第10片 文系少年と雷瞬少女の優しさ
どうも1話ぶりです、七海未空です。この前はうちの理系少女が迷惑をかけました。しかも最後には告白モドキをやりやがって・・・。一瞬本当に告白かと思っちまったよ。結局俺らの勘違いなんだけどさ。
「岸島」
「なんですか?」
可愛らしく小首をかしげてきいてくる。今は放課後。俺らの学校の制服は男子が黒の学ラン。女子が白を基調としたセーラー服だ。えり、りぼん、スカートがあい色である。その制服が似合わないこの少女は岸島数夏。見た目中学1年生の高校2年生だ。黒タイツをはいている。タイツフェチにはたまらないね!その岸島の席の近くで話しかけている。
「図書館いくぞ」
「なぜです?・・・・・はっ!まさか告白!?」
「最初と同じ間違いしてんじゃねぇよ!あじさい荘のメンバー紹介だ!」
「おぉ!まだいたのですか」
「お前と俺をいれて6人。緋色と山梨を入れて残り2人だ」
俺は図書館へと急いだ。1階だから2年生の教室がある3階からは少し遠い。そして図書館の前へ。たしか放課後でも開いているはずだが・・・・・。開いてるな。そして中に入り目的の人を探す。
「お、いたいた」
図書館では大声をだしてはいけない。そういうマナーをちゃんと守り、その場所へと歩いて行った。図書部という部活に入っている女子。
「よぉ、高松」
「あ、七実くん」
高松小鳥。髪は黒色でおさげのような位置でしばっているのが2本。下の方で黒いゴムで結ぶツインテールだ。顔は可愛いがどこをとっても普通。というような感じ。身長も胸も普通。顔だけがズバ抜けてる。制服もきちんときこなしている。岸島は黒タイツで足全部を隠しているが高松はひざ下の靴下。なんていうんだっけ?そういう靴下。ていうか靴下なのだろうか。それと恥ずかしがり屋だ。
「そ、その、どうしたの?」
「こいつ、新しい寮生なんだ」
「岸島数夏です。初めまして高松さん」
「こ、小鳥でいいよ。よろしくね、数夏ちゃん」
「小鳥さんはいい人です!」
「お前のいい人基準は低すぎるな」
「失礼な両足ジャンプで飛び越えられるぐらい高いですよ!」
「ちょっとした段差じゃねぇか!」
「あ、あの・・・図書館だから・・・」
「あ・・・・スマン」
「ごめんなさいです」
「場所、変える?」
「そうしてもらえるとありがたい。いつもの癖でツッコミが出てしまう」
「どこのベテランお笑い芸人ですか」
そういいつつも図書館の近くにある自動販売機つきのでかいホールへと移動する。ただの紹介のはずなのになんで毎度毎度こんな感じになってしまうのだろう。
「で、こいつが寮生を紹介してほしいっていうからここに来たんだ」
「そ、そうなの・・・。ごめんね、一度も今まで会えなくて・・・」
「あ、いえ!大丈夫です!今、こうして会えたところですし・・・」
「ありがとう」
「いえ・・・」
岸島が目で合図してきたため、そちらを見る。するとアイコンタクトほどのことじゃないが目から今のこいつの心情が読みとれた。てかホント背低いな。俺も低いがその俺が低いと思うぐらいだから間違いではないだろう。
(まずいです、七実さん!この方普通すぎます!)
(わかってるよ!突飛なことがないからなんかやりづらいんだろ)
(はい・・・今までは妄想やら氷結やら百合やら梅やらいろんな要素がありましたが・・・この方は無です!)
(でもな、あじさい荘にもまともなのが必要だと思うんだ)
(そうですけれど!)
(それにこいつは無じゃないぞ?)
(へ?)
(いや、確かにまともで変人じゃない。でもこいつも〇〇少女って名前がつけられるぐらいにおかしなところがあるんだ)
(なんと!ていうかその〇〇少女とかって誰が毎回決めているんですか!?)
(先生方。それが生徒にも広まって有名になるんだ)
(なるほど)
(とにかく百聞は一見にしかず。見せてやるよ)
(え!?今からやるんですか?)
(あぁ、見てろ)
俺はおもむろにポケットから小銭をだす。自動販売機にそれを入れ、ジュースを買う。俺はそれを辛いながらも一気飲み。あぁー腹が気持ち悪いー。で、その残ったパックを・・・
「あー、近くにゴミ箱がないからここらへんにすてるかー」
「演技が下手すぎます!」
岸島のツッコミをおいといて俺はそこらへんにゴミを捨てる。そのゴミは徐々に落下していき、地面につく。・・・・・・・かつかないかぐらいの位置でゴミが消えた。
「え!?」
「でたな・・・」
「七実くん・・・ここで捨てるのはよくないよ」
高松がキャッチしていた。おそるべき速さで。すごい反射神経で。地につく前にキャッチしたのだ。人間技とは思えない。そしてアイコンタクト開始。
(どどど、どういうことですか!?)
