ステージ 2-0
さて、そろそろ僕の友人であった青橋由一の事について語ろうと思う。
青橋は両親が交通事故で死亡し、残された莫大な遺産で生計を立て、毎朝、幼馴染が起こしにくる少しだけおかしな青年だった。
そう、すくなくとも僕の最初の第一印象はそんな感じだった。
けど、僕は猫に出会い、少しだけ敏感になってようやく青橋の正体に気づく
彼は、異常だと
そりゃそうだ。
彼は世界のバグなんだから
といってもほとんどの人には分からないだろうから補足すると彼は普通の輪廻転生をしない。
いや、普通の輪廻転生って何だよ!
って突っ込みたいのは分かるけど、この物語の世界観の設定ではそうなっている。
とにかく何処が普通じゃないのかというと
彼は前世の記憶を引き継ぐ、いや『由一』が引き継ぐと言うべきか
『由一』というのは輪廻転生しても、記憶を引き継げる、神でさえ見逃したバグのことだ。
『由一』は記憶を引き継ぎ、死んだとしても次の人生で記憶を貯め、そして引き継ぐ。
一見、得しかないように見えるが、実は物凄い短所がある。
それは人格崩壊。
他者の記憶があるがために、人格がくずれる。
といっても記憶を思い出さない限りは大丈夫らしい。
まあ、思い出さないためにはそれなりの個性が必要となるらしいが……
ともかくそんな青橋の特性を知ってから僕は遊んだ。
思いっきり、遊んだ。
時には二股かけさせたり、
時には自殺を止めさせたり、
時には人を殺させたりと、
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
僕はとうとう羞恥心に耐えれなくなって、猫が朗読していた、僕の厨二手帳を奪い取り、すばやくシュレッターにかける
「えー、もうおわりー?」
「無理! あれ以上黒歴史を暴露されたら憤死する!」
「えー、おもしろかったよー?」
「いや僕は地獄を味わったのでもう勘弁してください!」
「しかたないなー、じゃあ、もう寝るねー」
と言って、階段を上がっていく猫
僕は千切れ千切れになった手帳をゴミ箱に突っ込み、睡眠をとるべく、自分の部屋へと向かうのだった。
一瞬、誰かの視線を感じた。
そう視線。
一体どこでそんなものを感知するのかは分からないが僕は二時間目の授業中、突然、左側から視線を感じた。
けど、それはあまりにもおかしい。
なぜなら僕の左側には、ただ窓から見える曇りがちな天気しかないからだ。
なんだろう?
僕は席を立ち
国語教師の奥田先生に言う
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
「ん、ああ、早く帰ってこいよ?」
そのまま、右斜め前の空白の席を通り抜け、ドアをくぐり僕はトイレへと向かう、
いや、本当はそのまま裏庭へと向かうんだけどね
途中、なぜか上着を脱いでスカートが汚れた三月貴美葉とすれ違う。
軽く手を上げたが無視された。
まあ、トイレに行っていたんだから無理も無いか
ん? あれ?
今、なにか……
と何かに気づきかけた瞬間
僕は裏庭に到着し、そしてそれを視覚情報で捕らえる。
その情報は人型にくぼんでいる地面、つまりは、まるで人が地面に落ちたような形跡だった。
いや、でもおかしい。
なんで血の跡が無い?
地面の硬さと凹み具合から推測するに、屋上から飛び降りたらしい誰かは、ほぼ100%の確率で、内臓が飛び出ていたり、脳漿をまきちらしていたりしているはずだ。
なのに何故、それがない?
いや、まて
それ以前に、だ。
飛び降りた誰かさんは何処に行った?
まさか死体が一人歩きをするわけが無い。
あれ?
ちょっと思い出せ。
僕はここに来る途中、誰に出会った?
そうだ三月だ。
でもあいつはトイレに……って、なんで裏庭に向かう僕とすれ違った?
裏庭につながる校舎の一階にはトイレが無かったはず……
それに、スカートについていた泥……
もしかして……
僕の回答に正解の音を鳴らすようにして震えた携帯を開き、メールフォルダを開く
そこには三月から、放課後、今、まさに僕がいる所に来て欲しいという内容だった。