第22片 理系少女と文系少年の7月7日
朝。あれからの翌日。私はあじさい荘の自分の部屋で目覚めました。ここで本当に戻ってきたんだなと実感します。というわけで岸島数夏です。今回の語り部はなぜか私です。・・・休みたいんですけどしょうがないですね。
「ではもう1階におりましょうか」
そういって着替えます。さ、サービスシーンがいつもあると思わないでくださいよ!描写なんてしません!普通に恥ずかしいです!
「さて、髪をリボンで・・・と」
寝るときはさすがにはずします。そしてこれで準備完了。今日の服はゆったりめのワンピース。いつもストッキングというかタイツみたいなのをはいているので今日は生足で。・・・・・生足って表現なんかえっちぃですね・・・。
「よし!」
鏡を見て身だしなみを整える。そして一階におります。ちなみに洗顔も歯磨きもすませてますよ。部屋に洗面台があるんですよ。豪華ですねー。
「みなさん。おはようござ・・・い・・ます・・・?」
「お、岸島。おはよう」
「あぁ・・・はい」
「お!数夏ちゃん!おはよー」
「お、おはようございます」
「・・・・・・・・・・・・・・・おはよう」
「はい・・・おはようです」
「おはよう・・・よく眠れた?」
「はい。よく眠れました。おはようです」
いや、あいさつはいいんですよ。あいさつは。問題は寮の1階がおかしい。確かに今日は休みですけどこの状況はなんでしょうか。
「あの・・・みなさん?この飾り付けは・・・?」
「ふふふ!よくぞ気付いた!岸島・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『誕生日おめでとー!!』
7月7日。今日は私の誕生日。
〇
「え・・・と・・・。まだ信じられないんですけど。昨日は何もありませんでしたよね?」
「あぁ、昨日は忙しかったしな。作業が夜中まで続いたんだぜ」
「じゃあ、寝る時間は・・・?」
「だいじょうぶい!気にしないで!私たち眠くないから!」
「でも・・・」
「・・・・・・・・・今日はお祝い」
「そうだよ。主役がそんな顔してどうするの?」
「でも・・・申し訳なくて・・・」
昨日は私のために頑張ってくれた。戦ってくれた。だからこそ今日は休むべきで・・・。こんなことに睡眠時間をとられちゃいけないはずなのに・・・。この飾り。折り紙の輪をつなげたやつにでかい看板。それに・・・笹?
「申し訳なくないぞ。親友より上。そんな俺たちだろうが。これも好き勝手にやらせてもらったんだ」
「七実さん・・・」
「そのかわり!私の誕生日の時はよろしくね!」
「・・・・・・・・・・私も」
「うん・・・私も」
「もちろん俺もな」
「私も忘れないでよ」
「あれ?めっきり出番がなかった香織さん」
「誰のせいだというの!?あなたたちが勝手に行動するから・・・」
「今はお祝いですよ。説教は後で。というわけだ岸島」
「・・・・・はい・・・・・はい。ありがとうございます」
私はまた泣きそうだった。でもお祝いだから。泣きませんよ。あのあと七実さんに泣き虫って言われ続けたんですから!2時間ずっと!それに抱きついてしまいました・・・。あとからきますね。これ。なんでしょう?このちょっと嬉しい気持ち。
「じゃあ!ゲーム始めます!」
「おー!」
「ゲームですか?」
「・・・・・・・・そう。皆が一人一人ゲームを考えた」
「それをやるんだよ」
「じゃあ!私1ばーん!じゃじゃじゃ・・・・じゃーん!」
そしてどこからか用意したフリップボードを戸張さんはだします。
「頭に『大人』ってつけるゲーム!」
『は?』
全員はてなでした。これみんなそれぞれ何をやるのか知らないのですね。
「これは名詞の最初に『大人』ってつけてエロい言葉にするというゲームだよ!」
「最悪じゃねぇか!」
「・・・・・・・・・楽しそう」
「緋色ちゃん!?私は・・・その・・・」
「これ普通に恥ずかしくないですか・・・?」
「勝ち負けはねー・・・。エロくない意味になっちゃったら負けー。はいスタート!」
「強引!」
というわけで始まっちゃいました!戸張さん、七実さん、緋色さん、私、小鳥さんの順番です。
戸「じゃあ私から!無難に大人のゲーム!」
七「無難ってなんだよ!・・・・・じゃあ・・・大人のサンドイッチ・・・」
緋「・・・・・・大人のボール」
私「緋色さん!?それは洒落にならないレベルでは!?・・・お、大人の・・・風船・・・」
小「数夏ちゃんも十分洒落にならないよ・・・。その・・・大人の・・・もぐら」
戸「うーん、じゃー・・・大人のミルク!」
七「おーい!お前なんつー爆弾投げてきやがる!じゃあ・・・大人の橋」
緋「・・・・・・大人のジュース」
私「緋色さん・・・。えっと・・・大人の氷」
小「お、大人の布団・・・」
戸「大人のからし!」
七「大人のふり〇け」
戸「あうとーっ!」
急にストップがかかりました!
