第1片 理系少女と文系少年の出会い
「手伝ってやろうか?」
俺は気がつくと女の子に声をかけていた。桜舞うグラウンドでいきなりナンパ!?とか誤解されても困るので説明すると数学が気にくわない。それだけ。
「手伝う?」
聞き返すなよ。聞き返すほどの内容でもないだろうが・・・。
「何をですか?」
「いや、だからクラス分け表が見たいんだろ?だから手伝ってやるって」
「だいじょうぶです。今から方程式を使って・・・・」
さっきは関数って言ってたのに。
「そんな方法よりいい方法がある。俺が力技で前へ行くからお前の名前も見てきてやる」
「なんか軽く芝居がかった口調ですね・・・まぁでもいい考えなんでぜひともお願いします!」
芝居がかってるかな?俺の悪い癖だ。読んだ本の影響をかなり受けるため、口調が移ったりするのだ。最近は青春ものの小説を読んだなぁ。ということで遅れました文系少年こと七実未空です。
「で、名前は?」
「岸島数夏」
「どれ・・・・・・今いってやるからな・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・でいつ行くんですか?」
「うっうるせぇやい!」
めっちゃ怖気づいてました。普通に人が怖い!
「まぁ、期待はしてませんでしたから私が先に分かっちゃいましたよ」
「何がだ?」
「クラスです」
「何言ってやがる。見てもいないのに・・・・・」
「確率です」
「は?」
「私の前のクラス、行動、仲のいい友達とか含めて計算すると確率的に2年2組ですね」
「いやいや何言ってんだかまだわからないよ」
「ちなみに今、集まってるクラス分けの表に集まっている人数は982人。それに人々の身長。先ほどまでの人がとどまっていた時間を計算したころあと2分程度であなたにも見えるようになります」
「・・・・・・・」
絶句。こいつは頭が悪い。
「お前はバカか?」
「しっ失礼なのですっ!バカなんかじゃないですよ!」
「そんないくら数学が得意だからといってそんなの求められるわけがないし、できても暗算でできるような内容じゃない」
「むー・・・・。失礼な人ですね!あなたは今日から失礼な人って名前です!
「却下」
「私にちょっかいだしてくる人」
「なんかセクハラしてるみたいじゃねぇか」
「私にいたずらする人」
「洒落にならんぞ!それは!」
首をかしげている。意味がわかってないのか。健全な高校生男子であるならばいたずらの単語も卑猥な言葉に変えられるんだ。油断するなよ。
「もうそろそろ2分後ですね。では私は教室に行きます。もう会うことはないでしょう」
「おい!見なくていいのか?」
「見なくていいのです!当たってるんですからー!!!」
といって走り出してしまった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。2分後人ごみはマシになっていた。
「マジかよ・・・・」
そして2年2組には岸島数夏の字が。
「あーあ・・・・当たってやがる・・・・・」
ん?と気付いたことがあった。あいつは一つだけ計算を間違った。それは文系少年だからできたのだろうか・・・・・。いやあの理系少女は異常だ。たまたまだろう。
〇
「お前一生会うことはないって言ったよな」
「い、言いましたよ」
「へー、ふーん」
「いっ言いたいことがあるのなら言えばいいのです!」
「いや、お前の計算外れたなぁってな。俺とおまえは同じクラス。会うに決まってんじゃねぇか」
「私の計算をはずすとは・・・・・人外か何かですか?」
「人内だ」
「その表現もおかしいですが・・・・・困りましたね・・・・」
「何がだ?」
「いえ、なんでもないです」
ここは2年2組教室。これから始業式だ。まさかのこいつと同じクラスだとは思わなかったが。2年1組と2年2組、2年3組の3クラスは理系と文系が混ざっているらしい。だから理系のこいつとも一緒になれた。
「それにしてもすげぇな。計算」
「当たるとは言いましたが、所詮計算です。外れることだってあるんですよ」
「文系の俺には信じられないね。普通の計算ですら危ういのに応用なんてできるかよ」
「ってことは数学は点数悪いんですか?」
「あぁ」
「何点?」
「なんで言わなきゃならねぇんだよ!」
「私に毎晩いたずらしにくる人と呼んでもいいのですか!?」
「39点・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「無言はやめてくれる!?」
「いえ、無言というか声が出なかっただけですよ。驚きです人類にもいたんですね、数学できないひと」
「お、お前だって古典、現代文は全然なんだろ!」
「そっ!そんなことないです!」
「何点?」
「いいたくありません」
「お前のことを変なあだ名で呼ぶぞ」
「私は無視しますから別にいいですよ」
「・・・・・・・・・・」
無視されてるのにあだ名で呼びつづけるバカになるのは勘弁。だがどうしても知りたい。この気持ちどうすれば・・・・・。
「じゃあ、教えてあげましょう」
「地の文を読むなっ!」
こいつが人外じゃないかと思う時が多々ある。
「49点-10点+1点-3点です」
「きったねぇ!そんな早口で言われて計算できるか!」
「私にはできます!あなた・・・えとえと・・・・・」
「名前言ってなかったか?俺は七実未空」
「なんか女の子みたいですね」
「うるせぇな・・・・・・」
「七実さんはおもいっきり文系ですね」
「まぁ・・・な」
「どうしました?」
「いや、岸島は完璧な理系だな」
「そうですよ!日本語なんて分かりません!」
「日本語は確かに難しいよな。日本人だって使いこなせてないし・・・」
「日常の会話でさえ危ういですよ。もっちり・・・・・」
「もっちりってなんだよ。まったく・・・って言いたかったのか?ボケとしては雑だし、ボケじゃなかったら病気だ」
「おーい、始業式始まるぞー」
というわけで俺の新しい生活はこんな感じで始まった。女子は文系の方が多いのにこいつは理系でいいのだろうか。俺は苦痛だった悩み。仲間はずれにも似た感覚。それを感じてないのだろうか。
「ったく面倒だな・・・・・」
そういいつつ廊下に出る俺。校長の話とかきいてられねぇよ。見た目通り子供っぽいやつなのかな、岸島は。だとしたら深刻な悩みはないかもな。でも俺は思う。こいつは何か抱えてるって。悩みがある高校生の勘だけどな。
「あ、いい忘れてました」
「ん?」
「あのですね・・・さっきはありがとうございました」
「は?何がだよ」
「私のためにクラスわけ表見てくれようとしたじゃないですか」
「あー、でも失敗しただろ」
ずーんというような効果音が流れそうなほど落ち込む俺。
「あっ!いえ!その・・・・・助けようとしてくれた気持ちで十分なのです。ありがとうございました」
笑顔でいう岸島。でもそれはどこか寂しそうで、そして俺はそれに見とれてしまった。こいつ顔だけは可愛いからな。うるさいけど。バカだけど。アホだけど。
「あぁ、どういたしまして」
さてこれから戦うべく校長の話にむけて気をひきしめる俺だった。
はい、こんにちわ、花澤文化です。
日常話は書いてて面白いですね。
出会いが終わったので次からようやく日常の中の日常に入れます。
でわ