第12片 理系少年と文系少女の交換
『結露・・・緋色・・・』
最悪な状態のまま次回に引き継いだ七実未空です。あ、ちなみに外見や声は岸島数夏だぜ!・・・・・・・・・・・というわけで入れ替わってます。岸島の方は俺になっているというわけだ。うむうむ。どうすればいいのだろうか。そんな中現れたボス、結露緋色。バレにようにやりすごせるだろうか!緊迫の入れ替わり編スタート!
「と、いう感じにあらすじを少年漫画っぽく言ってみたんだけど、実際はかなり焦ってます」
「ちょ、声に出てますよ!」
「あ・・・・・」
「ねー、緋色ーん。なんかこの2人おかしくない?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「おかしくないです!私はちゃんと岸島数夏です!」
「そ、そうだぞ、おかしなことを言ってないで教室に戻ろう」
この短時間でお互いのモノマネを完璧にマスターしたからな。だから本当は岸島と言っているのが俺で、教室に戻ろうとしてるのは岸島。ややこしいな。敬語が外見岸島の俺でそっけないのが俺外見の岸島だ。次の問題はどうやってこの場を誤魔化すか。
「・・・・・・・・・・・数夏、なんかおかしい・・・」
やっべぇえええええええええええ!!こいつ岸島のこと恋愛感情ありで好きだからな・・・。ちょっとおかしなことがあっただけで分かってしまうんだろう。
「お、おかしくないですよ!私はいつもおかしいんですから!」
(ちょ、失礼ですよ!)
(うるせぇ!今は文句いいあってる暇ないだろう)
(確かにそうですけども)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで見つめあってるの?」
アイコンタクトもバレた!?こいつの観察眼やばいんじゃないか。将来は刑事か探偵で決まりだな。
キーンコーンカーンコーン
『チャイムだぁああああああああああああああああああああ!!!』
「え?何!?2人ともそんなにチャイム好きだったの!?」
『教室へ行こうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
「え、ちょっと押さないで!ひいろん、またねー」
そういいながら教室に戻る俺ら。さぁ、楽しい楽しい授業の始まりだ!次はなにかなー?
「・・・・・・・・・・・・・・・・調査の必要あり」
〇
次の授業数学でした。
「えーと、この公式を使って、球の体積と円錐の体積の応用問題を解いて下さい」
・・・・・・・・・・・・・・・・。岸島の頭になったからか公式は様々なものが浮かびあがる。でも俺がその使い方を知らない。まったくわからないな・・・。
「じゃあ、岸島さん、お願いします」
「は、はい!」
やっちまったぁああああああああああ!この状況であたるとかどんな神のいたずらだよ!黒板の前にでる、すると後頭部に何かがあたる。紙くずだった。開いて見ると・・・・・・使う公式が書いてあった。岸島!お前が・・・・・ありがとうありがとう。俺はこの感動を忘れない。
「よし!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、この公式をどうしろと!?え、具体的な方法が書いてないよ!ねぇ、岸島!気づいて!いや、親指立ててグッ!じゃないよ!それとそれ俺のからだでやるなよ!恥ずかしいだろうが!
「わ、分かりません・・・・・」
「おや、めずらしいですね。じゃあ他に分かる人」
岸島がすごい目で睨んでくる。いや、俺の体なんでやめていただきたいんですが。いや、だってしょうがないでしょ!そんな目で見んなよ!俺なりの全力なんだよ。でもね、文系なんだよ。俺。
〇
数学の次の授業は古典です。
どうも七実未空になってしまった岸島数夏です。語り部はめんどくさいと思ってるんですがしぶしぶやることにしました。今、この状況で語り部なんてやってる暇ないんですけどね。それはお互い様ですし、しょうがないですね。
「この古文訳せるかー?徒然草からの出題だぞー」
古典は何が書いてあるか分かりませんね。これだから古典は。私が理系なのを知っていてこんなひどい問題を出すんですかね、まったく。怒っちゃいますよ!
「七実、やってみろ」
「は、はい」
神様は残酷です。こんな試練を私に与えてどうするというんですか。私は褒められて伸びるんですよ。身長は褒められても伸びませんけど・・・。
「えーと、ふっ、こんな問題、昼の堕天使と呼ばれた俺にはチョロいぜ」
あれ?モノマネをより上手くさせようとしたら中2病で痛いやつみたいになってます。まぁ、私の体じゃないのでいいです。なんか私の姿をした七実さんが涙目です。どうしたのでしょうか?
