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第97片 理系少女と文系少年の各々②

「と、というわけで生徒会選挙初日の決意表明を終わります」

 恐怖の生徒会長決意表明から5分。

 その5分間は特に何もなく、みんな黙ってそして何かを噛み締めているかのようにひたすら静かに過ごすようなものだった。

 ようやく閉式の言葉を言い、選挙が終わりとなる。

 結果は1ヶ月後。その間は各々の自己PRをしまくるというもの。他の人に手を借りてもいいということなので大抵は応援責任者として自分を応援してくれる生徒をつけるものだが。

「あれは・・・あいつのことは誰が応援するんだ・・・?」

 負けが決まったようなものである。

 そもそも転校初日で生徒会長に立候補するか?ただでさえこの時期の転校生なんて珍しいのに・・・ってそれが狙いかもしれないな。

 要するにインパクト。

 確かにこれで今日のこのことは忘れないだろう。少なくとも1ヶ月は。

 しかしだからといって負けは負け。友達もいないような状況で戦うなど無謀にもほどがある。

 ただでさえ、その奇妙な生徒会長決意はみんなに恐怖を与えたというのに、誰がやつに投票するというのか。

 小森沙紀。

 とかいったか。

 恐怖による圧政。恐怖政治でもやるつもりなのか?

「文系少年」

「え?」

 後ろからの声に驚く。

 聞いたことのあるその声はしばらく会っていなかった人のものだったからだ。

「色花先輩?」

「その名前・・・以下略です。ですがまぁ、あなたに本名で呼ばれるというのも少し変な感じがしますしね。ちょうどいいかもしれません」

「え、えっと・・・」

「文系少年。改めてお話があります。これはこの学校に関わる大事なこと。相手は小森沙紀・・・ですがそれだけではありません。下手をすれば先生方さえも敵にまわるかもしれません」

「敵って・・・あなたはこれから戦争でおっぱじめるつもりですか?どうせ何もしなくてもあいつは落ちますよ。生徒会長にはなれない。それに先生方が敵ってどういう・・・」

「今はその説明をはぶ・・・いえ、ちゃんと言うべきでしょうね。生徒会長から落選したという程度の『地位』じゃ彼女を抑えることはできません。やるなら徹底的に」

「?地位?」

「えぇ、では説明しますね。驚異は彼女だけではない、先渕の驚異もまだ残っているのですから」









「んで、愛実くんはどうするんですか?」

 成宮に具体的なことを漠然と聞かれるという矛盾した質問を投げられた。

 どうするったって、立候補したのだからやらなければならないだろう。

 いや、やるために立候補したんだ。相手がどんなやつでさえ、引くわけにはいかない。

「相手は伊藤先輩にそれともう1人。異色の立候補者小森沙紀。どうするもなにも俺はやるよ。どんな相手でも絶対に勝ってみせる」

「小森沙紀。あいつのことは一旦置いとこう」

 と提案したのは副会長である。

 俺の応援責任者は今のところこの2人。

「問題は伊藤書記。それとその応援責任者である生徒会長だ。生徒会長の人望は言わずもがな、伊藤書記もそこそこ有名だ。正直その2人を私たち3人で相手するというのは難しいぞ」

