ステージ 1-12.5
僕という人間は嘘が嫌いだ。
それは他人がつく嘘と自分がつく嘘の両方だ。
だから僕は嘘が苦手だ
嘘をつくとすぐに顔に出る、
いや、別に出ないんだけどね
そう。
嘘は大の得意だ。
それでも嫌いなものは嫌いだ、
いや、別にそんな事は無いんだけどね
なんてことも勿論無い。
こんな風に言葉を引っ掻き回してまで何が言いたいかと言うと
誰かのための嘘が嫌いで自分の為の嘘が好き。
誰かのためだなんて所詮、善意の押し付けでしかなく、為になった人も迷惑だろう。
自分の為の嘘は人間らしくていい
まあ、兎にも角にもこの僕の無駄な言葉は価値観によって違ってくるだろう
さて、今回の話の語り部は白羽だ
え? 上の戯言は何だって?
そんな物、ただの独り言でしかないよ?
side Shiroba
ああ、これはやばい。
この魔王継承の戦いでそんな事を考え出したのはいつの頃だったか。
たしか、『幻想殺し』に首を絞められてきた時だったはずだ
あのときは、本当に怖かった
死がすぐそこまで来ているような気がして怖かったのだ。
いくら表情には出さないと言っても
怖かった。
でも、青年は私を救ってくれた。
殺人を犯してでも私を助けてくれた。
けど、その青年は今私が『ああ、これはやばい』と思っても助けてはくれない
当たり前か。
彼は裏切っているんだから
体がだんだんと鈍く重くなってくる
一瞬、脳裏に今は亡き家族の顔が写る。
そもそも、私がこの戦いに身を投じてるのも家族の為だ。
そうだ。
私は魔王になって神を殺さないといけない。
ああ、思考がだんだんと加速していく
これが走馬灯って奴なのか?
家族の仇ぐらいとりたかったなぁ……
これじゃあ、今まで殺してきた人に申し訳が立たない
ああ、死にたくない。
まだ、死にたくない。
絶対に死にたくない。
私はまだ死にたくない!
『助けてくれ!』
私は生まれて初めて、助けを求めた。
でも誰に?
神は私が殺すべき敵だし、本物の魔王に頼むのも筋違いだろう。
猫に頼もうにも猫は多分、とっしーの味方だろう。
あ、とっしーがいるか
『助けてくれ』
視線で助けを求める。
が、すでに視点が合わなくなってきている
だから視線に気づいているのかどうかは分からない。
まあ、気づいてたって多分、助けはしないのだ。
それが私が見てきた智梨 仁の生き方だ。
そう、智梨は助けるなら、救援を求める前に助けてるかヒントをあげている。
そうだろ? とっしー?
奇跡的にとっしーの顔に合った視線は、とっしーの意味深かな笑みを捉えた。
あれ?
もしかしたら私は何かを見逃しているのか?
だったら何だ?
思い出せ
走馬灯だったら思い出せるはずだ。
会話に違和感は無かったか?
矛盾は無かったか?
間違いは無かったか?
嘘は無かったのか?
ああ、そうか。
思い出した。
そういうことか
そういうことなのか
だったら
だったら、やるしかない
たとえ体が鈍くても重くてもやるしかない!
まずウォーミングアップで声を出さないと
どうせ出すなら、面倒くさいヒントの抗議にしよう
「最初で最後になるが最悪な人間だな。とっしー」
「ん、あれ? まだ喋れるの?」
「そうみたいですね」
さて抗議も終わったし、最悪で最高のパートナーの期待に答えないとな……