「それより、問題問題・・・・・」
えーとさっぱりです!本当になにも分かりません。どうしましょう・・・。昼の堕天使としてここは答えないといけないですね・・・。
「分かりません」
諦めました。えぇ、分からないものを悩んでいてもしょうがないのです。それなら潔い方がいいに決まってます!でもクラスの皆さんが雛段芸人みたいにズッコケています。なんででしょう。皆さんリアクションが上手いんですね。なんでコケたのか分かりませんけど。
〇
「なんで堕天使を名乗ったんだよ!」
「だってそういうキャラじゃないんですか?」
「いつ堕天使だって言ったんだよ!最初に言ったのはお前だろうが!」
というわけで帰宅途中。なんとかバレずにやりすごした俺らはあじさい荘に帰っている。敬語の男と男口調の女。異質の組み合わせだ。2人のときだけは素に戻れる。この時間が一番楽だ。
「それにしてもあじさい荘に帰ってからが本当の試練のような気がしますね」
「あぁ、罠とかあったりしてな」
「風〇のシレンそのものですね」
「だが緋色に山梨。それに香織さんまでいるんだぞ。どうすりゃいいんだ」
「あ、そういえば高松さんに相談するのはどうですか?」
「あぁ!その手があったか!唯一の常識人!」
「そして頭もいいのでしょう?解決策もだしてくれるかもしれません!」
「おぉ!久々にいいこと言ったな!」
「七実さん、今軽くバカにしましたよね」
「そうと決まったら急ぐぞ!」
「ながさないでください」
「俺らの将来は薔薇色だ!」
「左から右へと受け流さないでください。そして薔薇色じゃなくて鮮血色じゃないですか?」
岸島のツッコミを流しながら歩く。そういえば桜はあまり見なくなったな。5月の中旬。まだ咲いているところはうちの学校のグラウンドぐらいだろう。でももうすぐ散ってしまう。それはどこか悲しいことだった。俺は忘れたくなかったんだろう、こいつと初めてあったときのことを。
「む、着きましたよ」
「あぁ、確か高松はもう帰ってると思うけど」
そういいつつドアを開ける。1階には予想通り高松がリビングにいた。テレビを見ているようだ。香織さんはいない。買い物かな?
「高松」
「わぁ!驚かせないでよ・・・七実くん・・・?あれ?数夏ちゃん?」
「小鳥さーん!」
「七実くん!?」
「おい!お前!俺の体で高松に抱きつこうとするな!」
「え?・・・何?どういうことなの・・・?」
「小鳥さーん!」
「なっ七実くん!その・・・ちょっと手が・・・」
「おまっ!胸にあたってんじゃねぇか!そういうことは俺が体に戻ってからしたかったよ!」
「七実さんはやっぱり大きい方が好きなんじゃないですか!」
「ち、ちげぇよ!どっちも好きだよ!じゃ、じゃあお前はもませてくれるのか!?」
「そ、そんなことさせるわけないですよ!」
「じゃあ、文句いうなよ!男として羨ましいと思っちまうんだよ!」
「あの・・・・・何?」
高松が非常に混乱しているため、事情を話す。ジュースのくだり、ボールがあたったこと。そして緋色と山梨には絶対に言ってほしくないこと。言ったらバカにされること。今まであったことを全部話した。それを聞いたうえでの高松の第一声は・・・・・・・・
「間接キス!?」
そんな言葉だった。
「あれ?なんで第一声がそれ?なんで間接キス?」
「七実くんは黙ってて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に落ち込んでくる。というかこいつも順応はやいな。俺は今、岸島の姿なのに七実くんといった。きっとこいつもうすでにこの状況に慣れているのだろう。
「数夏ちゃん、間接キスって本当なの?」
「いや、あれは・・・そのノーカンというか・・・その・・・」
「本当なの?」
「いえ、そう言われてみると違ったような気がします・・・うん、あれは幻想ですね・・・」
「したんでしょ」
「しました・・・」
人間3回言われたらどんなことでも薄情してしまうと思う。ていうか間接キスってなんだよ。岸島も顔赤くしてんじゃねぇ!俺の顔でそれは非常に気持ち悪い!
