第11片 理系少女と文系少年の交換
「お前は誰だ?」
「私は岸島数夏ですよ!そっちこそ誰ですか!」
「忘れたとは言わせねぇぞ!七実未空だよ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
現在非常に混乱しています。こんなことがあっていいのか神よ・・・。俺らの神は非常に古典的らしい。こんなことありきたりなラブコメでしか見たことねぇよ。
『入れ替わってるぅうううううううううううううううううううううううううううう!!!??』
俺をお許しください、ラブコメの神。
〇
数分前。
「俺はな、明日より今を大切にしたいんだよ!」
「よくもまぁ、そんなありきたりなセリフを自信満々に言えますね」
「今を大切にすることによって明日への道も開ける!」
「未空宗教が始まりましたね」
そんな感じで昼休みになるちょっと前。授業中にも関わらず岸島と話していた。教師が用事で帰ってしまったため自習だった。教室は授業中とは思えないぐらいうるさかった。岸島の席と俺の席とは離れているが隣の席の森林くんにどけてもらった。すまん・・・。
「で、なんでそんな話になったんでしたっけ?」
「そこは忘れるなよ!俺が恥ずかしいじゃねぇか!」
「あ、そうでした。チョコレートはビターがいいかミルクがいいかでしたね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どっちにしろ恥ずかしかった。どこをどうやったら俺は宗教を開いたんだ?チョコレートの話題がなんで明日だか今だかの話になるんだよ。
「ま、そういうことで俺はどっちも好きなんだ」
「優柔不断ですね」
「チョコレートの話でそこまで言われるとは思わなかったよ」
「まぁ、いいです。ところでのどが渇いたんですが・・・」
「あー自動販売機近いし、先生にバレなけりゃいいだろ。今行くか?」
「はい」
そう言ってコソコソと教室を出る。ここでバレるわけにはいかない。そして自動販売機前へ。そこで飲み物を買って戻ろうとしたら・・・
「あの・・・すいません・・・」
「どうした?」
「その非常に言いづらいんですけど・・・」
「ん?」
「いや・・・だから・・・その・・・」
なんかはっきりしない。なんだろうなぁと思ったら岸島は足をもじもじさせていた。黒タイツで包まれた足は元気さがにじみでている。しかも顔は真っ赤だ。
「あの・・・ですね・・・」
「ああ、なるほど。トイレだな」
「は、はっきり言わないでください!七実さんのバカーーー!!」
と走りさってしまった。・・・・・・・・・・・・・。なぜだかわからないけれど怒られてしまった。急にキレる若者怖い。これ前も誰か言ってなかった?でもこのまま教室に戻るのもあれなので廊下で待っていることにした。先生にバレないようしゃがんでいる。
「なんでリアルメタル〇アやってるんだ・・・」
しかしこのまま帰ってしまっていいものだろうか。せめて謝らないとな。謝ることが見つからないけど謝ればなんとかなる。これ七実家の家訓。
「お、戻ってきたか」
15分後。ようやく帰ってきた。
「わ、わざわざ待ってくれてたんですか!?」
「あぁ、そのさっきはごめんな・・・」
「あ、いえ、そんなに本気で怒ってるわけじゃないので・・・」
よっし!成功!
「女子のトイレって時間かかるんだな」
「謝る気あるんですか!?」
また怒られてしまった。
「それに男の子のように簡単にできると思わないでください。黒タイツだってはいてますし・・・」
「まぁ、確かに男だと立って終わるしな」
「この会話やめません!?」
というわけで教室にもう少しでつきそうだ。
「そうだ、そっちのジュースも飲ませてくれよ」
「え!?いや・・・これ私がもう飲んじゃってますよ・・・」
「少しでいいからさ。俺のもあげるし」
「その・・・そういうことじゃなくてですね・・・」
本日二度目。顔がまた赤くなっている。分からない。数学よりも全然わからない。女の子の不思議。本当に多いよな。
「ほら、じゃあ、先に俺のを飲めよ」
「いや、そのそういうことでもなくてですね・・・」
「はい」
「むぐっ」
今日の岸島ははっきりしないな。なので俺が親切に飲ませてやった。ストローなので吐きだすこともないだろうし、ちゃんと考えてるんだよ。無理やり飲ませたくはないから軽く口もとにあてるように渡した。なので飲みたくなかったら飲まないだろう。だが岸島はしぶしぶといった感じで飲んでくれた。
「むー」
「なんで飲みながら機嫌が悪いんだよ」
そしてジュースを返してくる。
「・・・・・あの・・・・・ありがとうございます」
「あぁ、いや、別にお礼言われることじゃないんだけどな。俺がほとんど無理やりだったし」
「その・・・私のでよければこれ・・・」
「お、さんきゅ。これ気になってたんだよね」
「ちょっとは違うことも気にして下さい・・・」といいながらも俺がジュース飲むのを了承してくれたみたいだ。俺は軽く飲んで岸島に返した。
「これ結構おいしいな」
「そうですか・・・」
「どうしたんだ?」
「いえ、初めての間接はこんな感じなんですね、と思っていただけです」
「?」
「分からなくていいですよ。分かってしまったら恥ずかしいというかその自分もなんで喜んでいるのか分からないんですから」
「?」
ますますわからない。と思い考えていたら岸島が教室の扉を開けた。するとその瞬間バカ騒ぎしていてボール遊びをしていたやつらのボールが飛んできた。
「え・・・」
「ちっ!あぶねぇ!」
俺はすかさず前にでる。ボールは運悪く顔面にあたった。その衝撃で少し後ろにかたむく。
「ちょ、大丈夫ですか、七実さ・・・・・」
ゴッチーン!
