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第17片 理系少女と文系少年の7月7日 残り6日

7月1日。学校休みの午前中。あじさい荘一階にみんなが集まっていた。もうそれはどうしようもないぐらいしょうがなかった。もうしょうがないとしか言えない。七実未空ななみみそら今、最大の!人生の山場かもしれない!この時!俺は!


「ぐわぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「またババひいたなー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・態度でバレる」

「その・・・まだチャンスはあるよ」

「その慰めが一段と辛い!」

「ていうか最初の語り部なんですか。あなたの山場はババ抜きだったんですね」

「・・・・・・・・」


いや、言葉のあやというかね。うん。何もここがピークとは言ってないんだよ。ていうかなんでお前ら全員制服なの?なんで?俺のまわりには私服を選ぶのがめんどくさい連中しかいないんだな。


「というか岸島、どうした?」

「え?何がですか?」


俺は理系少女の岸島数夏きしじますうかに話しかける。最近なんか元気がないのだ。どうしたというのだろうか。


「悩みごとか?」

「ち、違いますよ。私は元気です!」

「そうか?最近お前暗いけれど」

「私、根は暗いんですよ」

「それは嘘だとわかるぞ」

「いつもは明るく接してるだけなのです」

「急に重い!というかあお前はあきらか素で明るいだろ!」

「いいえ、暗いですよ。七実さんの心ぐらい」

「俺が病んでると!?そういいたいのか!」

「違いますよ。洞窟のように空っぽって言いたかったんです」

「そうか・・・いやいやいや!よくないから!フォローじゃなくてさらに俺を追い込むな!」

「いえ、そのすいません」

「え?あれ?」


やっぱりいつもの岸島じゃない。普通ならまだつっかかってくるはずだ。


(おい、岸島の様子おかしくないか?)

(そうかにゃー?ん・・・確かに少しテンション低いかもだけれど)

(・・・・・・・・・・・・・・心配)

(何かあったのかな?)


緊急小声会議終了。


「やっぱりお前おかしいよ。もしかして『ダニエル』なのか?」

「まだその恥ずかしい名前使ってるんですか?」

「いいだろ、別に!」

「いえ、別にそういうわけでもないです。普通ですよ、普通」

「自己申告って信じてもらえないんだぞ」

「・・・・・・・・・・」

「無理に話せとは言わないけどさ・・・やっぱり心配なんだ。俺もここにいるみんなも」

「・・・・・・・・」

「お前はもうここの住人であり、大切な仲間なんだから。だからって話したくないことはあるだろうがな、でもその傍らでお前を心配してる人がいることを忘れるな」

「はい・・・」

「俺らはいつでもなんでも力になるさ」

「もちろんだにょー」

「・・・・・・・・・・・・あたりまえ」

「うん、私も」

「みなさん・・・ありがとうございます」


久々に笑った顔を見た。しかしそれは喜び、楽しみ以外のなにかも含んでいるようだった。


「しかし、七実くん。どさくさにまぎれてトランプを片づけないでほしいんだけど」

「・・・・・・・・・・・・・・卑怯」

「は!?まだ終わってなかったのかよ!」

「あれ?そういえば香織さんは・・・?」

「あぁ、買い物とかって言ってましたよ」

「ずるいぞー」

「いいだろう、別に。ババ抜き以外にもあるだろうが」

「でもでも、もう少しで上がれそうだったのにー」

「・・・・・・・・・・私も」

「だってこれで何回目だと思ってんの!?それで全敗してんだぜ!心が折れない方がどうかしてるよ!」


いつもの休日。いつものメンバー。そこで過ぎていく時間、プライスレス。いいこと言ったよな。


「そういえばあじさい荘の最後のメンバー紹介してもらってませんけど・・・」

『あぁ・・・・・』

「なんで皆さんそんな微妙な反応なのですか!?」

「いや、そのな。岸島。残り1人は今ここにいないぞ」

「あじさい荘にですか?出かけてるとか?」

「あー、というより日本にいないかも」

「日本に!?」

「おかしなやつだからねー、私たち以上に」

「・・・・・・・・・・・・・・・私も最初会った時驚いた」

「戸張さんと緋色さんがそんなに言うなんて余程すごい人なのですね」

「おや?いま若干失礼なこと言われたような」

「気のせいです」

「そうかなぁ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・数夏が気のせいって言ってるんだから気のせい」

