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第41片 普通少年と【色花】少女の香り

「みなさん、ただいまですわ」

「お、成宮。帰ってきたのか」

「はい、みなさん元気そうでなによりですわ」


今日はなぜかまた生徒会が集まった日。7月。もう少しで8月になろうかという時。成宮が帰ってきた。


「愛実くんも元気そうで」

「おう」


成宮オカリナ。クォーターだが外見は完璧日本人だ。


「あ、あのー、み、皆さんおはようございます」

「あ、皆川先生」


皆川先生は生徒会の顧問だ。まぁ、よわよわしい先生ではあるがいい先生。


「あ、先生予算ができました」

「あ、ありがとうございます」


なぜ、先生がお礼を言うのだろうか。まぁ、いいやと思いつつふと気付く。あれ・・・?


「伊藤先輩」

「なんだ?」


漫画本を読んでいる伊藤先輩に話しかける。なにその非合法ちゃんって。表紙の女の子すっげー悪い顔してんだけど。そしてなんかすごい量の金持ってるんだけど。


「あ、その予算なんですけど・・・なおしました?」

「なおしたとはどういうことだ?」

「いえ、あの500万」

「あぁ、なおしてないぞ」


俺はふっと先生を見る。涙目のままかたまっていた。えぇーちょ・・・先生フリーズしてんだけど。


「先輩、先生フリーズしてますよ」

「僕は何も悪くない」

「今回は主犯あなたですよ。冤罪じゃないです」

「愛実。頼む」

「また俺ですか・・・」


そう言いつつもやらなきゃいけないような気がして先生に話しかける。


「あのー先生・・・」

「はっ!あ、あの・・・これ、はその」

「いえ、それはただのおふざけで・・・・」

(このままじゃ生徒になめられちゃう・・・。びしっと言わなきゃ・・・)


なぜだろうか。何かの覚悟を決めたような表情になる皆川先生。


「愛実くん!」

「は、はい!」

「こ、これは・・・」

「すいません、その別に悪気が・・・いや、悪気しかないですけど・・・でも」

「え、えっちな本は却下です!」

「先生」


うん、言いたいことは分かるけど500万の方にもつっこみをいれてほしいね。予算はもちろんやりなおし。久々にきた成宮にやってもらうことになった。というか本当に500万にはノータッチか。ここはエロ本を冗談で済ますことができ、500万はマジで冗談なんかじゃなくなる生徒会だ。


「会長、今日は何をするんですか?」

「いや、なんとなく」

「会長暇なんすね」

「みんなとも会いたかったしね」


ニヘラと笑う。会長は常に笑顔を絶やさない。笑い以外の感情を見たことがない。正直それは気持ち悪いとさえ思うのだがそれが会長。それ以外は会長でさえないとまで言える。


「私もみんなと会いたかったですわ、すわすわ」

「それはやめろ。絶対にだ」


尊敬しているからといってもやっていいことと悪いことがある。〇わすわと表記したいぐらいだ。俺ならちゃんと〇わすわと表記するだろう。まぁ、まずですわと言わないから意味がない。だからそれはウソだ。らしく言うと嘘だけど。これも嘘〇けどと表記したい。


「じゃ、じゃあこの予算案受け取りますね」

「はい、よろしくお願いします」

「先生、その500万なおしておいてくださいよ」


と言い先生の後を追うように俺は生徒会室から出ていく。


「おや、愛実くん、どこに行くの?」

「いえ、ちょっとそこの水道まで水を飲みに行こうかなと」


会長に聞かれたので俺は嘘偽りなく答える。


「ふぅん・・・そう」


ニコリと笑う。


「いってらっしゃい」


俺を呼びとめた意味はなんだろうかと思うぐらいに清々しいいってらっしゃいだった。会長の笑顔の裏のように会長の発言の裏もなかなか見抜けない。俺は探偵でもないので見ぬけても意味はないけれど。


「じゃあ、愛実くん、アドバイス」

「は?」


アドバイス?そんな話の流れだったか?それとも何か水道で裏技でもあるというのだろうか。右から3つ目の蛇口をひねると炭酸飲料水が出るとか。ないない。自分で思って自分で否定する。


「『お花』に注意してね」

「お花・・・?」


会長はまた笑いながらいってらっしゃいと言ってくれる。見た目だけは女みたいなので俺としても男にいってらっしゃいと言われた、気持ち悪いという理由から足が動かないのではない。お花?なんだそりゃ?


「は、はぁ・・・」


俺は曖昧に返事をしてその場を後にする。生徒会室から水道はかなり近いのでいってらっしゃいと言われるような距離ではない。俺はすぐに水道に到着する。蛇口をひねり水を飲む。もう1度蛇口をひねり水を止める。


「ふぅ・・・」


口を軽くハンカチでふいてからすぐ後ろを向き、生徒会室に直行しようとしたところ人とぶつかってしまった。背もまぁまぁ高く、顔を見てなくても美しいと感じる女の人だった。制服を着ている限りここの生徒らしいが俺は生徒会だからといって生徒の顔を全員覚えているわけではない。ましてや俺は1年生なのでまだ入学から3カ月ぐらいしかたっていないのだ。会長は生徒の顔を全員覚えてるらしいが・・・。


「おっと・・・」

「あらあら」


顔を見なくてもといったがそれは正しくない。顔が見れないのだ。扇子。それが彼女の顔を隠している。しかし長い黒髪は綺麗でそしてでかい髪飾りでひと房くくってある。そして次に俺が見たのは胸・・・って別にやらしい意味ではない。確かにでかいが大きさを確かめたのではなく校章を確認したかったのだ。