「大人のふり〇けって本当にあるじゃん!」
「でもそれなら緋色の大人のジュースだってお酒のこと言うじゃないか」
「これは勝敗がつきませんね」
「うん・・・恥ずかしいだけで面白くないしね」
「えー!なんだよーいい案だと思ったのにー」
というわけで次は・・・
「・・・・・・・・・・私」
「お、緋色か。一体何をするつもりなんだ?」
「・・・・・・・・・大人のゲーム」
「おい!みんな緋色をおさえろ!」
そうしてみんなで緋色さんをおさえます。私は緋色さんに何をされるところだったのでしょうか・・・?
「・・・・・・・・・冗談」
「だろうな。じゃあ、はやく教えてくれよ」
「・・・・・・・・・・しりとり」
「えー!?ふつーじゃん!ふつー」
「さっきのよりはマシ・・・・・かな?」
「・・・・・・・・命がけの」
『命がけの!?』
恐るべき補足をしました。これは危険な臭いがしますね。というかお祝いとか言ってたのにテンションがお葬式です・・・。
「ま、まぁ!でも無難だよな!やろうぜ」
「・・・・・・・・・・・・・失敗したら命はない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
みんな汗だらだらです!なんでしょうこれ!サバイバルなんですか!?
緋「・・・・・・・・しりとり」
七「え!?始まったの!?・・・・・・・りんご」
戸「ごりら!」
小「ラッパ」
私「パンダ」
緋「・・・・・・・・・・・・・思いつかない」
みんな『語彙が貧困!』
というわけで緋色さんがアウトだったんですが・・・・。
「・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・包丁貸して」
「高松。全部の包丁をかくしてくれ」
「うん」
というわけでこの30分後ようやく緋色さんを説得でき、次へといきます。
「じゃあ、私だね」
「お、高松か」
「楽しみです!」
小鳥さんは普通ですからね!きっと面白いゲームに違いないです!
「ババ抜きなんだ」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
え・・・・・・・・?普通のなかの普通。普通の満点をだしてきました。さて、これはどうすればいいんでしょうか・・・。
「み、みんなー!やろうぜっ!」
『お、おー!』
このあと特に描写の必要ない状況が続き。普通に終わりました。えぇ・・・楽しかったですよ!
「じゃあー次は俺だなー」
「自信満々だねー!」
「・・・・・・・・・期待」
「うん。なんだろ?」
みなさんの視線が集まる中七実さんは声を張り上げて・・・
「プレゼントゲーム!」
『?』
本日2度目のはてなです。プレゼントゲーム?なんでしょうか?
