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第40片 文系少年とあじさい荘の青春

「高松ー・・・」

「え?あ・・・七実くん・・・」

「あのさ・・・そーめん飽きた」


スパーンっと俺の頭が叩かれる音がする。


「わがまま言わないの・・・まったく」

「山梨・・・もう少し優しい叩き方はできなかったのか?」


外からはベタにセミの鳴き声が聞こえてくる。それが暑さを加速させて俺やみんなをいらだたせる。しかし高松や緋色はなぜか変わった様子がない。むーどういうことだろうか。ちなみにあじさい荘1階の食卓での話である。


「七実くん・・・そのちょっと違う食べ方とかしてみたら?」

「え?」


と地面につっぷしていたがよっこらせと起き上がろうと前を見る。しかし立ち上がるどころかまた下を見てしまう。た、・・・高松。お前・・・それ見えるから・・・。


「あ、あぁ・・・そうだな」


と下をむきながら立ち上がる。あぶねぇ・・・夏になってうちのあじさい荘の面々もそれらしい恰好をするようになった。俺は半袖以外変わったところはないが、高松は7分のパンツに薄いシャツのようなもの。それは少し危ない格好なのだ。ちなみに数夏は長い髪を2つにゆったりしている。あとは薄いワンピース。緋色はなぜか夏服の制服だった。山梨もうごきやすそうな半袖短パンになっている。


「違う食べ方ねぇ・・・」


俺はそーめんの山を見る。そーめんが安いといって大量に買ってきた香織さん。しかしその後も贈り物とかでそーめんが増えていき、どうしようもない感じになっている。


「山梨なんかいいアイデアない?」

「そうだなーじゃあ七実くん目隠ししてよ」

「じゃあってなんだよ!会話が成立していない!」

「さて、目隠しもすんだところだし」

「おい、なんですんでるんだよ。描写を省略するな」

「あ、あの・・・戸張ちゃん・・・それは・・・」

「なぁに気にスンナ!男子高校生の胃袋は鋼でできてるんだよ。オートメイルなんだよ」

「それお前が言うことじゃねぇだろ。何がオートメイルだ」

「どうした、鋼の」

「鋼の!?」

「でも・・・・・それはちょっと・・・」

「高松!教えてくれ!俺のそーめんにいったい何がされてるんだ」

「えっと・・・ふぁさーって・・・」

「なんだよそれ!怖いよ、食い物の表現じゃないよ、ふぁさーって」

「これをこうすれば・・・」

「あ・・・あれ?なくなっちゃた・・・」

「何が!?」

「いいよ、目隠しとるからねー」


シュルと目隠しがとられる。目の前にあったそーめんのめんつゆはなぜか消えていた。


「逆に怖いんだけど」

「逆にっていうか・・・怖いよね・・・それ」

「さぁどうぞ、召し上がれ」

「いや何にもないから。致命的に何もないから」

「えぇー、あるでしょー」

「お前には一体何が見えているんだろうね」


俺は食卓から立ち上がる。


「あり?どこにいくの?」

「いや、普通にお手洗いだ」

「お手洗いだってーぷぷ、七実くん男なのにお手洗いってぷぷ」

「何に対する笑いだよ・・・」

「七実くん自体」

「それ悪口になってるからな、ちゃんと反芻してみろよ」

「反芻って牛がするやつだよね。草を飲み込んでは出してー飲み込んでは・・・」

「食事中だから!」


俺は走ってトイレにむかう。願わくばあの消えためんつゆは夢だったということでありますようにと。








「あれ?七実くん、遅かったから食べちゃったよ、七実くんのめんつゆ」

「別にいいけど・・・」

「ことりんが」

「た、高松!?大丈夫か!?」

「う、うん・・・意外と」

「そうか・・・でもあれ俺少し口つけてたけどいいのか?」

「!?」

「あ、ことりんにとどめの一撃を!」

「え?そんなに嫌なの!?いや、確かにいやだろうけど倒れることなくね!?」

「違うんだよ七実くん。鈍いから分からないだろうけどこれは嬉しい倒れ方なんだよ」

「倒れ方で最近は感情を表現できるとは驚きだな。てか嬉しいわけねぇだろうが」

「くっ・・・七実くんの心は岩よりかたい・・・ね、ことりん」

「いや、いいから助けてやれよ、高松顔真っ赤だぞ」

「誰かさんのせいでね」


そんな夏のお昼。夏休みはもう1週間過ぎていた。


「あれ?数夏いなくね?」


と俺はお昼を食べ終わったあと、気付く。1階で漫画を読んでいたらそういえばと思う。


「数夏ちゃんは・・・でかけてるはずだけど・・・」


と元気になった高松が答えてくれた。大丈夫なんだろうか。あんな倒れ方をしていたけど。


「でかける・・・ねぇ・・・」


するとガチャとドアの開く音がする。ん?と思い玄関の方を見ると数夏が帰ってきた。


「ただいまです」

「おう、おかえり」

「おかえりなさい」

「ふぅー暑かったです」

「お前髪長いもんなー・・・2つに結んでても暑そうだよ」

「でも・・・可愛いよ、数夏ちゃん」

「えへへ」

「そういえばお前どこに行ってたんだ?」

「え?普通に香織さんにおつかい頼まれて・・・」

「あぁ、そうだったのか」

「海へのチケットをゲットしました」

『なんでだよ(なんでなの)!?』


高松とつっこみがはもる。


「いえ、福引をやっていたもので・・・それでまさかの3等」

「マジかよ・・・」

「海へのチケットで、ファミリーチケットなのであじさい荘全員で行こうかなっとおもいまして」

「え・・・全員・・・」

「なんかすごいことになってきたなぁ・・・」

「じゃ、じゃあ、私は戸張ちゃんに伝えてくるね・・・」

「お、おう・・・じゃあ俺は柏部と緋色に伝えるか・・・数夏、お前は・・・」

「分かってますって・・・香織さんを誘ってきます」

「よし、俺の夢が現実に!」

「思考がだだもれなんですけど」


海へ行くことになった俺らは期待に胸をふくらませ、今から用意を始めるぐらいわくわくしていた。


「お前の胸はふくらまないけどな」

「う、うるさいです!」


夏の思い出を、求めて・・・。

連続投稿です。


次はまた別の視点になりそうですが付き合ってもらえれば幸いです。


でわ。

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