ステージ 1-0
昔の僕は人間はいい奴ばかりだと、思ってた。
もちろんそんな事は無いのに。
まったくアホらしい。
人間全員が悪いなんてことは言わない。
でもいい奴は、聖人か狂人か壊人のどれかだ。
いや、聖人なんて別にいないんだけどね
ぐりぐりと、彼女は相手の首にナイフを差し込んでいた。
ドバドバと間欠泉のように血が流れる。
彼女のぼさぼさに伸びた髪から覗く目はまるで死んだ魚のような目だ。
だからといって別に僕は何もするつもりは無い。
たとえ彼女が人を殺そうが。
今、死んだばかりの青年が生き返ろうが、
僕には関係ない。
いや、別に青年は生き返ってないんだけど、
とにかく僕はなんとなく携帯を出してそのまま100当番に通報する、
いや、別に通報してないんだけど
時間を確認するために出しただけだ、
いや、別に確認しないけど
本当はただ、メールを確認するためだ、
いや、別にメールは確認しないけど
ただ、カメラ機能で現場を写す。
カシャ!
その音で相手はやっと僕の存在に気づき、ナイフから血を滴りさせながら振り向いた。
「何をしているんだ?」
と僕は言った、
いや、別に言ってないんだけど
本当に言ったのは彼女だ。
「カメラで撮影したんだよ」
携帯をそのまま通学カバンになおす、
いや、カバンになおさないだけど
そのまま携帯を録画機能に切り替える。
「野次馬か?」
「いや、僕はただのカメラマンさ。勿論、そんな事は無いんだけどね」
「お前……、一体誰だ?」
「ただの情報屋さ。勿論、そんな事無いけど、……なんてことも無いんだけどね」
すぐさま僕の言葉を理解して、
いや、そんな事も無いんだけどね
普通に時間が少しかかって理解したようだ。
「そうか。で、なんでお前はそんな事をしているんだ?」
「ただの興味本位さ。殺人現場に出くわすなんて初めてだからね」
いや別に初めてじゃないんだけど
そんな事を言ったら面倒臭くなるので、言わない。
「お前警察を呼ばないのか?」
「金がかかるし、公衆電話まで行くのが面倒臭い」
彼女は溜息を落とし、ナイフを懐にしまった、
いや、懐じゃなくて僕と同じ学校指定の通学カバンにしまったんだけどね。
「変だよ。お前」
「殺人者に言われたくないな」
別に言われてもどうとは思わないけど。
「それもそうか……」
「今度は僕から聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「なんでそこの青年、青橋 由一を殺したんだ?」
殺人者はしばらく悩んだ後。
「ふむ、話せば長くなるから、近くのカラオケ屋で話そう」
「金がないんだけど……」
「仕方が無い。それくらいの金は出そう」
とゆうことで、僕は殺人者とともにカラオケに行くことになった。
ま、話は長引いて途中で終わったんだけどね。