ステージ 1-1
またも、昔の僕の事だが僕はトンボをはじめて見た時
可哀想だな。
なんて事を想った。
馬鹿な事に、想ってしまった。
なんでそんな事を想ったのかは分からない。
いや、別にいくつかの候補はあるんだけど
でも、人を可哀想だとは想えなかった。
テレビの特番で出てくる重病の女を見ても何も想わない
死んでいる人を見ても同じ、たとえ友人だろうと家族だろうと、そんな事は想えない。
そんな感情は所詮、偽善でしかないのだから。
キリーツ! レーイ! 着席!
クラス委員の号令が終わり、担任の先生が青橋君の出席を確認する。
が、誰も反応しない、
いや、別に誰もって事はないんだけどね
僕は彼の幼馴染、三月 貴美葉が微妙に反応したのを視界の端で捕らえてる。
「おい、智梨!」
智梨 仁。
通称、『とっしー』と呼ばれなくも無い名前が僕の名前だ。
「何ですか先生?」
「お前、確か青橋と仲が良かっただろ。何か聞いてないか?」
「いえ。何も聞いてません」
「そうか……、まあとにかく、これでHRを終わるぞー」
キリーツ! レーイ! 着席!
「とっしー。本当に由一が何処にいるか知らない?」
僕が席に着いた瞬間話しかけてきたのは、
ツインテイル。
極々たまにテールと伸ばす輩がいるが、まずそいつらは死刑だ。
ツインテイルのことをなーんも分かっていない。
とゆうか、イをィと言っている人は人以上の存在になる。
しかし、問題は色だ。
僕の場合はポニーティルは黒以外は絶対認めない。
が、ツインテイルの場合は正直、微妙になる。
僕としては金色もOKだし銀色もアリだ。
しかし調子に乗って赤色もアリとか言い出す奴は【ピー】ね。
とりあえず【ピー】ね。
青色と言い出す奴も【ピー】ね!
蒼色の場合はグッド!
とゆうよりネ申だ。
しかし緋色はアウト。
まあ、この後の文章を省いて何が言いたいかというと、目の前にゴットな銀色ツインテイル。
青橋 由一の幼馴染の三月 貴美葉がいた。
「さあ? 昨日メール送ったけど返信来なかったし……」
「そう……」
「まあ、でも大丈夫だよ。青橋だし」
「そうだね。由一の事だからどうせサボっているだけだよね」
「ああ。どうせ家でゴロゴロしてるさ」
「うん。じゃあ私は放課後、念のために由一の家に行く事にする。とっしーは?」
「僕が一緒に行ったら三月に悪いだろ? 遠慮しとくよ」
「え! いや、別にいいよ。私と由一はそうゆう事じゃないし……」
「ほほう! それが毎日幼馴染を起こしに行ってる人の台詞かなぁ~?」
「あ、いや、その、それは、その……」
勿論、当の本人が死んでるなんて言わない。
しかし、そのせいで罪悪感が積もる、
いや、別にそんな物は積もってないんだけどね
しいてゆうなら幸福感。人を騙すことへの満腹感が僕に積もっている。
なんて最低な人間なんだろう、
いや、別にそんなことは微塵も思ってないんだけどね、
いや、別に微塵ぐらいは思っているんだけどね
「まあ、どちらにせよ僕は今日用事があるから一緒に行くことはできないよ」
「用事?」
「ああ、ちょっと友人とカラオケに行く約束でね」
「え! まさかとっしーにカラオケに行く友達がいるなんて……ショック! 間違えたファック!」
「合ってるよ! ショックで合ってるよ! って、そこでショックはおかしいよ!」
「さすが由一を上回る突っ込み担当。レヴェルが高い」
「それは褒められているのか?」
「ん、まあ、うん……」
「そこで濁すなぁぁ!!」
「ベツニ、アンタノタメニ、ホメタンジャ、ナイカラネ!」
「棒読みでツンデレるなぁぁ!」
ってツンデレって動詞だっけ?
ともかく、
「先生が着たぞ。さっさと自分の席に戻れ」
「はいはい」
「ハイは一回!」
「ハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ! ハイ!」
「長いよ! 後、一回って言ったよね僕?」
「っふ、慢心せずしてなにが幼馴染だ」
「うん。そうゆうディープなネタやめようね?」
てか、なんで三月がフェ【ピー】トのディープな金ぴかさんのセリフを知っているんだ?
「ふう。満足した」
そう言って三月は席に戻った。
人の事はあまり言えないけど……
「最低だな!」
いつもは今の会話にボケ兼突っ込み担当の青橋が入る。
けど彼はもう死んでいる。
いつもどうりには、ならないだろう。
ま、仕方ないか。
いつもどうりなんてものが続く訳が無い。
だから僕は……