですが生徒からの指示は莫大だそうだよ」
「なんでまた?」
「そこに相談すると相談したことがいい方に傾くってさ。さっきの例だと恋がかないましたーとかね」
確かに自分で言うのもなんなんだが高校生というものは恋愛について悩むことが多いよな。
創作でも現実でもさ。
でもそれを話すとなるとなかなか難しい。
それで頼るってわけか。
高松が言った流れ星のような存在を。
「ふぅん」
「ま、私は恋を鯉ほどにしか思っていないけれどねー」
「今は俺も似たようなものかな」
魚の鯉ほどにしか興味がない。
というより俺は・・・・・。
「今はってことはもしかして昔はいたのかなー?」
「そりゃ、いるだろ。普通に初恋は幼稚園の頃だったぞ」
「ニブチンの七実くんが珍しいね」
「誰がなんだって?」
「ううん、なんでもないっすよ!んじゃね」
「いや、待てよ!」
山梨はまだ学校に用事があるのかどこかへ行ってしまった。
「おーい、数夏。帰るか?」
「あれ?さっきまで戸張さんがいませんでしたっけ?」
「いたよ。もうどっか行っちゃったけど。まぁ、また変な情報を集めにでも行ったんじゃねぇの?」
「変な情報?」
「あぁ、お前にはまだ話してなかったな」
一応数夏にも話しておく。まぁ、こいつはそういうあやふやな感じのことは嫌いだろうし。
そういう占いより自分の数字、頭を信用するだろうな。
その予感はやはり合っていたようで。
「そんなあやしいものが学校内にあったんですね」
「やっぱお前はそういうのが嫌いか」
「えぇ、まぁまぁ嫌いですね」
「というか相談受ける方もあれだよな。よく励まされただけで実行にうつせるものだよ」
占いですらない。
やってることは普通の人と同じ。
なのになぜ好評なのか。
それはよほど言葉に説得力のあるやつじゃないとありえないだろうな。
言葉に異常をもってるやつなんて聞いたこともないけど。
「きっとそのうち聞かなくなりますよ、そんな部活は。流行はすぎるものですし」
「そうだよな」
「それよりも私も噂を聞いたのですが・・・文系でも理系でもない人がいるって知ってます?」
「いや、確かに両方得意とか両方苦手とかっていう人はいるだろうけど」
「どんなテストも文系教科理系教科がまったく同じ点数という人がいるらしいです」
「たまたまじゃねぇの?」
「それが1年生から2年生にかけてのテスト全部です。まぁ、教科によって点数は変わるので同じ点数というか同じ比率だということですけど」
「そんなやつがいるのか・・・」
「あくまで噂ですけど。それは文系にも理系にも所属しない【無】所属の人間と言われているらしいですよ。まぁ、うちの学校じゃありませんが」
「俺はまぁ、迷うことなく文系だったけれど、理系への未練っていうのはやっぱりあるんだよなぁ。そんな俺からすれば羨ましいっちゃ羨ましいかもな」
【無】所属ねぇ・・・。
俺はもし、そんな科、文系も理系も関係ないような所属があるなら入っただろうか。
いや、ねぇな。
こいつも同じく理系を選んでいたと思う。
変わりなく進んでいる。
そんな気がする。
「なんか俺も情報に振り回されてるような気がするな」
「七実さんは情報の他にも振り回されてる気がしますよ」
「それは主にお前にな」
〇
「あれ?そういえば会長はどこにいったんですか?」
「愛実会計。それは愚問というものだよ。会長には放浪癖があるのかというぐらいフラつく人だからね。それは僕にも分からないと言うものだよ」
「伊藤先輩にも分からないんですか・・・」
「何か用があったのか?」
「いえ、なんだか心配になって」
生徒会室で俺は伊藤先輩に質問しながら心を落ち着かせようとした。
しかしそれは無理な話で。
どこからくるのか分からない不安が俺を追い込んでいく。
「まぁ、そんなに心配するものでもないさ」
「そうですかね・・・」
〇
「あらあら、これはこれは風紀委員長さん。どうしたのですか?」
「ん?あぁ、偽名さんではないか。いやいや、用という用ではないのだがもうすぐ卒業である私たち。何か思い出でも残したいとは思わないか?」
「そうですね・・・。私たちが知りあったのも必然なんでしょう。ほんと偶然なんかではなく必然」
「その前にちょっと聞いていいかな?」
「なんですか?」
「君、ねじ曲がった心で人を励ますのはやめていただけないかな?」
「・・・・・・というと」
「いやね。君が偶然を求めて人を励ましているという噂をきいてね。そして偶然を引き起こすために君の【言葉】を使っているともきいたんだ」
「それは誰からですか?」
「それを言ってしまったら君は何をするんだい?」
「・・・・・」
「明らかに情報源を消すんだろうね。物騒な意味じゃなくて記憶的にだけどさ」
「ふふふ。ききたいことはそれだけですか?」
本当に不気味な奴だ。
ただ不気味すぎてそんな雰囲気を作っているようにさえ思える。
「あぁ、それだけじゃないよ。あと1つだけ」
私はポケットからメリケンサックを取り出す。
「生徒会長に何をした?」
「面白いですね。あなたは本当に鋭くてうっとおしいナイフのよう。まさしく私ののど元を狙う、つまり確信をついているようですし。まぁ、でもしかし私はここであなたを・・・」
彼女はニヤリと笑った。
お久しぶりになってしまいました。
あ、後1話で・・・。
では。




