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第44片 普通少年と混沌生徒会の海水浴 後編

 暴走する先輩たちをなんとか止めることができたのは30分後ぐらいだった。

 よかったのはこの後編の時にはもうおさまっていたということだろう。

 改めて俺は海に何をしにきたのだろうかと思う。

「少しは海らしいことをしましょうよ」

「海らしいこと・・・か・・・そうだな、あれは2年前の夏・・・僕がまだ中学生の時だった」

「伊藤先輩。それ確実に長くなりますよね。この後編まるまる使う気ですよね!」

「いいじゃないか、愛実会計。僕は海に来たということで少しは浮かれているのだよ」

「どこが!?」

「違いが分からないか?いつも僕が持っている漫画は続きものなので最近は10巻ぐらいを読んでいる。しかしよく見てみろ。今日は違う漫画の1巻だ」

「分かるわけねぇ!探偵ぐらいですよ、そんなことに気づけるの」

 というかさっきあんた新刊持ってたろ。

「これは僕が浮かれている証拠。あぁ、よきかな、夏の海」

「じゃあ、せめて水着を着ていただきたい!」

「なんだ、愛実は僕の水着姿に興味があるのか」

 その瞬間副会長がぴくりと反応した。

 ほんとにこの人はオールマイティすぎるな、嫌な方向で。

「別にそういうわけではないです。ただ、俺だけ水着ってなぜか恥ずかしくて」

「そういうことでしたら、私も水着ですわ」

 成宮が反応する。そうなんだよな、なぜかお前は今日一番まともに見えるんだよ。

 なぜか。

 なぜかな。

 いつもなら真っ先に状況をかき乱すぐらいなのに。

「あぁ、そうだな。俺は今日お前のことを唯一の良心だと思ってる」

「照れますわ」

「あぁ、そうだな。だからとりあえずお前のその水着はやめようか」

 まともに見える。

 そう、まともに見えるだけであって俺の目はごまかせない。

「水着すげー光ってんだけど。それ完璧宝石の類だろ。それ沈むから。金とかすげー重いのにお前よく立てるよな」

「照れますわ」

「褒めてない。どちらかというと呆れてる」

「照れますわ」

「お前の照れハードルはものすごい低いな」

 成宮が泳げなくてよかった。あの金の量は普通に沈むだろう。

 しかし重力に逆らうように今は少しの動きも見せないし、成宮は平然としている。

 ほんと謎が多い奴だな。

「はぁ、もういいです。で、会長は・・・・・」

 寝ていた。ほんとに自由な人だ。

 ちなみに副会長は1人でとても楽しそうなのでほおっておくことにした。

 人間観察というか水着観察が大変気にいっているらしい。

「というか海に来たからと行って何かで遊べばいいというわけでもないだろうに」

 その証拠にほら。と伊藤先輩が指差す。

 まわりには寝ていたり、カップルで話し合ったりしている姿があった。

 遊んでいるのは子供とその親、それか元気のいい高校生カップルぐらいだ。

 まぁ、奥の方にさっき会ったたぶん先輩であろうお人が女の子と遊んでいるわけだが・・・なぜだろう。とても疲れているように見える。うん、まぁ、俺と同じ境遇、同じにおいがする。

「まぁ、確かにいざ海に来てみたら何もすることがないですよね、特に俺達泳げませんし」

「だろう。だったら僕みたいに漫画を読むのはおかしいことではないだろう」

「それはおかしいです」

 断言した。

 はっきりと言わせてもらったがそれはおかしい。

「先輩は悲しい。なぜ後輩がこんなにも冷たいのか」

「後輩も悲しんでますよ」

「なんだなんだ、なんの告白だ?」

「副会長!?いきなり話に入ってこないでください!」

 それに告白じゃない。

「いや、実は愛実会計が・・・」

「愛実家計?」

「なぜ間違える!俺はあなたたちの家計まで計算してられませんよ!」

「苦しいボケだがなかなかいいじゃないですか、副会長」

「伊藤君もなかなか後輩いじりが板についてきたな」

 青春漫画のごとく握手する副会長と伊藤先輩。

 なんだこれ。なぜ僕はここにいるんだとさえ錯覚させる言動。

 まるで夢の中に。

 妄想の中にいるようで。

「愛実君?」

「っ!お、おぉ、成宮どうした?」

「いえ・・・愛実君が心ここに在らず。という感じだったので」

「あぁ、すまん」

 俺はなぜか夢気分だったので意識をちゃんと取り戻す。

「さて、で何か思い出らしい思い出を作ろうということなんですけどね」

「そんな話してたか?」

 伊藤先輩につっこまれる。

 確かに何か違う気がするがまぁ、だいたいそんな感じだった気がするが。

「つったって何も持ってきてないしさ。何をするんだよ」

「それなんですよね・・・問題は」

「ふむ、私としてもちょっとそれは気になっていた」

「水着見てたんでしょうが、あなたは」

「じゃあ、これから私の家から家を・・・」

「家から家を!?お前は何を言ってやがるんだ!」

「ふあぁ・・・」

 と欠伸をする音がきこえた。

 はて?誰だろうかと後ろを見ると・・・

「か、会長?」

「みんなどうしたの?会議なら俺もよんでくれないと」

 起きたばかりでも笑顔を絶やさない。

 そんな男がいた。

「いえ、会議と言うか何か思い出を残そうかと・・・」

「思い出ねぇ・・・」

 あたりも暗くなってきている。時間がない。

 もう変える時間は刻々と近づいている。

「じゃあ、思い出作るか」

『え?』

 と全員が会長を見る。

「そろそろだから上を見てみ」

「うえ?」

 言葉の意味を理解できないでいた。

 だから俺はとっさに反応できず、上をむいてはいなかった。

 しかし。

 けれど。

 ある音で上をむかざるをえなくなった。

 真上ではなく海の方。その海の上の空。そこから。

 パァン。ヒュー、パァン!

 ヒュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・・・・パァアアアアアン!

「花火・・・?」

「こんなの漫画でしか見たことないぞ」

「会長・・・」

「す、すごいですわ」

「やることないだろうと思ってね」

 まさか会長がこの時のために用意してくれたのだろうか。

 それにしても大々的でかなりのお金がかかりそうだが・・・。

「あぁー、愛実後輩」

「俺の敬称ってすげぇ変わりますね。で、なんですか?」

「今回の海、花火つきらしいぞ」

 え・・・?

「いや、会長自分が用意しました的な感じだったじゃないですか」

「そんなこと一言も言ってないよ」

「えぇえええええええええええ!感動!感動を返して!」

「無茶言うなよ、愛実ちゃん」

「今までで一番不愉快な敬称!」

 最後には結局なオチが待っていた。

 まぁ、それでもそれでも。思い出にはなるんじゃないだろうか。

 海で花火を見ながら騒ぐことが俺達の青春だとしたら・・・。

 それはもう思い出だろう。

 まぁ、後は彼女でもいれば最高なんだが・・・。

「愛実君」

「どうした?成宮」

「私、愛実君のことが好きです」

 だからどうしてだろうか。せめて伏線や何かこう、恋愛描写を入れてほしい。

 これじゃあ、超展開だからとかそんなことはどうでもよく。

 俺はただ呆然としていた。

次からは主人公でいきます。


意外と時間がかかりましたが、頑張っていきたいです。


では。

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