「このゲームはプレゼントを岸島に渡すゲームですまる」
「あぁー!ずるい!汚い!まるじゃないよ!」
「・・・・・・・・・・・卑怯」
「うるっせー!ここからは俺のゲームだ!口出しすんな!」
「・・・まぁ、一理あるね。私から」
そう言って私にプレゼントをくれる小鳥さん。
「え?いいんですか?」
「うん」
「じゃあ、開けさせてもらいますね」
マグカップでした。
「普通の中の普通だな!」
「七実くん!失礼だよ!」
「は!しまったつい!」
「普通だなんて照れるよ・・・」
「それで照れるの!?普段なんて言われてるんだ!」
普通で照れるってどういうことですか・・・。
「あの、ありがとうございます。使わせてもらいますね」
「うん」
次は緋色さんらしいです。
「・・・・・・・・・私のプレゼントは私」
「はいはいはい!みなさん手伝ってー」
というわけで次は戸張さん。
「これどーぞ」
「ありがとうございます・・・って」
「どう?」
「どうもなにもバ〇ルスライムじゃないですか!」
「うん。ス〇イムが気に入らなかったみたいなので」
「そもそもほしいって言ってませんけど!」
「うん、まぁ、照れ隠しだよ。私なりの」
「照れ隠しで異世界にまでいっちゃうんですか!」
「メタルはごめん・・・無理だったよー」
「いやいや!さもメタルが欲しいって言ったみたいになってますよ!」
「ふむ、私のプレゼントも喜んでもらえたし。次は七実くんだね」
「話が勝手に進んでますね」
でも私のためなんですもんね。バ〇ルスライムをしまう容器的なものが欲しかったのでバケツを用意しました。いや、確かに失礼ですけど。でも他にどうしろと・・・。
「じゃあ、俺だな。ほい」
「あ、ありがとうございます」
そう言ってくれたのはリボンでした。猫の肉球模様のリボン。
「・・・・・・・」
「あれ?無反応?」
「いえ、その七実さんなら肩たたき券やらお手伝い券あたりをくれるのかとばかり」
「小学生!?」
「意外と普通なものだったんで驚いちゃいました」
「その発言が俺を傷つけてると知ってくれ」
「でもおふざけなしで驚きました」
「フォローするんじゃねぇのかよ!さらにおいうちだった!」
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「お、おう、そか・・・」
なんか七実さんが照れています!めずらしいですね・・・。
「それとまだあるんだ」
「?なんでしょう」
そこにあったのは・・・
「猫耳・・・。猫の手に猫の足。猫のしっぽ・・・・?」
「おう!」
コスプレ衣装でした。え?どういうことですか?これは私にくれるのですかね?なんかもっふもふなんですけど。これ明らかサービスシーン狙いですけど。
「俺的に萌えを表現してみた!」
「・・・・・・・・・はい。ありがとうございます」
「なんかテンション下がってる!」
最近変態少年の名前が似合ってきた七実さんです。それぐらいしょうがないですし、まだだいじょうぶな方でしょう。
「着ないのか?」
「いえ、その・・・もうちょっと大事な場面で着ようと思います」
「そうか」
はい。着るときはあるのでしょうか。分かりません。なんかまわりの皆さんが「私たちに相談した結果がこれかよ・・・」と呟いていますがなんのことでしょうか?
「でもリボンはつけさせていただきますね」
「お、そうか。ってかなり似合うな」
今、結んでいたリボンをとり、肉球のリボンを結ぶ私。今日はこれで過ごしましょう。なんか予想以上に嬉しいんですが、これが誕生日パワーというものですか!
