第39片 普通少年と混沌生徒会の青春
「生徒会長」
「なんだ、副会長」
「いえ、そのこの今年度の予算の話なんですけど」
「それは副会長の仕事ではなく会計の仕事のはずだが・・・。会計の成宮さんはどうした?」
「成宮さんは今現在、ハワイへ旅行中とのことです」
「ハワイ・・・?それは先日も行かなかったか?」
「はい、今回は夏休み5日目を祝うための旅行らしいです」
「そうか・・・で、予算でなにか問題が?」
「これなんですけど・・・図書室におく、漫画本も出費が50万になっているのですが・・・」
「これを担当したのは?」
「成宮さんがいなかったので、書記の伊藤くんに任せたんですが・・・」
「伊藤君」
そう言って会長は伊藤先輩を呼ぶ。
「これ、おかしくないか?」
「僕にはおかしいことなど見受けられませんが・・・」
「いや、ここ。これ、漫画本に50万て・・・」
「あ、すいません。間違ってました」
「やはりな。これからはちゃんと気をつけて・・・」
「はい、桁を間違えてました。500万が本当です」
「伊藤君」
「問題でも?そういえば御門副会長も何か本を足してましたよ」
「副会長」
「私は別におかしいものなど足してないです。・・・例えば・・・これとか」
「副会長」
「副会長。それはさすがに高校生の図書室には置けません。それは副会長自らが妄想していただかないと」
「でも面白いんですよ?」
「エロ本がか。副会長あなたは女性のはず・・・なのになぜこんな本を・・・」
「興味があるからです」
「というか伊藤君も。500万は高すぎる」
「じゃあ、成宮会計に頼むことにしますよ」
とまぁ、いつも通りの会話を繰り広げている我が桜浪高校の生徒会。お金持ちの成宮会計にオタクのくせになぜかイケメンな伊藤書記。エロ本大好きな御門副会長。そしてそれらを前にしてもあまり動じないちょっとずれた丘森会長。これがメンバーだ。
「はぁ・・・」
俺は溜息をつく。まだ無断欠席多しの幽霊部員ならぬ幽霊生徒会の飯島書記もいるのだが・・・。
「あぁ、愛実会計。君の意見をききたい」
「いえ、俺は・・・」
愛実凛汰。それが俺の名前。名字が名前っぽいが俺は男だし、気にすることはないだろう。それより参るのがこの生徒会の役員だ。夏休み。学校にきて何をするのかと思ったら・・・。みんなどこかおかしい。それがいつも通りっちゃいつも通りだけど。
「さぁ、愛実会計。こちらへ」
「分かりましたよ・・・」
俺は歩いて彼らの居る席まで歩く。俺は1年生だ。会長はもちろん3年生で、副会長は2年生。成宮会計は1年生。伊藤書記は2年生。幽霊生徒会の飯島書記は2年生という具合。3年生が1人しかいないめずらしい生徒会なのだ。
「で、なんですか?」
「これなんだが・・・」
「予算がすごいことになってるんですけど・・・」
「まだ君は1年生だからあまり頼めることではないのだが・・・予算を・・・」
「いや、まず、この漫画本500万もいらないっす」
「あ。でもそれ成宮のところから」
「金持ちでもそんなほいほい500万なんてもらえませんよ」
「そんなこともあろうかと小切手」
「あの野郎。ハワイ行ってる場合じゃねぇぞ」
500万は俺には重すぎる。1000円札でさえ払うのに抵抗をおぼえる庶民の俺とは世界が違うらしい。
「ていうか皆さん。夏休みなのによく集まれましたね」
連絡があったのは今日の早朝。夏休みなので用事があるかと思ったらみんな集まった。俺は金もないので何もすることがないだけなのだが。成宮と飯島書記はとりあえずはぶこう。
「俺が集めたんだから俺は来たが・・・」
と会長。
「僕も基本暇だから。あぁ、あと漫画本買うやつ僕が決めていいよね」
と伊藤書記。
「私も特に用事はないですし・・・」
と御門副会長。
「そうなんですか」
なんだこれ。本当に高校生の集まりだろうか。色恋沙汰などきいたこともないし。伊藤先輩はモテそうなんだけどなぁ・・・。という俺も何もないわけだが。外からはグラウンドで部活をする活発な声が聞こえてくる。あぁ、まさに青春といった感じだ。それなのに俺らは何をしているのだろうか。
「あ、私これから塾に行かないと」
「あ、そうなのか。じゃあな、副会長」
「あ、はい。では」
「・・・・・・・・・」
とうとう男だけになったんだけど。俺も帰ろうかなと思った矢先伊藤書記がいきなり話しかけてきた。
「愛実。お前8月7日って暇?」
「え?はい、まぁ、たぶん」
「会長どうですか?」
「俺も平気だがどうした?」
「いや、なんか海へ行くツアーみたいなのをもらったので」
「へ?俺ら3人でですか?」
「愛実。楽しいか?男3人で。チケットは6枚ある。成宮や、副会長に飯島を誘って行こうじゃないか」
「先輩・・・夏は海だって思えるだけの頭があったんですね」
「お前は僕をバカにしていないだろうか」
「じゃあ、副会長には俺から言っておく。成宮会計には愛実会計。伊藤書記は飯島書記に連絡を頼む」
俺はまさかの夏の思い出作りをする場ができてしまったことに驚く。これはまさか本当に青春の始まりなんじゃ・・・。いや、この面子じゃあ・・・いや、この面子は顔だけはいいからな、ちくしょう。もしかしたらまわりから見たら青春してる風に見えるかもしれない・・・いや、しかし・・・。
「そういえば飯島書記ってくるんですか?」
「あぁ、あいつはいつもめんどくさいか妹たちの世話で休むかのどっちかだから。海とか祭りとか好きだから来るんじゃねぇかな?」
妹たちの世話ねぇ・・・。てか飯島先輩って男だっけ、女だっけ?
「じゃあ、生徒会今日は解散。生徒会室の鍵は閉めておくから帰っていいぞ」
「はい、さようなら」
「海については後日メールで知らせますね」
そう言って俺らは帰宅する。はたから見たら青春なんてしていないだろうけど、俺はそれでいいとさえ思った。なぜだか心が躍るのはきっと・・・・・・・・・。
まさかのまた主人公がでない・・・。
次こそは出したいと思いますが・・・。
今回や前回とちょっと違った視点で書かせていただきました。
でわ。