(こいつはな2年1組。緋色のクラスだな。そこの学級委員長なんだよ)
(はぁ、それのどこが先程の動きと関係してるのですか?)
(幼稚園のころから常に・・・な)
(!?)
(一応、こいつとは幼稚園からの知り合いなのだが・・・。こいつはずっと委員長でな。小学校も中学校もずっとずっと委員長なんだ)
(委員長と人間のハーフですね)
(委員長なんて人種はいねぇよ!で・・・な。それで昔から悪いことをなくしていったんだ。今みたいにゴミを捨てようとしたらゴミを捨てるという行為を終わる前に防ぐ。それを繰り返していたら・・・)
(あんな瞬発力、反射神経になったと・・・)
(高松はな、いいやつなんだ。だから人が悪いことをおこそうとするとする前に防いで悪いことをしようとしたこと自体を消そうとするんだ。どの人だって守るんだよ)
(いい話ですね)
(もうしてしまった後ならしょうがないけれどな。でもそれでも神のような速さで防ぐんだが・・・)
(結局普通ではないんですね・・・)
まぁ、そうなんだけどさ。性格は一番普通なんだよ。突飛なこともしようとしないし。いいやつなんだぜ。
(人々は敬い、尊敬をこめて『雷瞬少女』と呼ぶんだ)
(とうとう中2病じゃないですか!)
(名前をつけた先生は邪気眼をおもちの中2病だったとか。RPGも好きな先生だったんだ)
(小鳥さんがかわいそうなんですけど)
(本人も気にいってないんだよ)
「あの・・・どうしたのかな?・・・」
「あっ!いや、その今日もお前は綺麗だな」
「パッとでた言葉がそれってどこのナンパ野郎ですか!」
「あ・・・恥ずかしいよ・・・」
「いや、すまん。動揺するとついな」
「化け物ですね。えっちな化け物」
「うるせぇわ!」
ってそうこうやっているうちに5時をすぎていた。高松には部活があるのでここは帰らせてもらうことにした。
「今日はありがとな」
「ううん・・・大丈夫」
「本当にありがとうございました!」
「いいよ。数夏ちゃん、寮に帰ったらあそぼうね」
「はい!」
「その・・・聞きたいことがあるんだけど・・・」
「なんだ?」
「2人って付き合ってるの?」
俺は岸島と目を合わせる。そして数秒後きちんと告げることにした。
『付き合ってない(ません)!』
ハモったよ!普通のことでは絶対に意見が合わないのに!
「そう・・・なんだ」
「おう、じゃあな」
「またあとでです!」
「うん」
そして俺ら2人は図書館を出る。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『失礼だろうが(ですよ)!』
「おま、付き合ってないけど俺だって人間だぞ!即答されたら傷つくだろうが!」
「私もです!好きでもないですけどあんなにキッパリ言われたら傷つきますよ!」
「お前、男子のガラスのハートなめてるだろ。ちょっと女子に冷たくされただけで2週間はひっぱるぞ」
「そんなハート壊れてしまえばいいのです!こっちは繊細な女の子ですよ!」
「ほう・・・なかなかゆずらねぇじゃねぇか。黒タイツ」
「黒タイツだって需要あるんですよ!け〇おん!の平〇唯ちゃんだって黒タイツでしょう!でもそっちこそやりますね・・・」
「三色剛拳で勝負か・・・・・」
「そもそも勝負だったのか分からないですけど、その漢字でじゃんけんと言われたら断ることはしませんよ」
「せーの」
『じゃんけん・・・・・・・・・・・あ!UFO!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「卑怯だぞ、岸島」
「そっちも同じじゃないですか」
そんなこんなで帰宅する俺たち。俺はこの日常を気に入りつつあった。かけがえのない時間。この無駄な感じが俺を心地よくさせていた。
〇
そんな2人が騒いでいるのがきこえる図書館。
「楽しそう・・・」
私、高松小鳥は本の整理をしながら騒ぎをきいていた。それをきくだけで楽しかった。
「七実くん、元気になってよかった。それを変えたのが数夏ちゃんかな・・・」
少し数夏ちゃんが羨ましかった。私じゃ彼を変えられなかったから。元気にさせることができなかったから。出会ったばかりとは思えない会話。どれも羨ましい。
「七実くんとクラス同じじゃなかったしな・・・」
1年生のときは同じだったんだけど・・・。2年生に上がったらバラバラになっちゃった。
「七実くんは明るい方がいいよ。私はそんな七実くんが輝いて見えたんだから」
今、彼に届くはずもないのに呟いた言葉。独り言だとわかると妙に恥ずかしくなって、そしてどこか心が満たされていくような気がした。
というわけで新しいメンバー登場のこの話。
どうでしたでしょうか?
次はまたバカ騒ぎ目的のものにしようと思います。
でわ