表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/119

第35片 文系少年と妄想少女の改変⑤

小学生だった。初めて出会ったのは小学5年生。クラス替えで初めて見るような顔ばかりの中に彼女の顔もあった。僕は気にもとめなかった。それはそうだ。まさしく他人である彼女を気にとめるとすれば顔だろう。確かに可愛かった。しかしそれだけの話で小学生である僕には何も感じなかった。


「これ」

「ん?」


そんな彼女と初めて言葉をかわしたのもクラス替えしてから3カ月たったあとだった。それも意味のない理由で。ただ僕が消しゴムを落としたのを拾ってくれた彼女。長い髪は2つに結ばれることが多かった。

そんな彼女。


「これ消しゴム」

「あ、ありがと」

「どういたしまして」


そんな彼女は常に転んでいるような危なっかしい子だった。ひざまで隠れるソックスをいつもはいていたけれど、そのひざは絆創膏がはられていることを僕が知ったのは初めての会話から1週間後のことだった。保健係だった僕は転んだ彼女を保健室へと連れて行った。その後も教室に連れていってあげようと治療が終わるまで待っていた際に見たのだ。ついでにパンツまで見えてしまったが黙っておこう。


「じゃあ、教室行こう」

「うん・・・ありがとう」


僕らはこれでお礼を言いあったことになる。しかしこの時も僕はこの子のことをなんとも思ってはいなかった。むしろなんか消しゴムを拾われたことが気にくわないとさえ思っていた。


「本を読むの?」

「・・・・・うん、一応」


でも彼女は違った。そんな僕に対して他の人と同様に接してくれたのだ。よく考えれば別に避けてたわけでもないので当然ではあるのだが。


「ふぅん、すごいね」

「そうかな・・・みんなも普通に読んでると思うけど」

「あたしは本なんて読めないよ」

「そんなこと・・・」


少し嬉しかったのを覚えている。しかしただ褒められるのも恥ずかしいため・・・


「君にも読めるよ」

「あたしは・・・」

「君にだって目があって頭があるんだから」

「うん、そうだね。読んでみるよ」


僕はなんてバカだったのだろう。このすぐ1カ月後には彼女のことを好きになっていた。それはなんの理由もなくただ自分に優しかったからという単純な理由で、バカな男子だったというだけだ。しかし僕は知ってしまう。彼女が僕だけじゃなくみんなにかくしていたことを。それは些細なことだった。


「あれ?」


今度は僕ではなく彼女が消しゴムを落とす番だったのだ。しかし僕と違ったのは消しゴムが落ちても音がしなかったということだ。落とした高さが問題だったのかどうかは分からないが。小柄な彼女だからそれもありえるかもしれない。彼女は気付いてないのか僕が今度は消しゴムを拾う番だと思い、拾う。


「・・・・・」


声をかけるのが恥ずかしいため、僕は前にまわりこんで消しゴムを手に乗せ差し出した。それに気づいたのか彼女は、


「?どうしたの?」

「あ、いや、そのこれ・・・」


我ながら意味が分からない。だが消しゴムで気付くだろう。そう思っていた。けれど。


「?」

「えっと・・・その消しゴムお、落としてたから」


これで分かると思ってた。思っていたのに。


「消しゴム?どこ?」


彼女に消しゴムは見えてなかった。それだけじゃない世界が見えてなかったのだ。彼女は目が見えてなかった。それだけでも驚くべきことなのに。それなのに僕は。僕は彼女に。


『君にだって目があって頭があるんだから』


こんなひどいことを。僕は彼女に顔を合わせることができなかった。そして中学に行く時彼女は引っ越してしまい、僕が彼女と会うことはなかった。








「がっ・・・」

「あれれれ?どうしたんですか七実さーん」

「なんだよ・・・今の・・・」

「もしかしてー見えちゃいました?過去が」

「過去・・・・・」

「改変は進んでる。岸島数夏との過去の選別が始まりました」

「選別だと・・・」

「岸島数夏と関係のある記憶を消し、関係ない記憶は残す作業です。まぁ、その際に過去を見ることもあるらしいですが。あの反応。悪い過去でも見たんですか?」

「う・・・るせぇ・・・お前は誰だ・・・」

「黒曜石っていったでしょう。黒曜石は黒曜石なんですよ」

「・・・・・」

「そして岸島数夏の代わりです」

「!?」


ここで俺は黒曜石、もといメイドみたいな恰好をしている女の子のいる場所は数夏の席ということに。


「岸島数夏がいなくなったこの世界には穴埋めが必要です。それで生まれたのが黒曜石です。まぁ、そうですね・・・存在でいうなら岸島数夏は完璧に消えました。黒曜石がここにいるというのがまず証拠ですね」

「・・・・・」

「まぁ、勘のいい人なら気付きますが、岸島数夏を戻す方法」

「・・・・・」

「無言ということは気付きましたね。それは黒曜石を殺すことです」

「・・・・・」

「まだ黒曜石は妄想の状態。殺しても罪にはなりませんし、穴埋めである黒曜石がいなくなれば他に替えがなく、岸島数夏はもとに戻る」

「で、俺にどうしろと?」

「簡単な話です。黒曜石を殺したらどうですか?っていうだけですよ。さぁ、殺すなら殺しなさい。黒曜石はめんどうなので抵抗しません」

「断る」

「・・・ここで良い子ぶっても意味はないですよ。黒曜石以外見ていないし、その黒曜石もここで死ねば・・・」

「うるせぇよ。良い子ぶるとか関係ねぇだろうが。お前は今ここにいて、そして生きてる。それを邪魔する権利は俺にはねぇ。殺しなんかもってのほか。確かに数夏を戻そうとしたらお前は消えるかもしれない。でも俺はお前を殺さない」

「ではどうするんですか?」

「この世界に証明するしかねぇだろ。数夏がここにいたということを」

「いやでももう岸島数夏は・・・」

「いるよ」

「!?」

「いるさ、今でもあいつはいる。だからついてこい、黒曜石」

「ふっ・・・何やら面白いことになりそうですね」


俺は走る。簡単だったんだ。こいつが穴埋めとしてでてきたということは数夏はもういないということ。じゃあその世界に数夏がいたことを示せばいい。さっきまでは数夏すくなからずいた。でも今は違う。


「・・・・・ちっ・・・時間がねぇか」

「忘れそうなんですか?」

「・・・・・」

「恥じることじゃないと思いますよ。あなたは一番頑張ったのですから」

「・・・・・バカ野郎が消えるんじゃねぇぞ」


時間はもうない。そのために走る。ある目的地へいくために。

1カ月ぶりです。


遅くなりましたがとりあえず。


これは日常を主にしたいので今書いているような日常以外のものはすぐ終わると感じるかもしれませんがよろしくお願いします。


でわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