ステージ 1-11
最後まで残った白羽は体がボロボロになりながらも、しっかりと地面を踏みしめて僕達、つまりは僕、智梨 仁、と内海さんが立つ、朝礼台前まで歩いてきた。
そして内海さんの目の前まで来て言い放つ
「おい、魔王。私は最後まで生き残った、だから私が魔王を継ぐことになるんだな?」
が、内海は
「そんな訳が無いだろ?」
「……は?」
白羽が疑問の声をあげた後、内海はゆっくりと仮面を取る。
「……この顔に見覚えは無いのかい?」
「お前は…………あの時の……」
その質問に、今度は僕が答える。
「そう、『現象殺し』の内海さんだよ」
「なぜお前がそんな事を知っていて……」
「その内海さんのそばにいるのかって? そんなもの決まってる。僕が君を裏切ったからさ」
「……どうゆうことだ?」
「ん、簡単だよ。僕は秘密裏に内海さんと接触し、偽のメールをゲームの参加者に送りつけ、自らの能力を明かしてもらい、その情報を内海さんに渡した。以上」
「偽のメールって……猫か」
「うん、猫にちょっと協力してもらってね」
「……私たちは偽のメールに釣られて殺し合いをさせられたのか?」
「うん、そうだよ。あ、でもさっき金髪ツインティルの美少女にはバレていたようだけどね」
「……なるほど、つまり私はお前とそこの『現象殺し』の手のひらでタップダンスを踊っていたわけか」
いや、なぜタップダンス?
という言葉を飲み込み、僕からも質問する。
「で、どうする? 僕に跪いて靴を舐めて、『一生貴方様の奴隷になります』と言って、言葉どうりにしてくれるなら命だけは見逃すけど?」
その言葉に白羽はうつむいて手を震わせた。
「うわ。智梨君、結構、えぐいね」
「そうですか?」
「うん、えぐいよ。で、どうするの?」
やっと腕の震えが収まり、顔を上げた白羽は
「…………ふ、ふ、ふははははははは……はははは」
笑っていた。
「あれ? もしかしてこの子、壊れちゃった?」
「あー、そうかもしれませんね」
「何を言う。私は壊れてなんかいない。そしてお前の靴を舐めるつもりは無い」
「あ、そう。じゃあ内海さん、もう殺っていいですよ」
次の瞬間、内海の胸が爆発した。
「え?」
と言って内海は胸を手で押さえたかと思うと、次の瞬間には地面に倒れた。
絶句する僕を見て白羽は
「言ってなかったか? 私はさっきの女と殺りあった時に能力のレパートリーが広がっている。言っておくが今の私には『現象殺し』なんて雑魚に過ぎない」
「……え?」
「さて、裏切り者のお前に選択の余地を与えよう。一つはここで殺されて死ぬ。もう一つは三回、回ってワン! と言ってから私に跪いて靴を舐めてこう言え『一生貴方様の奴隷になります』と。そして言葉どうりに私の奴隷になれ」
なんすか?
え、もうこれ超展開キタコレ!(笑)とかそんな次元じゃない。
え、ほんとなんで?
何で?
物語的に可笑しいだろ。
このまま、白羽は殺されて終わる、物語じゃなかったのか?
てな事を思った、
いや、別に微塵ほど思ってないんだけどね
「だいたい、私の命を見逃す? 嘘をつくな。そんな事、お前らに出来るわけないだろう? 魔王になるための条件は参加者で殺しあって最後の一人にならないといけないからな」
「ありゃりゃ、やっぱり気づかれていたみたいだね」
唐突に下のほうから聞こえた声によって『悪者の能力持ちが勝ったと思い込んで自分の能力のことをペラペラ話す現象』は、その名前のとうり、殺された。
誰によって?
決まってる。
「僕以外ありえないだろう?」
まるで僕の心を読んでいたかのようにタイミングよく内海は立ち上がった。
「実際、読めるんだよ。まあ、今現在、考えている事だけだけどね」
「そうなんですか」
「あ、そう言えば、さんづけが面倒くさいなら別につけなくていいよ」
「いえ、言葉だけでも年上には敬語を使いたいんです」
「ふーん。まあ君がいいならいいけどさ」
「なんで生き返れる……?」
やっと開いたままだった口が閉じたと思ったらまた開いた。
「うーん『悪者の能力持ちが勝ったと思い込んで自分の能力のことをペラペラ話す現象』って思わないでね?」
どうやらしっかりと僕の心は読まれていたらしい
まあ、僕の心なんてどうでもいいんだが
「嘘は思考でしても駄目だよ?」
「失礼しました。それより早く説明してあげてください」
「仕方ないな……。言っておくけど僕の能力は名前どうりの『現象殺し』、つまりは物理現象を破壊するって思われているけどさ、実はそんな陳腐なものじゃないよ?」
「…………」
「この右手は何でも出来る。人を生き返らすことも、殺すことも、世界を壊すことも、創ることも何でも出来るんだよ。だから正確に言えば僕の能力の名前は『神の手』って言った方が正しいんだよ」
「そんな事が出来るのになんでこのゲームに……?」
「あくまで僕は人間だから、魔王と能力の矛盾が起きてしまうから、いっそのこと魔王になっちゃおうと思ってね」
「…………」
「もう言い残すことは無いのかい?」
「…………」
「じゃあ、大人しく死んでね」
内海は左手を上げて……