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第102片 文系少年と理系少女の非日常②

 俺はいつから間違っていたのだろう。

 最初、俺がこの世界を書き換えられるとわかったのは小学生の頃だった。

 高松がいじめられていた。ただそれだけの事実で俺には十分だった。すべて、すべてのいじめっこを倒せるだけの力をつけた世界へと書き換えた。

 俺が無駄に喧嘩に強かったりするのはそのせいだったりする。喧嘩に強いだけで戦闘に強いわけでもないし、厳密にいえば喧嘩に強くなったわけではない。ただただ腕力を上げただけなのだが。

 しかしなぜ高松がいじめられていない世界へと書き換えなかったのか。どう考えてもそのほうがいいに決まっているのに。

 それはたぶん、きっと。俺が人を助けたという記録を記憶を残したかったのかもしれない。小学生の考えそうなことだ。お金よりもなによりも名声を手にしたがる。

 それはあまり今でも変わっていない汚い人間なわけだが。

 数夏が死んだとき、それを一番最初に思い出した。あぁ、そうだ、俺にはその手があると。

 世界がおかしくなることも、俺自身が歪んでいくこともわかっていた。

 途中、数夏を助けるだけでなく、すべての人を助けてみたくなった。脱線もしたりした。何度も何度も世界を繰り返し、やりなおし、書き換えるだけでは満足できなくなった。

 しかし数夏だけを救おうとすると、そのほかの人間は救えない。

 数夏の父親も色花先輩も俺が関わってきて俺が解決したとされる人たちの悩みはすべて見ないふりになるということである。

 最初は数夏だけを救う、そのためならどんな犠牲もいとわない。そう思ってきたのに。

 どんな因果関係なのか、数夏を救うにはほかの人を見捨て、ほかの人を救うには数夏を見捨てるしかない。どんなに世界を書き換えても結論は同じだった。

 でも、何回も繰り返すうちに何かがわかったんだ。両方とも救うことのできる方法のヒントを得たような気がするんだ。

 もう少しなんだ。

 だから邪魔しないでくれ。

 俺の物語はもう終わるんだ。

 みんなで体験した学校祭も選挙もそれになぜ、この学校が桜浪と呼ばれるかもすべて飽きた。

 何度もきいた。

 だから終わらせてくれ。

 俺を楽にさせてくれ。

 数夏を・・・。

 数夏だけじゃなくみんなを俺に救わせてくれ。










「あー、そういえばさー、七実。わたしは怒っているわけではあるんだけど、何も殺そうとかそんな物騒なことは考えてないんだ。いや、まぁ、当然のことだけどね。だから・・・」

 津神坂先輩は俺にただ平坦な声で言う。

「こんな銃も向けたくないわけだ」

 俺は先ほどと形成が逆転していることにいまさらながらに気付いた。

 俺が向けていた銃は遠くにとばされ、今度は俺に銃が向けられている。

「わたしのこの銃にはあなたの世界を書き換える能力を永遠に封印するというのを込めているのだが、どうする?」

 なっ・・・永遠に封印する・・・?妄想だろ?妄想にそこまで強い影響を現実に与えられるわけがない。それは俺が、使ってきた俺がよくわかっている。

「ハッタリだ」

「そう思うなら撃ってみるかい?目が覚めたらきっと最悪な気分を味わうことになるよ」

「ぐ・・・」

 わからない。この人が嘘をついているのかどうかがわからない。もともと嘘吐きなこの先輩は嘘を吐くことに長けている。

 でも嘘が嘘という可能性もある。

 俺はいったい何を、誰を信じればいいのか。

「津神坂先輩・・・やめてください・・・お願いします」

 みっともなくてもそうお願いするしかなかった。

 このお互いの妄想が作り出した世界は現実じゃない。だから俺は書き換えられない。まずはこの世界を脱することだ。

「嘘吐き」

「え・・・・・?」

「知らなかった?わたしは嘘を見抜けるんだ。嘘だと思うならやってみなよ、なんでも当ててやるぜ」

「・・・・・・・」

 いまさらそれを信じない俺じゃない。

 もうこの先輩に至ってはなんでもできると思ったほうがいい。

 だからこの銃もきっと本物だ。

「津神坂先輩。じゃあ、本当のことを言っているか当ててください」

「いいよ」

「俺は数夏を助けたいと思っている」

「うん、本当だ」

「それと同じくらいみんなを助けたいと思っている」

「本当だね」

「だから・・・」

「・・・・・・」

「だからそのためには手段を選ばない」

「あぁ、そうだね、本当だ」

 その瞬間俺は先輩の足元にスライディングする。先輩がよろけた間に銃を構成。

 一気に頭に銃をつきつける。

「終わりです。あなたの記憶を殺します」

 容赦なく引き金をひこうと思った時、俺の手の中の銃は消える。

「なっ・・・!」

「ふぅ・・・大変だったぜ。そっちの妄想とわたしの妄想でできた世界だからお互いの妄想が生きる。なら相手の妄想を上回る量の妄想で浸食すればいい」

「・・・・・・・」

 うかつだった。

 相手ばかりに気をとられてその可能性を忘れていた。

 俺は最後まで愚かで最後まで哀れで・・・・・。

 最後まで馬鹿だった。

「黒曜石!」

「無駄だよ。君の妄想はもう働かない。さぁ、これでどちらが終わりかわかったかい?」

 あとさぁ、と先輩はため息をつく。

「お前何様だよ。人を助けようだと?なめんな。お前に救われなくても人は生きていける。まぁ、実際に死ぬのかもしれないが、でもそれを書き換えることは許されない」

「じゃあ!」

 相手のセリフになかば被せる形で発言する。

「じゃあ!俺は何をすればよかったんだ!どうすればよかったんだ!俺は何を・・・何をしているんだ・・・・・もうわけわかんないんだ・・・・・・・」

 繰り返すほど自分が見えなくなる。

「俺はどうすればいいんだよ・・・・・・どうすればよかったんだよ!」

「こうすればいいんだよ」

 その時後ろから声をかけられた。

 なんだ?ここは俺と津神坂先輩の空間のはずだ。誰かが入れるわけがない。それこそ妄想力の強いやつじゃないと無理である。

 しかしこの声どこかで・・・。

「君は笑うだけでいいんだ。それだけで私たちは救われる」

「お前は・・・」

「私?私はね、君を救うためにきたんだ。久しぶり七実くん」

 後ろを振り向く。






「私は山梨戸張、もとい飯島戸張。はじめましてでお久しぶり」







 その笑顔はまわりを笑顔にする、そんな感じだった。

 まだ俺の見る景色は。

 俺の見る光景は今も輝いて見えた。



また更新が遅れてしまいましたが今後ははやく更新できるように頑張ります。


しかしこの話ももう終わりになりそうです。毎回言ってますが。毎回言っているというのも毎回言っている気がしますが。


ではまた次回。

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