「緋色っちは相変わらず数夏ちゃんに甘いねー」

「というわけだよ・・・その・・・その人も悪気があるわけじゃ・・・」

「だいじょうぶですよ。私が来たのはいきなりでしたし、しょうがないです」

「ま、そのうち紹介してやるよ」

「七実さんよろしくお願いします」

「おう」


ほんと残り一人は変わったやつだからな・・・。そういえばもうお昼か・・・。


「腹減ったな」

「ぎゅるるるーなんだよー」

「・・・・・・・・・・・・・・お腹減った」

「確かにお腹と背中がくっつきそうです」

「岸島。それはお歌の中だけで実際にはくっつかないんだよ」

「なんでそんな暖かい目で見るんですか!?子供扱いしないでください!」

「じゃ、じゃあ・・・香織さんもいないし、私が作っちゃおうかな・・・」

「おー!いいじゃない!小鳥ーんのお昼食べたいよ」

「・・・・・・・・・・・・・・小鳥おいしそう」

「こらこらこらこら!お前は百合に走るな!」

「私も気になります!お昼ご飯!私も手伝います!」

「じゃあ、今から作るね」


そういって高松と岸島は台所へ行った。高松の料理かー。楽しみだなー。女の子の手料理を食べるのは初めてだし。・・・・・・・・・・・・・・・香織さんはノーカンね。



「ほほう。昼ごはんか。私もまだだったな」



「そうでしょ。高松の料理なんて楽しみで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『ってえぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!!』


そこに立っていたのは180はある身長とはかまを着たおじさんだった。髪は黒くオールバックにしている。一目でわかる。こいつは知らない人だと・・・・・。当然だよね。


「おや、反応が遅いな。これはどこかの神経が腐っているのかね」


なんだこの癇に障るような話し方。いちいちカチンとくるな。


「あなたこそインターホンが見えなかったんですか?ちゃんと押さないと。小学校のころ習いませんでした?ピンポンダッシュは死ぬ気でやれと」

「七実くん!?ふざけてない!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・いや、本気だと思う」


そう俺は久々にいら立っていた。だってなんか腹立つし、不法侵入だし。というか誰だよ。


「ところで目がやられてしまってる、あなたはどこの誰なんですか?」

「おや?目には自信があるんだがね」

「インターホンも見えない目はいらないですよ」

「そうか。せっかくひまわりが咲いているんだがな」

「ベッ〇ーか!!」


なぜ知らない人相手にツッコんでいるのだろうか。不思議でしょうがない。


「そして私は誰か?聞いていないのか?」

「は?なんのことです?」


そうするとそのおじさんは煙草をとりだし火をつけて吸い始めた。


「私はな・・・・・・・・」



「お父さん・・・・・」



「は?」

「おぉ、数夏!久しぶりだな」


台所から岸島がでてきた。それにお父さんって・・・・・。


「き、岸島の親父さん・・・か・・・?」

「いかにも」


そうかそれならここの場所がわかったのも不法侵入したのもうなずける。いや、不法侵入はうなずけねぇよ!なんでインターホンおさねーんだよ!ピンポーンの音を聞きたかった!


「でも・・・でもさ・・・・・」

「どうした、元気な少年」







「なら、なんで岸島はお前のところに行かないんだ?なんで震えてるんだよ」









岸島の反応は親と会ったような反応じゃない。まるで恐怖そのものと対面したような感じだ。普通しばらく会ってない親なら抱きつくまではしなくても駆け寄るか照れ隠しの文句ぐらいは言うはずだ。