「あ、すいません」


校章の色は青。3年生だ。でも2年生だろうが1年生だろうがこんなに綺麗な人には謝らざるをえないだろう。


「いえいえ、いいのですよ。私も不注意というか不確かだったというか。それに人とぶつかるって少女漫画みたいで女の子の憧れでしょう。それを味あわせてくれたあなたにお礼したいぐらいですよ」


顔や声色から察するにこれは皮肉ではないらしい。顔もようやく見えたが確かに美しく、本当に恋をしてしまうんじゃないかというぐらいだ。しかし俺は冷静だった。


『【お花】に注意してね』


彼女の髪飾りは和服が似合うようなでかい【お花】の髪飾りだった。その他の扇子や顔、身長にスタイルどんなものをとっても和服が似合いそうな彼女。成宮もお金持ちだがこの人もお金持ちのような気品。


「えーと・・・3年生の方ですよね」

「えぇ、3年生の【色花】よ」


色花?下の名前か?名字ってことはあるまいと思ったが自分自身の愛実という名字を思い出し思考をやめる。まぁ、芸名みたいな名前だなお互い。


「いろ・・・はな・・・さんですね。それは本名ですか?」

「あらあら、ここで偽名を使ってどうするんですか?私は生徒ですし名前で嘘をついても意味はないように思えますけど」

「あ、そ、そうですよね」


クスクスと笑う。常に笑顔なのは会長と同じだがその裏に何かあるようにすら思わせないのは会長と違うところだ。


「あなたは?」

「えっと俺は愛実です」

「それは本名ですか?」

「・・・・・・・・」


なんか一本とられたみたいな空気になっている。クスクスと扇子で口を隠し笑う色花(仮)さん。


「名字です。俺の」

「あら、珍しい名字をお持ちなんですね」

「あぁ、はい」

「ではお会いできた嬉しさと一期一会のこの出会いに感謝してあなたにはこれを差し上げましょう」


その手には1本の花。俺は花の名前に詳しいわけではないので名前すらもでてこないが、しかしそれはとてもきれいに輝いていた。


「悩みごとがあったら私にお話しください」

「え?」

「そういう活動・・・というか部活をしておりますので」

「は、はぁ・・・」

「では御達者で」


そうして悠然と去っていく色花(仮)さん。俺はしばらくその場でたたずみながらも生徒会室へ戻ることにした。









「あらあら、これはこれは珍しい方とお会いできました」

「おかしいな、同じ学年だから会わない方がおかしいんだけど・・・」


と区切り。


「君が俺を避けていない限りね」


ニコッと笑う。丘森はその顔のままだった。ずっと。


「私はあなたを避けてはいませんよ、丘森会長もとい丘森くん」


対する相手【色花】もクスリと扇子を口で隠しながら笑う。


「君さぁ、俺の生徒会の後輩に手をだしたでしょ?」

「手?なんのことですか」

「さっき話していた男の子、愛実会計だよ」

「あらあらあの子は生徒会の子だったのですね」

「分かっていたくせに」

「ふふ」


ニヤリとクスリと笑う。


「じゃあ、最初に言っておこうかな」

「何をですか?」


ニコッと笑った丘森はそのまま目だけを元に戻す、いわゆる目が笑っていないという顔になる。


「生徒会には手を出すな」

「ふふふ・・・そう言うと思いました」

「それと君にはそのバカっぽい口調似合わないよ」

「あらあらどこまでご存じなのかしらこの会長さんは」

「俺は生徒会長だからね」


ニコッと笑い、色花も笑う。そして扇子を口の前からよけて・・・


「そうですか・・・生徒会長。生徒の長というだけあって私の動き、というより活動というより部活動には口を出さなければならないということですか」


色花は急に饒舌になる。というよりこれが本来言葉に強い色花の姿だろう。丘森は笑顔を崩さず。


「そっちのよくしゃべる君の方が俺はいいと思うよ」

「心にも思っていないことを笑顔で言えるあなたには本当に参ります。いえ、それはもうすでに笑顔などではありませんね。エガオという負の塊のようなもの。気味が悪いです」

「はは・・・よく言われるよ」


あぁ、と色花は仕切り。


「生徒会には手をだしませんよ。あなたが怖いですからね」


同時に扇子で口を隠す。


「戻っちゃった。残念だなぁ」

「また心にも思っていないことを」

「それは君も同じさ」


丘森は口に出す。この学校で唯一許された彼女の名前を。称号を


「君も饒舌になったほうが楽なんだろ?ね、この学校で与えられる2対の称号のうち1つを持つ【文系少女】の君にはね」

「ふふっ・・・」


この学校には本来2つの名前しかない。理系の最上位、頂点には【理系】の称号。文系の頂点には【文系】の称号を。妄想少女や氷結少女、雷瞬少女は先生の趣味でつけたものであり、学校に認められた称号ではない。この2つの称号をもつものは色々な場面で有利なのである。


「それよりも2年生にいると言われてる【理系少女】の方が私はすごいと思いますよ」

「ふふ・・・そうかもね」

「それにあなたも【生徒会長】でしょう?」

「俺の君ほどの力を持っていないからね。ちょっとはいいだろうけどあってないようなものだよ」


そう言いつつ丘森は考えていた。全ての生徒の顔を覚えている生徒会長は考えていた。


(この人に2年生に自称で【文系少年】を名乗っている男の子がいるってことは伝えない方がいいかな)


しかし色花はクスリと笑う。


「ではごきげんよう」

「そうだね」


その瞬間丘森は気付く。胸ポケットに花が入れてあることに。


「あははったく・・・・・あなどれない女だよ」


会長は生徒会室に戻る。自分の根城へ。自分の拠点へ。花の花粉が飛ばないように、胸ポケットの花はゴミ箱に捨てていきながら。




長くなりましたが久々の更新ということで許してください。


次も書き始めているのでまたそれまで。


でわ。

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