「ちょっと待ってて・・・・・」
そう言って高松はどこかに行ってしまった。あれは台所の方だなぁ・・・と思っていると・・・
「その・・・七実さん的にもあれはノーカンにしたいですよね・・・」
「あれ?あれってなんだよ?」
「かかかっか、か」
「か?」
「か、間接キスです!」
「間接キス・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。あぁ!ジュースのときか!あぁ、これはやっちまってた!2人とも口をつけた上での交代だからな。岸島は女の子だし、悪いことをしてしまった。そして俺の姿で女の子らしいしぐさをするな。
「悪い・・・気づかなくて・・・」
「いえ、いいんです。その・・・それで・・・」
「ノーカンじゃなくてもいいんじゃね?」
「え?」
「いや、確かにあれは間接キスだったけれど、間接キスなんて男同士でもやるだろ」
「そんな趣味が・・・」
「ちげぇよ!飲み物のまわし飲みとかさ、あるだろ」
「はぁ」
「それと同じってことにすれば気になんないし、俺としてもいい思い出だ。なんてたって初めてだったからな・・・」
「七実さん・・・普通に気になると思うんですけど」
「くっ、いいからいいから。それに初めてをなしにしたくはない。初めての友達、初めての恋愛。初めてってつくことは忘れたくないことばかりなんだ。岸島が嫌だっていうのならなしでもいいけど・・・」
「いえ、ノーカンにしません。私もいい思い出にします」
「そうか・・・」
「というかその座り方やめてくれませんか?黒タイツごしに自分のパンツが見えているんで」
「え?」
「下を見ないでください!油断も隙もありませんね!」
「今のは男の本能だ。俺の意思じゃない」
「なんでも男の本能で片づけようとしないでください!」
といういい話だったはずがバカ騒ぎになっていったころ。高松が帰ってきた。
「お、どうした?」
「な、七実くん!私とも間接キスしてほしいんだけど・・・」
「なんでだよ!」
「それは・・・その・・・」
「ていうか今の俺は岸島で、体は俺だけどあっちは岸島だぞ」
「あ・・・」
こいつは本当に高松だろうかというほどの行動だった。かわいそうに・・・混乱してるんだな。確かに人間が入れ替わったら驚くよ。
「そして岸島に高松」
「なんですか?」
「なに・・・・・?」
「ひとつだけいいたいことがある」
「だからなんですか?」
「言って・・・」
「俺、トイレしたいんだけど」
「そんなこといちいち報告しないでください」
「そうだよ・・・。別にいってきてもいいよ」
「そうか・・・悪いな。じゃあ失礼して・・・」
そして俺は立ち上がり、トイレを目指す。さっきからずっとしたかったんだよ。ジュースも飲んだしな。そしてドアノブに手をかけようとした時・・・・・・
『いやいやいやいやいや!』
3人で大合唱だった。まさかこんなにきれいにハモるとは。
「ちょ、何しようとしてるんですか!」
「そ、そうだよ・・・それ数夏ちゃんの体なんだよ」
「え!?お前らだって簡単に流してただろうが!思わずマジでやろうとするところだったよ!」
3人ともなぜか涙目だった。これはまずい。何がまずいって俺の腹が。ちょ・・・紙を使わない用事なのにこんなに苦戦するとか・・・。
「その・・・さ」
「なんだ高松尿意少佐」
「七実さん、混乱しすぎです。欲望と職が名前になってますよ」
「ボールがぶつかったときと同じ速さでぶつかればいいんでしょ」
「あぁ」
「それが難しいんですよね」
「数夏ちゃん、計算できないの?」
「!?」
「!?」
最悪とはまさにこのこと。最初からこれできたんじゃね?
「岸島・・・」
「・・・・・・・・・・・・・計算終了しました。七実さんの頭なので若干時間がかかりましたが」
「そうか・・・」
もう、どういう意味だよ!とかツッコム気もおきない。
「どのぐらいだ?」
「私がぶつかりますんで、じっとしててください」
「うん・・・・・」
なんかテンションが下がっていた。解決策がどうのこうのとかの問題じゃない。こういう苦労まるまるいらなかったのだ。
「いきます」
「よしこい」
ゴッチーン
〇
「・・・・・・・・・・・・・・・・お前は?」
「数夏です。あなたは?」
「未空だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
『戻ったぁああああああああああああああああああああああ!!!!!』
「トイレ!トイレ!」
「あ、ちょっとまって。間接キスが・・・」
「いやいや!だからなんでだよ!」
「私の体・・・私の体です!」
するとバン!と扉が開く。
「ほいほーい!たっだいまー!ってなにその喜び?」
「・・・・・・・・・・・仲間はずれ?」
「違うのよ・・・・・。その・・・喜びの舞い?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・いつもの数夏だ。調査の必要なし」
「私もいーれーろーよー」
「ちょっ!お前ら!」
「七実さん。私は緋色さんからただならぬ殺気のようなものを感じるのですが・・・」
「気のせいじゃないな」
「だから緋色さんのことお願いします」
「おいおい!お前自分だけ逃げるなよ!」
自分の部屋に戻っていく岸島。さて・・・と・・・。
「七実くん、間接・・・・・」
「・・・・・・・・・・・数夏を逃がした。許さない」
「もうひと踊りやっちまおう!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・あのさ、俺、トイレしたいんだ」
俺のトイレはいつになるやら・・・。ってあれ?トイレしたくないぞ?なんでだ。階段から走る音がきこえてくる。その正体は岸島だった。
「私が先です!」
そういってトイレに入ってしまった。あーなるほどな。あれは岸島の体だったな。
『七実くん!(・・・・・未空)』
俺はこいつらをどうしようかとひたすら考えていた。
あれ?タイトルおかしくね?と思ったあなた。大丈夫です。
今回は入れ替わりの話だったため、あっています。
それと挿をどうしようか悩んでいます・・・。
素人の絵なんで期待はしないでいただきたいのですがそのせいで作品のイメージを壊してしまわないかと・・・。
今回で入れ替わり編終了。
また短編みたいな軽い話をかきたいなー
でわ