ステージ 1-12
なんか、延ばし、伸ばしてすみません。 by作者
振り下ろされた左腕を紙一重で避けた瞬間
白羽は真横に吹き飛ばされた。
内海の左手によって生じた風のせいだろう。
ほんとにあの左手は何でも出来るんだな……。
「うん、そうだよ」
「すみません、できれば人の思考を読まないでください」
「ん、ごめん、ごめん、っと」
内海は立て直した白羽が出した蹴りを、あっさりと避け、そのまま腹にカウンターを入れる
うめき声が聞こえたときにはすでに白羽は向こう側の校舎にまで吹っ飛ばされていた。
「あれ、ちょっと力入れすぎちゃったかな?」
……。
もう、何も言わない。と言うよりは思考しない
「そんなに、思考を読まれるのは嫌かな?」
「ええ、僕みたいな腹黒人間に対しては弱点です」
嘘をついてもすぐにバレる為、正直に言う
「そうそう。正直が一番だよ」
「そんな事より、早く白羽を殺してください。もしかしたら不意をついて僕を殺してくるかもしれませんから」
「もうちょっと遊びたかったんだけどな……。まあ、君が言うなら仕方ない」
内海は左手を上げて
「ほい!」
僕が瞬きしている間に、内海さんの右手には首を掴まれた白羽がいた。
「流石に首をちょん切ったら血で僕の服が台無しになるからね。苦しいだろうけど、このまま窒息死してくれよ?」
だんだんと動きが鈍くなって
ああ、死んだか、
と思った瞬間、内海の首を跳んだ。
クルクルと回りながら、放物線を描き、血の軌跡を残して地面に落ちた。
首を失った延長線上にあるのは
ナイフだ。
そう、青橋を殺し、『幻想殺し』の太ももを突き刺したあのサバイバルナイフ。
「げほっ! けほっ!」
と咽て、息を整えた後
僕の方に向かってくる白羽。
僕は内海さんの首を見るが、動く気配は無い。
僕はゆっくりと後ろに下がるが『瞬間移動』ですぐに距離を縮められたと思った瞬間、
首にひんやりとした感触を感じた。
ああ、ナイフを首に突きつけられているのか
…………。
ん、まだか?
僕は白羽を見て言う
「あれ? 殺さないの?」
「……なんで、私を裏切った?」
「そりゃ、『現象殺し』についたほうが勝率がいいからね」
「嘘をつくな。ならば何故、私があいつを殺せた?」
「それは予想外の客が来たからだよ。僕もまさか策に気づく参加者がいるとは思って無くてね」
「そうか」
「なあ、このナイフどけてくれよ。僕が悪かったからさ。土下座なり靴を舐めるなりするからさ」
「っは、この状況でよくもそんな事が言えるな」
「言えるさ。僕と君は手を組んだ仲だからね。能力はコピー出来なかったにしろ、一回、ともに戦ったじゃないか」
「…………」
「ほら、『現象殺し』はもういないんだし、仲良くやっていこうよ」
「…………」
「大丈夫。僕はもう裏切らないよ」
「…………本当か?」
「うん、本当だよ」
「そうか、なら……」
僕はやっと焦点合わせずに見ていたものに、焦点を合わせ、笑顔をつくる
「まあ、全部、嘘なんだけどね」
僕の言葉を聴いた瞬間、とっさに白羽は僕の視線を追って後ろを見る。
そこには、首が繋がった内海さんがいた。
「ん、その顔は幽霊を見ている顔だね。まあ今回は十分楽しんだから説明してあげようか?」
白羽はナイフを落とし、また固まっていた。
無理も無いだろう。
首を飛ばしていたのに生きているんだから
「まあ、簡単なんだけどね。首にナイフが入った瞬間、僕は左手に願ったんだよ。『死にたくない』ってね。そして左手は僕の願いを叶えてくれてこうしてぴんぴんと生きているわけさ」
「あれ? まだ固まってる? もしかして気絶しちゃった? あ、じゃあもうそろそろいいよね?」
やっと本当の確認をした内海に僕は本当の合図を送る。
勿論肯定の合図を送った。
白羽は内海に首を再度絞められて、やっと硬直が溶けたらしく、暴れだした。
けどもう遅い。
ゆっくりと内海は手に力を入れていく
脈を抑えたほうが早いのにな……
今度は僕の思考を読まずに、内海はそのまま、手に力を入れていった。