「みんなー、ケーキ焼けたよー」
その香織さんの一言でみんな食卓の方に急ぐことにしました。
〇
「香織さん、ありがとうございます」
「お礼なんていいのよ。ささ、食べて食べて」
『いただきまーす』
そうしてケーキを口に運びます。生クリームといちごのシンプルだけど最強の組み合わせ・・・。
「おいしいです!」
「そう?よかった」
「俺、甘いもの苦手なんだよなー」
「じゃあ、あなたの誕生日には塩を作ってあげるわ」
「やっほーぅ!ケーキ大好物ー!」
手のひら返したような変化ですね。
「まだイベントはあるんだよ」
「え?」
もうすっかりイベントは終わりだと思ってました。
「はいこれ」
「これは?」
縦に長い紙切れ。私のはピンク。緋色さんのは赤。戸張さんが緑で小鳥さんが黄色。そして七実さんのが黒色です。
「今日は七夕でもあるんだよー。ってことで誕生日と七夕合体企画!誕生日短冊!」
「あの笹はそのためにあるんですか・・・」
すみっこにある笹が気になってしょうがなかったんですが・・・。この短冊を結ぶんですね。
「では、お前らー!願い事書こうよー!」
『おー!』
「おいおいおいおい!」
七実さんが止めます。なんだっていうんでしょうか?間の悪い・・・。
「俺の短冊黒なんだけど」
「で?」
「で?じゃねぇよ!書けねぇだろうが!」
「白色使えば?」
「新しい紙はないのか!」
「むー、わがまま。ほいこれ」
「さんきゅ・・・っておい!なんでこげ茶なんだよ!」
「え?イメージ?」
「また中途半端な色だから反応がとりづらいわ!」
「わがままだなー・・・。ほい」
「金色!?」
「金箔」
「無理!重い!俺には重いよ!どんだけ金かかってんだ!」
「はいはい」
「青か。定番でいい感じだな」
そうやって時が過ぎていく。みんな真剣に書いているようで何もしゃべりません。もくもくと書き続けてます。15分後。みんなが書き終わりました。
「さーて笹をベランダにだすぞー」
「七実くんお願い」
「だろうな・・・よっと」
文句をいいながらもベランダに運びます。ベランダというか庭ですね。意外と広い庭。食卓から庭に出れるようになってます。そこに出て笹を立てます。
「さー!みんな飾れー!」
そしてみんな思いのつまった短冊を飾ります。ふむどこの位置がいいでしょうか?
「岸島、ここに飾れよ。俺のとなりだけどさ」
「あ、はい」
七実さんが誘ってくれたので飾らせてもらいます。なかなか綺麗ですね。笹。
「まだお昼だけど綺麗だよねー」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん」
「ほんとだね」
「そうだな」
「はい!綺麗です!」
風のおかげで笹がなびく。それがどこか気持ちよくて・・・そして心地よかったです。
「私は帰ってこれたんですね」
「そうだぞ。帰ってきたんだ。いつもどおりの日常に」
「また私たちと一緒だね!」
「・・・・・・・・・・・・これからもずっと」
「うん、よろしく」
「はい!」
ここが私の場所。それがわかります。みなさん暖かくて・・・そして安心できる。あの豪邸なんか比べ物にならない。ここがいい。でもあじさい荘も寮にしてみればかなり広いんですけどね。
「なぁ、岸島は何を書いたんだ?」
「え?」
「短冊にだよ」
「あぁ」
「私はねー!世界平和!」
「・・・・・・・・・・・・恋愛成就」
「私はいつも通りを願ったよ」
「俺は笑顔だな。みんな笑顔」
「私は・・・・・」
「私はみんなとずっといられるように」
「ははっ。なんか普通だな」
「な!いいじゃないですか!」
「うむ、いい願い事だね」
「・・・・・・・・気にいった」
「私も」
「ほら見てください!」
「分かったよ」
そして私は言いたかったことを言います。
「あのもう1つ願い事があるんですけど・・・七実さんに」
「俺に?なんだ?できることならなんでもいいぞ」
「あの・・・・・・」
「ん?」
決意をかためて・・・・・。
「数夏って呼んでくれませんか?」
「は?はぁああああああああああああ?」
「いや、そんなに驚くことじゃないと思うんですけど・・・」
「あぁ・・・そうなんだけどさ・・・恥ずかしいな」
「なにいってんだいー!豪邸で叫んだでしょうに」
「あれはノリだろうが!」
「・・・・・・・・・・・・呼んであげて」
「うん。呼んであげて」
「あ・・・あぁ・・・・・・」
「その・・・数夏・・・・・・・・」
「ふふっ」
「なっ!なんだ!なんで笑うんだよ!お前が言えって!」
「いえ、嬉しいんですよ。ふふっ」
「おい!おいぃいいいいいいいいい!」
私は戻ってきたこの場所に。そして私は17歳になりました。
「身長は12歳だけどな」
「いらないことを!」
こんな感じですが楽しいです。
誕生日編終わりましたー!
というわけで次からバカな日常が始まるのでお気をつけてー!
でわ