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第101片 文系少年と理系少女の非日常

「数夏・・・いた・・・・・・・」

「およ?七実さん、そんな息切らしてどうしたんですか?」

「俺は、お前にわがままを・・・・・・・」

「待って」

 その瞬間大きく何かが砕ける音がする。

 世界が砕けて真っ白な世界へと変わる。目の前にいた数夏は消え、何もなくなる。

「数夏・・・!」

「待てと言っている。七実未空」

 そして初めてその声に気付く。俺に発せられていたその声の主は簡単で聞いたことのある平坦な感情の起伏が少ない声。

「津神坂先輩・・・・・」

「七実未空。いやはや、主人公がラスボスなんて今どき珍しくないけれどまさかこの創作でもなんでもない現実にいるとはね。すべての元凶よ」

「ラスボス・・・?」

「そうだよ、君がラスボスだ。おかしいところなんてたくさんあった。なぜ君のもとにまるで物語の主人公かのように面倒事がおこったのか。そして君はそれをいとも簡単にいや、苦労はしつつも解決したのか。それは一般の高校生以上の能力だぜ」

「・・・・・・何が言いたいんですか?」

「世界を作りかえるのをやめろ。自分のいいように世界をこれ以上変えるな。それがわたしの言いたいことだよ。考えてみれば文系の頂点である文系少年が世界をまるで小説のように作り変えてしまうことができないはずがない。わたしは能力とかそういうのをすべて否定してきたけれど、さすがにこれには驚かざるを得ない。君のそれは異能力だよ」

 まぁ、世界はつながっている。この世の中に能力者なんて意外とたくさんいるのかもしれないが、言霊とか使ったりな、と先輩は言う。

「自分のところに面倒事をすべて集めてそれを解決するという世界に作り変えて何がしたいのかは分らんがそんな便利なことがなんの対価もなくできると思うか?」

「・・・・・・・・・・・・・それがあなたの考えですか?」

「・・・・・・何が言いたい?」

「この世界は俺が面倒事をすべて集めてそれを解決するという世界で本当に合っているんですか?」

「・・・・違うのか?」

「違いますよ。全然違う。俺がなんのために面倒事を解決し、したくもない恋をして、この世界を構築しているか何もわかっていない」

 そこで、俺は一度区切る。

「俺は・・・・俺が好きなのは数夏だ。昔からそれは決して変わらない」

「昔から・・・・・待て。お前はいったいいつからの七実未空だ?」

「最初からですよ。最初から俺が行ってきたすべての学校生活は数夏を救うためのものだった。親友と喧嘩をして、好きな人ができて、他愛もない日常を過ごす、それが数夏を救うために必要なことだったんですよ」

「・・・・・・・わたしは能力とかそういうのは信じない主義なんだ。そういうの抜きで説明してくれ」

 俺はそこで大仰に手を広げる。

「俺は数夏と出会い、一度数夏を失った。そして俺は世界を作りなおして数夏を何度も救おうとした。そのたびに世界を作り変えて何度も何度も・・・そして何度目か分からないこの世界でたぶん数夏は救われる。俺が数夏にわがままを言えばいい。そうすればあいつは飛び立たない」

 俺は知らないうちに涙を流していることに気付いた。

「数夏は・・・・・数夏は死ぬんだ」









 最初の世界。

 そこで俺は数夏を止めることなく飛び立ちを応援することにした。

「頑張れよ。また必ず会おう」

「はい」

 そうやって別れた俺達は再開を夢見てそれぞれの生活をしようと志す。

 でもその日のニュースがその飛行機が墜落したことを俺に通告した。

「なっ・・・・・数夏!」

 俺はどうすることもできないまま、ただただ日々を過ごした。

 その後数夏が亡くなったという知らせが届いたのだ。







「すごく簡単にまとめるとこういうことだ。俺は数夏を失いそこで世界の構築を考えた」

「いや、だから能力とか抜きに考えてほしいんだが。でも、ま、なるほどね。すごく簡単にまとめたせいでわたしにはどうも感動やらが伝わってこなかったんだが・・・」

 でも、と先輩は否定する。

「気持ちは分かる。でもそんなことで世界を変えてはいけない」

「そんなこと・・・そんなこと!俺にとっては一生をかけてでも取り戻したいものだったんだ!俺は、俺は俺の行いを否定するわけにはいかない!」

 俺の手のまわりの空気が動きそして俺の手に銃を形成する。

「ここは俺とあなたの妄想世界だ。ゆえになんでもあり。俺はあなたの妄想を俺の妄想で上塗りし、あなたのこの俺に関する記憶をすべて抜き取った世界を構築する」

 銃を向け、そしてただ静かに笑う。

「あなたの記憶を殺す」











「なるほどねー、ラスボスっぽかった僕がやられたのもすべて彼の仕業だったのか」

 先渕という男はにやりと笑う。

「選挙を中止にしたのもすべてそういうことか。ただ小森さんの介入は予想外だったらしいけれど」

 それにしても、と言う。

「せっかくの学園ラブコメが台無しじゃないか。能力だかなんだかしらないけれど僕が見たいのはドキドキするような恋愛なんだよね。だから・・・」

 先渕は後ろを振り向く。

「僕を助けてくれるよね、みんな」

 そこにいたのは人。人。人。人。人。全部人。

「ラスボス候補の僕が主人公まがいのことするなんて笑えるよね。さぁ、とくに彼と関係の深いみなさんで彼を止めましょう。能力なんてすべて『無』かったことに。『無』にして終わりにしようこの物語を。ハッピーエンドを迎えよう」

というわけで終わりが近いです。これ毎回言ってますけれど。


あれ?能力ものに移行?と思われた方もいるでしょうが、まとめる程度の簡単なものなのでいつもの通り軽い感じで楽しんでくれればうれしいです。


もう少しお付き合いください。


ではまた次回。

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