「お前、岸島に何をしたんだ」

「おやおや。おかしいな。親ということは証明されたのに・・・」


煙草をくわえなおして・・・


「君の怒りは消えてないようだね」

「七実くん・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・未空」


すると台所から高松がでてきた。


「みんな・・・何してるの?・・・って・・・」

「あぁ、高松、こいつは岸島の親父でな・・・」

「何してるんですか?」

「え?おいおい、高松。包丁はおけよ。あぶねぇぞ・・・・・」

「何してるんですか?」


高松の意識はこの親父にしかいっていないようだ。


「ここ・・・・・・・・・・・・・禁煙ですよ」


そこかよっ!みんながずっこけた時に・・・・・


「すまんすまん。こんな汚いところなのでな。喫煙OKかと思ったよ」


次の瞬間。シュピィイイイイイイイイイイイ!という音がきこえた。煙草の火のついた先は切られゴミ箱に綺麗におさまった。


「ここは禁煙です。2度目ですよ」

「ほう、その速さ雷のごとし」


高松の雷瞬。包丁で的確に煙草の先を切ったのだ。その速さ、まさに一瞬。


「ふむふむ。どうも私は歓迎されてないようだね」

「この状況で歓迎してくる奴の方がおかしいね。器が大きいというか人間ができているというか」

「そうかそうか。なるほどな。でも安心したまえ。今は君らに手を出さない」

「君らにってことは・・・・・・・・・」


俺は壁を思い切りたたく。ドンッ!という音がこだまする。






「てめぇ、岸島に何するつもりだ!!」






「君は文系だね。私は嘘が嫌いだから嘘はつかないことにしてるんだ。だから極力真実を隠して伝えたつもりなんだが、君にはどうやら通じないらしい」

「なめるなよ、俺は文系少年って呼ばれてるんだ」

「面白いな、君は。でも目的は違う。おいで、数夏」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうした?そうかアメリカに住んでいてあまり会えないからな。私の顔を忘れたかい?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「君もこれからアメリカに住むというのに・・・」

「!!」


このクソ野郎何を言っているんだ・・・。岸島がアメリカにすむ・・・?


「どういうことだ!」

「どういうこともなにも。親が子供と住みたいということに理由がいるのかい?」

「岸島は住むって言っているのか?」

「これから言うに決まってる。きっとね。5日、6日はここにいるつもりだ。その間に決まるさ」

「本当にいい加減にしろよ・・・」

「だいじょうぶだ。学校は休んでもらうが出席日数のことは安心していい。ま、アメリカに来てしまえば関係のないことなのだからね」

「・・・・・・・なんで急に岸島と一緒に住むことにしたんだ?」

「親として当然。と言いたいけれど嘘は嫌いでね。半分は商売のためだ。」

「商売・・・だと・・・」

「数夏の数学能力はとてもすばらしい。これさえあれば私は失敗しない」

「岸島は金持ちだったのか・・・?」

「あぁー、違う。私は金持ちだが。日本に金は送ってないからな。数夏は金持ちじゃない」

「なんであんただけいい思いしてんだ」

「人間として当然だろう。欲望は私にもある。金は独り占めしたいだろ」


腹が立つとはこの時のためにあるのかと思うぐらいだった。人の親をてめぇ呼ばわりするのも気にならない。


「でもこれから金持ちになれるぞ」

「てめぇ・・・岸島の誕生日知ってるか?」

「さぁな。確か今月か来月ぐらいだったはずだが。そんなもの妻から聞けばいい話」

「そうか・・・・・」


俺は拳をつくる。握りしめる限界まで。


「7月7日だ。おぼえとけ!この野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


俺はここでもう限界を超えていた。我慢できなかったのだ。


「やれやれ。カルシウム不足だぞ。やれ」

『はっ』


すると親父の後ろからボディーガードみたいな黒スーツのやつがたくさん現れた。そいつは俺ら。岸島以外の全員をとらえる。そして一気に床に押し付けられた。


「がっ・・・・・・・・・・・・てめぇ!手をださないって・・・」

「今は。といったんだ。嘘はついていない。」

「七実・・・くん」

「・・・・・・・・・・・未空」

「私も動けない・・・」

「くっ・・・そ・・・」

「さぁ、こい。数夏。お前が来なければこいつらの関節をはずしていく」

「!!」

「岸島!だめだ!」

「だい・・・丈夫ですよ・・・・・」

「数夏ちゃん!」

「・・・・・・・・・・数夏」

「行ったらだめ!」

「だいじょうぶです。皆さん。私は平気ですから。お父さん、行きましょう」

「いい判断だ。お前たち。私がこの部屋から消えて1分たったらそいつらを離してやれ」

『は!』

「少年。さすがは数夏の計算をはずしただけあるな」


計算をはずす・・・・・・・・・・・・・・・・?始業式のときか!一生会わないとかいっといて同じクラスだったときの・・・。


「だが。私には届かない。数夏はもらっていく」

「岸島!お前はそれでいいのかよ!」


すると岸島は笑顔で俺の質問に答えるでもなく言った。







「皆さん。さようなら」


挿絵(By みてみん)








「岸島ぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


ふざ・・・けるなよ。お前の笑顔はそんなんじゃねぇだろうが。震えながら悲しそうに、泣きながらする笑顔は笑顔とはよばねぇ。お前の笑顔はもっと輝いていたはずだろう!


岸島の誕生日まで残り6日。崩壊は突然起こったのだ。




というわけでいよいよって感じです。

今までの日常とは少し違った日常。


続きものですよね。サブタイトルとかがもう。


でわ

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