俺ら2人の頭はぶつかった。そして気付くと・・・・・・
〇
「今に至るわけだよちくしょうめ!」
現在は昼休み。これはまずい。俺は今、外見は岸島数夏だった。そして俺の目の前にいる俺。外見、七実未空の岸島数夏がいるわけだ。未だに信じられない。だが皆さんのなかでは俺の声と岸島の声を逆転させていただくと読みやすいかもしれない。・・・・・何言ってんだろう、俺。
「どうしましょう・・・」
「その姿で敬語使うなよ!なんか自分で自分を見るのが恥ずかしい!そして低い声でのそれは気持ち悪い!」
「そっちこそそんな汚い言葉を使わないでくださいよ!高い声でそれは気持ち悪いです!」
声の違いも大変だった。女の子の声ってこんな感じなんだな。今、3階にあるでっかいホールに俺らはいた。ベンチみたいなイスと広い空間があるスペース。俺らの任務は入れ替わりがなおるまで知り合いに会わない。または入れ替わったと気付かれないということだった。
「お、俺はどうすれば・・・」
「俺なんて言わないでください!私が俺を使うのはおかしいです!」
「お前こそ俺が私って使うのはおかしいよ!」
ややこしかった。何がなんだかわからなかった。俺が私で私が俺?
「きっとまた頭をぶつければいいという簡単なオチだ」
「でもボールがぶつかったときと同じ衝撃でぶつかるのは難しいですよ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・どうします?」
確かにボールはなかなかの威力だったからな。何回も挑戦してるとバカになりそうだ。もう諦めようかなって思っていると後ろから声をかけられた。
「おっやー?七実くんに数夏ちゃんでねーか!」
無駄な訛りで話しかけてきたのは山梨戸張。なんでいるんだよ!お前いつも昼休み眠ってるだろうが!
「山梨・・・!お前どうして・・・?」
「数夏ちゃん?いつからそんな七実くんみたいになったの?」
しまったぁあああああああああああああああああああああああ!!俺の外見の岸島も呆れた目で見ていた。誤魔化せ誤魔化せ。
「なんでもないよん☆とばりっちはどうしてここに?☆」
「戸張っち!?」
あれ?意外と似てるかと思ってたんだが怪訝な顔をされた。これでも演技は上手いほうだと思ってたんだがな・・・。この前も岸島に演技下手くそって言われたし・・・。
(あなたはバカなんですか!?)
(うるせぇな!動揺してキャラが定まらねぇんだよ!)
(だからってあれはないでしょう!私が気持ち悪いです!星もつけないでくださいよ!)
アイコンタクト。というか小声で会話してるだけだった。
「で、七実くんはさっきから静かだね」
「!?」
岸島ぁあああああああああああああああああああ!!お前頑張れよ!お前ここでヘマするなよ!絶対にやめろよ!信じてるからな!
「うるさい小娘め。げへへ、食べちゃうぞぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ド変態!?」
岸島ぁああああああああああああああああああああ!!!そんなキャラじゃねぇよぉおおおおおおおお!!
それともお前にはそういうふうに見えていたの!?
「冗談です、お嬢様。ささ、靴が汚れてしまいますゆえ、私めが預からさせていただきます」
「靴下が汚れないようにするための靴なんだけど!?」
執事さん!?執事さんなの!?お前も演技下手だろうが!
「なんか様子がおかしいね・・・」
『ギクッ!』
「うーん、なんか入れ替わってるみたいな印象があるんだけど・・・」
『ギギギクッ!』
まずい!勘が鋭いなこいつ!普段アホみたいなんだから気づくなよ!
「おかしくないよん☆もうそろそろチャイムがなるころじゃないかな☆かな☆」
「すっごいあやしいんだけど!」
おかしい・・・。余計に不利になったよ。
(なんで竜〇レナに+☆なんですか!?)
(すまん・・・。誤魔化そうと思ったんだが)
(もういいです!ここは私に任せてください)
そういって自信満々に挑もうとする岸島。不安がつのる。あいつやらかすぞ・・・。
「おい、いいから教室戻るぞ。俺はもう休みたいんだ」
キターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!こいつ順応はやっ!いいぞこれならやれる!
「あ、あれ?いつもの七実くんだ。なーんだ、入れ替わったわけじゃないんだ」
「入れ替わる何言ってるんだ?夢を見るなら寝てる時にしろ」
完璧に俺じゃね?自分で判断できないがすごく似てる!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何、してるの?」
「えっ!?」
「あ・・・・・」
岸島な俺と七実な岸島は凍りつく、それこそ氷結されたように。
『結露・・・緋色・・・!!』
ハモる俺ら。そして強敵登場。これが一番の難関かもしれないおおきな試練とぶつかる!こいつに嘘とか通じなさそうだな。感じる感情はただただ恐怖!そんななかバレないための戦いが始まる!
・・・・・・・・・・・・・・・洒落にならない中、次回へ続くぜ!
というわけで次回へ続きます。
なんか長くなったので分けさせてもらいました。
感想など待ってます!
でわ