第48片 文系少年とそれぞれの秋風
夏が終わり、俺の心までも秋のようにさみしくなってきた9月。
夏休み最後の日まで宿題を忘れるという古典的でベタなイベントは発生せず、むしろ最後の日は遊びっぱなしのような気さえする。
そんな今日は夏休みが終了して6日たった日だった。
みんな夏休みボケみたいな浮かれ気分も終了して普通の学校生活を楽しんでいた。
しかしそんな中やはり学校へ行くのはめんどくさいという心も働く。
家で寝ていたいなぁ・・・なんて考えながら登校していた。
「だるいなぁ・・・・・」
「七実さんはまったくもってめんどくさがりですね」
「誰だって嫌だろ。夏休み戻ってこないかなぁ・・・。あぁ楽しかったなぁ海水浴」
「現実逃避しないでくださいよ」
数夏が俺のとなりをちょこちょこ歩いてくる。
こいつ歩幅小さすぎだろ。
「それよりももうそろそろ先生の目が厳しくなってきましたね・・・」
「あぁ、進路だろ。そうなんだよなぁ・・・この時期だし」
先生がやたら生徒相手に面談するようになっていた。
主に進路があやふやなやつ。
それには例外なく俺も含まれている。
「ったく進路なんてせがまれても決められねぇのにな」
いや、まぁ、決めてない俺が結局は最終的に最大的に悪いんだけど。
「進路は人に相談のしようがないですからね」
「参考にはできるとは思うんだけどな・・・そういや、お前は決まってんの?」
「えぇまぁ」
「マジかよ・・・どこ?」
「秘密です」
「参考にならねぇ!」
今日も面談だろうなぁ。
そんなことを思いながら俺の学校生活は始まった。
不覚にもいつも通りだと思いながら。
〇
「私はどうしようもなく狂ってる。そう思わないですか?長鍋風紀委員長」
偽名のような通り名をもつ女の子が私に話しかけてくる。
気持ち悪いとさえ思えるこの人の雰囲気や言動。
確かに狂ってると思えるよ。
放課後、私は治安維持のため学校をパトロールしていると部屋を不法占拠してるやつに出会った。
「不法占拠とは大袈裟ですね。私は校則を守らなくても法律は守る人間ですよ」
「残念だけど校則は学校内なら法律に匹敵するんだよ」
「では、私がどのように校則を違反しているか言ってほしいものですね」
「はぁ・・・」
違反なんて数をあげればきりがない。
でも言えない。
言っても意味がないんだ。
この前のように倒された風紀委員の記憶は消され、それを先生に言っても信用されない。
なぜか。
まずこの意味不明なこいつの【言葉】。
それと絶対的な教師からの信頼。
理系と文系の称号をもつものだから教師からの信頼が半端ない。
たとえ警察が乗り込んでこようが信じないだろう。
文系の称号を持つものの【言葉】の前では嘘さえも真実となる。
「【色花】さん、あなたが違反してることは言っても無駄だと私は判断するが」
「では違反して『ない』のと同じことではないのでしょうか?」
「まぁ、あなたがそう『言う』ならそういう『こと』に『なる』んじゃない?」
「ふふふ、まぁ、それが聞きたかったわけじゃないんですよ、いえ、あなたなら知ってるかと思いましてね。聞きたいことがあるんですよ」
ん?珍しい。
全てを知っているような雰囲気を持つ彼女だが知らないことがあるのだろうか。
「いえ、私興味がないことには本当に無知なんですよ。で興味を持った時には教えてもらう」
「調べようとは思わないんですか?」
「調べようと思っても少々難しくて・・・それに私はもう少しで受験ですし、時間がありません」
「で、何が聞きたいの?」
「文系少年と名乗る少年に心当たりはありませんか?」
「文系少年?」
聞いたことがない。というより文系の称号は彼女のものじゃないか。
「そうなんですけれども、自称そう名乗っているようでして」
「ふぅん・・・悪いけど知らないな」
「そう・・・ですか・・・せっかく私が久々に興味をもったと思ったのに。やはり無理矢理にでも生徒会長にでもききますかね?」
無理矢理にでも?ってことは生徒会長は色花さんに文系少年の存在を隠しているということか。
なるほど。これはもし分かっても教えない方が
「長鍋さん・・・もし何か分かったらぜひ教えてくださいね」
あぁ、なるほど。これは関わりたくないタイプの事件だな。
「何か分かったらな」
私は絶対に教えないと決心してパトロールを続けた。
〇
「なんでも屋?」
放課後、俺は山梨からある部活の存在を知らされた。
「うん、桜部?桜花部?なんだっかは分からないけど悩んでるならそこに行ってみたら?」
「いや、でも俺が迷ってることは進路であって他人にゆだねることじゃないんだよ」
「じゃあ、他のことをきいたら?」
「他の事?」
「その部の部長3年生らしいし、参考になることをきいてみたらどう?」
「んー。まぁ、暇だったら行ってみるよ」
というよりこれから面談なんだよなぁ・・・めんそくせぇ。
自分の進路のことだがそう思ってしまってもしょうがないと思う。
「さて・・・と」
もう行くかな。俺は立ち上がり数夏にアイコンタクトで伝えてからその場を去った。
えーと、確か職員室近くの進路相談室だったかな?
職員室でまず先生を呼ばないとな。
〇
「会長、会長ってば!」
「ん?どうしたのかな?愛実くん」
会長は笑みを絶やさず俺に振り向いた。
「会長・・・あの・・・生徒会室に【色花】さんが待ってますよ」
「・・・・・・・・・分かったよ。」
会長は歩く足の速度変わらずそのまま生徒会室まで行く。
「あらあら。お久しぶりです」
「・・・・・で、俺に何の用事かな?」
「ちょっとこちらへ」
そう言って【色花】さんは会長をつれてどこかへ行ってしまう。
それを追いかけようと俺も行こうとするが・・・。
「・・・・・」
会長に目で止められる。
なんで・・・と思ったが今、思えば別に会長への話に俺がついていく必要なんかどこにもない。
俺はなんでついていこうと思ったのだろうと考え直し、自分の仕事をこなすことにした。
「おい、愛実会計。こっち手伝ってくれ」
「あ、はい!って伊藤先輩なに漫画読んでるんですか!」
俺は夏休み明けのふつうの生活を楽しんでいた。
「あ、愛実くん、こちらも頼みますわ」
「お、おう・・・・・」
成宮への接し方はまだ分からない。
あれは告白・・・でいいのか?
でもむこうは普通に接してくるし。
結局あのときは花火やら帰りの準備とかで返事もうやむやになっちゃったけど。
「むぅ・・・」
どうしたものか。
それよりも仕事だ仕事!
タイトルが苦しいと思うのは気のせいです。
というわけでもう少しで50話ですね。
長かったような・・・・短かったような・・・。
しんみりするのは50話をむかえてからですね。
では。