 応援責任者、生徒会長。

 その判断は正しいと思う。生徒会長が伊藤書記につくのも分かる。

 伊藤書記は2年生ですでに生徒会役員になってから2年近い。それに頼りがいも意外とあるし、仕事もできる、本当にいい人材だ。

 それに比べて俺は1年生だし、何もかも足りていない。

「生徒会長は生徒会長という役柄、一番できそうなやつにつくしかない。お前が気を落とす必要はないよ、愛実会計」

 と励ましてはくれているが、実はそんなに気にしているわけではない。

 むしろ、よかったぐらいである。

 生徒会長を倒して生徒会長になるだなんて、素晴らしいことではないか。

 伊藤書記を否定するわけではないが、生徒会長に協力してもらい生徒会長になるのよりもずっとすっきりする。

 なんて、ただの負け惜しみにしか聞こえないだろうな。

「実際、本当に負け惜しみのようなものだし」

「愛実くん、どうするんですか?財力なら私はなんとかしますけれど」

「いや、それは落ち着け」

 お前の財力を使う気はさらさらない。

 というかお前はもっとお金の使い方を考えろ。

「いえいえ、好きな人のために使う。それ以上のよい使い方なんて考えつきませんわ」

「・・・・・」

 さらっとそういうことを言わないで欲しい。

 普通に照れる。

「で、本当にどうするんだ?相手はどう動くのか分からないぞ」

「本当に分からないのはあの小森沙紀だけれど・・・そうだな・・・PR活動か・・・」

 パッと思いついたのはポスターだ。

 自分のポスターだなんて気色悪いし、やめたいぐらいだけどそうも言ってられない。

 相手はあの生徒会長、伊藤書記なのだから。

「ポスターっていうのはどうだろう」

「いい考えですわね。でもあんまりポスター活動というものはお勧めできませんわ」

「?どういうことだ?」

「この時期の高校生というのは若干ひねくれています。高校生の私が言うのもなんなんですが。よく外を歩いて政治家のポスターがたくさん貼ってあったとき、必死だなぁとかうぜぇとかって思うことありません?別にそのポスターが自分の邪魔をしているわけではないのに」

「お前うぜぇって言葉使うのかよ・・・」

 そこに驚く俺。

 例ですわ、と笑顔を浮かべる成宮の意見を頭で反芻する。

 確かにうぜぇかどうかは分からないが、必死とは感じるよな。そしてその必死さに対して冷めてしまうこともしばしば。

 一生懸命にやることが必要とはいえ、なぜかそのような感想を思ってしまうのはまだ俺が子供だからかどうか。

「じゃあ適度に貼った方がいいということだな。目につくところに最小限で。でもそれじゃまだ弱い」

 あの2人を相手するのにはまだ足りない。

「ん?なんだみんな忘れてるんじゃないのか?」

 と不思議そうな顔をしている副会長。

「もう1人だけいるだろ、生徒会役員」

「あ・・・・・」

「・・・・・・」

 そういえばそうだった。

「生徒会初登場以来そんな言葉出てこなかったんでなくなった伏線かと思ってたんだが・・・それは使える。引き戻そう、飯島書記を」

 不登校になっている生徒会役員飯島書記。

 そいつの力さえ借りれればこちらはかなり優位に立てる。

「じゃあ俺は説得にとりかかるから」

「分かりました。じゃあ私は副会長とポスター制作に励むことにします」

「頼んだ」







「で、1人ぼっちである私はどう戦えばいいのか?そもそもからかいに来ただけでこいつ何もする気ないんじゃないのかとか思われてるんじゃねーんですかね?私は本気ですよ。恋に恋する女子高生をなめないでほしーんだけども」

 教室。

 そこが何の教室かはプレートを見ていなかったんで分からないが。

「はー・・・でも参るなぁ。友達がいないとまるで何もできねーじゃねーですか。小森沙紀、一生の不覚・・・・・・・・っていうふうに考えるのはまだ早いってことですかね、皆さん」

 何もない。

 何もできないはずの小森沙紀のまわりに集まる人間。

 応援責任者。

 たぶん恐らく、他の生徒会役員よりも多い応援責任者がそこに集まっていた。

「で、皆さんは私に味方してどうするつもりなんですか?教えてくださいよ」

 そこにいたのは。

 色花。

 黄味。

 柏部未海。

 風紀委員長長鍋。

 岸島数夏。

 そして、俺。七実未空。

「確かそこの色花先輩によるとまだ応援責任者は増えるらしーんですけれども、あんたら胡散臭いどころじゃねーですよ、何を目的に私につくのか教えてください」

 三つ巴の戦いはまだまだ続く。

 

というわけで選挙の続きです。


厳密に言えば選挙ではなく、準備段階なのでサブタイトルにも選挙と入れていないわけですが。


それと今回は告知のようなもの。


別の作品を執筆中です。今回のような長編ではなく3、4話ぐらいで終わってしまうような短いものです。


しかしこの作品を読んでくださっている方々にはあ!と思ってもらえるんじゃないかなぁと考えながら書いています。


あとまだ続いているもう1つの元主人公という作品を読んでくださっている方はあああああ!と思っていただけるんじゃないかなと考えています。


もちろんそのどちらも読んでいなくても片方だけでも読んでいただけるように書くつもりですのでよろしくお願いします。


最後まで書き終わり次第投稿するので待たせることはないんじゃないかなと。


宣伝みたいなのが長くなって申し訳ありません。


ではまた次回。

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