第38片 恋愛少女と飛行少年の騒動
「あっ!今日日直だった!」
「ちょっと沙紀ー。朝ごはんはー?」
「ごめん!急いでるから!」
私は小森沙紀。ごく普通の女子高生だ。今日はたまたま遅刻してしまっているけど本当は朝も平和です。ほんとうに。私はドアを押し上げ、ようやく、朝の光を浴びる。とても気持ちがいい。しかしそんな暇はない。
「はぁ・・はぁ・・・急がないと・・・」
私は走る。この時この瞬間を。一生懸命後悔しないように・・・。ていうかなんか暑い・・・なんだろう。これ。
「あ・・・・・・・・・・・・・」
今日から夏休みでした。
〇
開始早々すぐ後悔することになるとは思わなかったけれど現在、私は学校にいる。なぜか引き戻すのも恥ずかしくて学校まできてしまった。家から近いし、別に疲れる以外はなにも無駄じゃない。廊下を歩き、自分がおかしいと考え始める。
「ほんと・・・何してるんだろう・・・私」
「あれ?小森?」
「え?あぁ!」
いきなり声をかけられ後ろを振り向くとそこには私の憧れであり、気になる人である先渕先輩がいた。メガネをかけていて黒髪の大人しそうな先輩だ。
「どうしたんだ、こんな時間に?」
「あ、いえ、その・・・なんとなくです」
「なんとなくで学校に?それはあやしいな」
先輩。先輩も十分あやしいです。部活はあるかどうかも分からない飛行部とかいうやつだし、学校にいる理由がまったくないです。
「まさか、登校日と間違えたとか?」
「は、はぁ・・・」
先輩ー!その手に持ってるの日直がつける日誌ですよね!?あんたもだろ!あんたもこれ絶対登校日と間違えたでしょう!隠そうとしてるよ、この人こんなにボロボロなのに助かろうとしてるよ。
「あ、じゃあ、先輩ももしかして登校日と間違えたとか?」
よし、助け舟をだしましたよ。これできっとお互い間違えたことを認めあえる関係に・・・
「あ、いや、僕は・・・・・ぶ、部活だよ」
隠し通そうとしてるー!もう無理だよ。やめてください、先輩。もうその日誌が証拠ですから。間違えたことを認めれば良い話ですから。
「いや、本当に部活さ、ほら。このペットボトルロケットを飛ばそうと思ってね」
無理がある!それは無理があります!なにそのペットボトルロケット。それでなにするの。飛ばすの?それを飛ばすために学校にきたんですか。
「へ、へーそうなんですか」
嫌われてはいけない。私はその一心で話し続ける。
「君も飛ばすかい・・・」
え?私もこのペットボトル・・・・・
「このペットボトルロケットスーパーエンジン型を」
「先輩!」
ここはつっこまずにはいられませんでした。
〇
「先輩・・・それ・・・」
「ん?」
スーパーエンジン、ペットボトルロケットつきみたいになってますよ!それペットボトルロケットの方がおまけみたいになってるんですが・・・。
「それ普通水とか使って飛ばすんじゃ・・・」
「だから水」
とペットボトルロケットを見せてくる。・・・・・・・・・ちょっと水で湿ってるだけじゃないですか・・・。
「じゃ、行くぞー」
「はい・・・」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・なにこの地響き。これ工作で作った程度のものじゃ絶対にでない音なんだけど。
「発射」
シュプーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
まぁ、そうなりますよね。一瞬でロケットが見えなくなる。海にむけてはなたれているため、人にぶつかる恐れはないらしいけど。
「いやー・・・清々しいね」
何が!?
〇
ほんとうになんで私はこの人のことが好きなのでしょうと疑問に思うことがあります。でも行動でもなんでもなくただ好きなのだろうと思う。
「いやーいい飛びっぷりだったな」
「はい」
だから私はこんなにおかしいことをしていても笑顔でいれる。
「あのー・・・先輩」
「ん?」
だから私は決心する大事な大事なこの言葉を。
「今日、日直だと思って学校きましたよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その後、エンジンの動力が足りなくて海に落ちる予定だったものが手前で落ちるときいたとき、人にぶつかりませんようにと神社で祈りました。
ちょっと違ったこの町の物語。
先生の騒動とまた違った騒動を書きました。
そんな感じになっております。
次は普通にみんなが出るかもしれません。
でわ。